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女性がローファーで就活しても問題ない


女物の靴には動きやすいドレスシューズ(仕事や就活で使える靴)の選択肢がローファーくらいしかなく、男は女物のローファーとパンプスの区別がつかないので気にせずローファーで行けばよい、という話を英語版のwikipediaから引きながらしていきたいと思う。

ドレスシューズ小史

英語版WikipediaのDress shoeの項では、男が礼装(formal, semi-formal)として履ける靴では内羽根の革靴(Oxfords Shoes)や夜会用のパンプス(宮廷靴、オペラスリッパ)、ビジネス(informal)の場面で履ける靴としてMonk shoes、外羽根の革靴(Derbies Shoes)やローファーが挙げられている。一方で、女性のドレスシューズは(多くの場合ヒール付きの)パンプスやスリングバック、(必ずヒール付きの)ミュールやサンダルに加え、男物から転用されたローファーもカウントされている。

女性向けのドレスシューズ――ヒール付きのスリッパ型の靴――は、実のところルイ14世当たりのフランス貴族の靴であり、当時は男も半ズボン(キュロット)、ストッキング、ヒール付きのパンプスやミュールであった。現代の女性のinformalな履物はほぼこれを踏襲している。

西欧貴族の男物の靴の変化。1631167017361830。ただし最後のものは当時としてもやや古風か。

この後、ナポレオン戦争を経て覇権がイギリスに移り、ビクトリア時代まで下るにつれ、もともとは軍服であったフロックコートが男性向けのフォーマルな衣装として定着し、そこから今の背広なども派生していった。この間に靴も変化し、17~18世紀ころにはヒールが低くなりバックル留めが定着、19世紀後半にはバックルに代わり紐のある革靴が主流となっている。上着が軍服由来であることから、靴の変化も軍靴であったブーツの影響が考えられる(ただし疑わしいとも書かれている)。

一方で、上流階級の女性は(肉体労働や戸外の活動を求められなかったためか)動きやすさを求めれられず、フォーマルな場面でもスリッパ型の靴が相変わらず着用されていた。

――すなわち、男物のドレスシューズは紐付きの動きやすい靴が主流となったが、女物のドレスシューズはパンプスをはじめ動きにくいものしか発展しなかった。ミュールやサンダルもヒールがなければ動きやすいだろうが、ドレスウェアとして扱われるにはヒールが付く必要があり、やはり動きにくい。この点は、現代のビジネスの現場で働く女性のありかたと相いれない状況にあると言っていいだろう。ローファーは数少ないその例外になる。

ローファーを履いても男は文句言わないと思う

ローファーは、男物のドレスシューズが紐付きになる過程で、同じシェイプの紐なしの靴として発展してきた。すなわち、基本的には男物であり、貴族階級ではカジュアルとして、現在はビジネス(informal)あたりまで履いてもよい靴として扱われている。また時代が下るにつれローファーは女物としても使われるようになっているが、パンプス(オペラスリッパ)に比べると足首をグリップするため幾分動きやすく、男物のビジネスシューズに近いため、ドレスシューズとしてのローファーというカテゴリができている。

KoToo関係の男の発言を見ている限り、男はローヒールのパンプスと女物のローファーの違いをほとんど気にしていないし、そもそも区別がつくかさえ怪しいところがある(私もその一人だからwikipediaを見ながらこれを書いている始末である)。採用担当者向けアンケートを見てもその違いを気にしているのは女性担当者くらいのものである。

男が理解できるのはヒールの高さだけであり、そのヒールの高さにしても「むしろ高いと悪印象」という採用担当者のコメントがある。パンプスもヒールももともと宮廷、夜会由来なので「仕事向けの靴ではない」と認識したとしてもおかしくはない。

女物のローファーパンプスの一例。同じ材料でそろえると日本人の男で区別をやかましく言う人は僅か程度になると思われる。

というわけで、女性の皆さんは自信をもってローファーで就活、出勤できると認識していただきたい。男物ドレスシューズに寄せたデザインなら黒リクスー並みの安全牌と思ってよい。「ヒール付きパンプスと男物に寄せたローファーのどちらがビジネスにふさわしいか?」について答えを持っている採用担当者はほぼいないだろう。少なくとも日本の男ではそうだし、おそらく女でも、欧米あたりでも大して変わらないだろう。

なお、男に「ローファーではだめか」と聞くと不可という回答が返ってくる可能性は考慮すべきである。なぜなら、男物ではローファーは紐付きの靴(特に内羽根のOxfords Shoes)より一段カジュアル寄りで、名前だけでカジュアルと思ってしまう可能性があるからである。ただ、そういう男も女物の靴事情は知らないことが多く、パンプスもローファーも紐なしで男物の区別基準から見れば同じなので、男物ドレスシューズに寄せた動きやすいローファーをしれっと履いていっても気が付かないのではないかと思われる。

「スニーカーを履かせて」という声も聴くが、さすがにビジネスカジュアルでも合わないくらい刺々しい色使いのものはTPO的に難しいが、「遠目に見たらドレスシューズ風のウォーキングシューズ」なら十分に許容範囲内だろう。少なくとも内勤よりなら男もそんな格好だらけで、必要に応じて職場のロッカーに入れてあるドレスシューズに履き替える、なんて人は珍しくもない。


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