鋼の錬金術師

「感動ポルノ」の持つ意味(10)

 聴覚障害を持つ美少女が健常男性と(手話を使いながら)恋愛に陥るシンデレラストーリーが好かれる傾向にあるため、他の作品は完全に無視されている。


 この初夏にボーイズラブを扱った「ひだまりが聴こえる」(↓)が上映予定だが、「聲の形」のようにマスコミに取り上げられるどころか、誰もが無視している。


 「聲の形」は「手話」だが、「ひだまりが聴こえる」は「要約筆記」・「ノートテイク」だ。「聲の形」でも筆談ノートが出てきたが、結局は「聴覚障害者の抱えるコミュニケーションなどの問題」よりも「美少女ネタ」の方がはるかに大事なのだ。


 このシーンでも、美少女マニアノートに書いた聴覚障害の説明内容よりもむしろノートを掲げた美少女の顔に目が行くようだ。


 そのため、山田尚子のような美少女マニアが率先して美少女ネタを強調し、aikoのように作品のテーマを読む意思すらない歌手がテーマがずれた歌を披露することになる。



 (↓)「聲の形」ではYouTubeでのコマーシャルに字幕を付けるよう要請した要約筆記者のツイートをあらゆる関係者総勢で無視したが、



↓「ひだまりが聴こえる」では作者自ら説明していた。


 もちろん、大今良時がツイッターをやらないからというのもあるだろう(プライベートではやってるだろう)が、アニメ制作会社にツイートしているのだから、最低限アニメ制作会社だけでも返信せずともサイトにアップしたYouTubeのコマーシャルを字幕付きに変えるべきだったのだ。


 かつて「鋼の錬金術師」で「字幕がないんじゃ面白くないというかああいう障害者自体がおかしい」と言ったら健常ファンに「感動したんだよ!」と「KANDOU」をリピートして叫ばれたことがあった。



 「DVDには字幕が付かない」ことや「作者のしていることはおかしい(※)し、当事者である四肢障害者がどう思うのか分からない」ことを説明しても、相手はひたすら「ハガレンは感動だ」を繰り返し、私にアニメを見るよう強制してきた。

 (※)作者は「障害者の生きざまに感動したから」と言いながら勤務先の福祉施設で見かけた四肢障害者をモデルにしているというが、実話だとしたら結局は「鋼の錬金術師」も感動ポルノである。

 当時の「鋼の錬金術師」に字幕はなく、当然ながら理解できない。(字幕が付くのは後の「FA」の方である)

 それでも四肢障害者が主人公の「鋼の錬金術師」のファンである健常者は、私の聴覚障害についてはお構いなし私への攻撃を繰り返し、「字幕のつかないアニメ」を見るよう強制していた

 (↓)こういうコメントを残す人たちは障害者うんぬんよりも「感動」が好きなだけである。


 「鋼の錬金術師」はシンデレラストーリーではないものの、ステラ・ヤング氏の言うように「障害者は明るく強く」という呪詛を(健常者が)作り上げている。

 「聲の形」の聴覚障害美少女に過剰反応したマスコミたちは、なぜ「ひだまりが聴こえる」を無視しているのだろうか。

 「聴覚障害」を取り上げるなら、この「ひだまりが聴こえる」も取り上げるべきではないだろうか。


 マスコミでさえ取り上げる気もないというなら、結局は「聴覚障害美少女が健常男性と手話を使って恋愛(して結婚)をするシンデレラストーリー」的な感動ポルノ作品が好きなだけであり、ステラ・ヤング氏が指摘した字幕問題については関わりたくないということである。

 

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