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【翻訳】バラティンスキー(4)

ロシアの詩人、エヴゲーニー・バラティンスキーの詩の翻訳です。
4回目の今回は、「詩」そのものを詠んだ作品。


病める心を詩(うた)は癒やす。
神秘的な調和の力は――
重大な過ちを贖い、
そして荒れ狂う激情をなだめる。
響きよく奏でられた歌人(うたびと)の魂は――
あらゆる悲しみから解き放たれ、
聖なる詩歌は、触れる者に
清らかさと平和とを与える。

[解説など]
バラティンスキーは、詩、ひいては芸術が何のためにあるのかを思索し、それをテーマに作品を多く書いたという点で、当時としてはかなり珍しい作家だったようです。しかし、芸術がかつての栄光を失い、アイデンティティーの問題で悩むことの多い現代の我々には、これがかえって親しく感じられるかもしれません。彼は友人のプレトニョフに次のような手紙を書き送っています。「詩が死んだ文字ではなく、黙って詩人になれるわけではないことはわかっている。でも、君が芸術を放棄したというのは残念だ。人生における悲しみの時々に、芸術はどんな哲学よりも我々を慰めてくれるものだから。感情を表現するということは、これを解き放つことであり、それは感情を統御するということだ。これこそが陰鬱な詩人たちが気力を保っていられる理由だよ。プレトニョフ、もう一度ペンを取りたまえ。自分の使命を裏切ってはいけない。固い信念を持って我々の人生における勲しを成し遂げよう。才能とは、託された職務であって、どんな障害があったとしても、実現されるべきものなんだ。」

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