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[雫...Shizuku]――『私が愛したヴィジュアル系』

〈1924文字〉

ここに戻ってくるまでに結構な遠回りをしてしまいましたね。
今回は、初心にかえった気持ちで紹介する[雫...Shizuku]です。

1995.08.25 Al『月が闇に翳るとき…』
1996.02.15 Sg『Lost Age』
1997.06.18 Al『夢を忘れた遺伝子』
1997.11.05 Sg『~feel so...』
1998.07.18 Al『戦争を知らない大人達 ~END OF THE Lost Age~
         Second Image』
1998.09.23 Al『"Digital" clock work age ~時計仕掛けの地球~』
1999.04.29 Sg『Good bye my earth.』

[ROUAGE]とほぼ同時期にハマったのが、彼ら[雫...Shizuku]でした。

『月が闇に翳るとき…』がたまらなく好きでしたね。
そう書くだけで『フ~ン、フ~ン……』というイントロの幻聴が聞こえてきます(笑)。
『赤い風と共に…』を配布するとき、絶対無理なのに、どうやって名古屋に行こうか考えたほどでした。

うろ覚えですが、最初はヴィジュアル系としてはありえぬ、バッドボーイという触れ込みだったような(あくまでような)気がします。

その彼らが、のちに戦争反対を主張し、ゴミを拾うような人間であるべきといった(そういった取材記事を読んだ気がします)コンセプトを掲げます。

正直『ん?』となったバンギャもいたでしょう。
バンギャはそこをバンドに求めてないですから。

でも、今は言えます。
あなたたち[雫...Shizuku]は間違ってなかったと。
でも、戦争や気候変動に憂う現代ならまだしも、残念ながらSNSどころか携帯電話の普及率も低い時代では早すぎたのです。

ごめんなさい、笑うネタにするつもりはまったくないのです。

退廃後の世界に光を求める――そんなバンドだったように思います。

とりわけ、vo.MITSURUさんの声が特徴的でした。
歌い出したあとに通る声が出るといった、裏打ちのリズムを声でとるような歌い方でしたね(すみません、専門的なことは何もわからないのです)。
そんなMITSURUさん、私の好きな表記は、やっぱり『醜吊』さんです。

『Lost Age』の頃、彼らは写真集を出すほどの人気だったのですが、そんな折、MITSURUさんが喉を痛め、手術を要することになります。メジャーならまだしもインディーズのバンドで、そのような状況は、かなりの試練に直面したと言わざるをえません。加えて、このジャンルのファンは、ほかと比べてもうつろいがちですから。その後、一年四ヶ月のリリース間隔を空け、先行シングルもなく、満を持して発売されたオリジナルフルアルバム『夢を忘れた遺伝子』(発売日に買いました)は、いま聴けば作り込まれた名曲ぞろいなのですが、当時はそれまでの退廃性をより深めた、荒廃化した現実世界(ないしは近未来)へのコンセプトシフトを、なかなか素直に受け入れられずにいました。喉・期間・コンセプトの要素が相まって、自分の知るバンドから大きく変わりすぎたように感じたのです。バンド側からしたら、流れに身を任せただけなのに、普通に成長しただけなのに、久々に会う親戚に驚かれたような感覚だったかもしれませんね。人は様々なことを経験し成長するはずなのに、何も変わらぬことを前提に会おうとするのですから。こちら側も、すぐにその再会した親戚の良い面に気づけばいいものを、以前の彼を愛しすぎて、その変化を素直に受け入れられなかったりするのです。私は当時の彼らに対し――必死に夢を追う方たちに対し、見たいものしか見ようとしない軽薄な人間であったことを詫びねばなりません。喉を酷使したのはファンのためであり、このようなときこそ応援すべきであって、絶対にネガティブな要素として受けとめるべきではなかったのですから(そもそも歌い方に変化を感じる部分はあっても、それは成長であり、MITSURUさんはしっかり歌声を取り戻されているのですから。それに『夢を忘れた遺伝子』は最初から大多数に受け入れられており、私は少数派にすぎません)。

まぁ、今の私なんぞ、昔の親戚(もっと言えば元同級生)に会ったら、間違いなく嫌悪か蔑みの目で見られるでしょうが。
もちろんこれは、誰のせいでもない、私自身が悪いのですけど(笑)。

そんな思い入れのある[雫...Shizuku]のおすすめ曲は、前期『KIZ-ETU~あなたは闇人に包まれて~』、中期『System Down』、後期『IN YOUR LIFE』、全活動期間の中から一曲だけ選ぶとするなら『Lost Age』です。

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