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【トークイベント】雪柳あうこ×宮尾節子 詩誌La Vague vol.0 【第1回】女性詩誌の「これまで」

この記事は、2023年5月14日(日)に行った、詩誌LaVague Vol.0の出版を記念して行ったトークの内容を収録しています。vol.0 ゲスト詩人の宮尾節子さんと主宰の雪柳あうこの対談です。
本トークイベントの記事は、数回にわけて連載していきます。本トークのマガジンをフォローしていただくと連続して読むことができます。

宮尾節子(みやお・せつこ)
高知県出身。飯能市在住。2014年SNSで公開した詩「明日戦争がはじまる」の爆発的な拡散で各種メディアで話題になる。既刊詩集『かぐや姫の開封』『妖精戦争』『ドストエフスキーの青空』『恋文病』『明日戦争がはじまる』など。「劇団こまつ座」「69の会」「日曜詩人学校」「前橋文学館 ことばの学校」「SLYP(Spiral Schole)」」「福島詩祭」「UPJ6(ウエノ・ポエトリカンジャム)」「ことばのNEWTOWN 」「隅田川怒涛/ことばの渡し」「ポエトリーブックジャム」等でワークショップ・詩の朗読・講演・トークを行う。近年は、いとうせいこう is the poet・よしだよしこ・中川五郎等音楽家とのコラボによるポエトリーライブを野外ロックフェス、国会前、ライブハウス等各所で行い、ジャンルを超えた詩の世界を展開中。第10回現代詩ラ・メール賞を受賞。クラウドファンディング達成により出版した近刊詩集『女に聞け』が好評。新刊に切り絵詩集『牛乳岳』がある。ことばがだいすき。

雪柳あうこ (ゆきやなぎ・あうこ)
長崎県生まれ。2019年より詩作開始。2020年、第五回永瀬清子現代詩賞、第二十九回詩と思想新人賞、2021年および2022年に白鳥省吾賞入賞、2022年国民文化祭「詩(ことば)の祭典」文部科学大臣賞など。第一詩集『追伸、この先の地平より』(土曜美術社出版販売、2021年)。2022年より詩誌La Vagueの立ち上げに着手、2023年より主宰。

※宮尾節子さんの詩「女たちよ」をゲストに迎えた詩誌La Vague vol.0はこちらより購入できます。

雪柳 (オープニングトーク略)今日は、ゲストの宮尾節子さんをお招きしてお話をさせていただけたらと思って、企画させていただきました。宮尾さん、今日はどうぞよろしくお願いいたします。

宮尾 よろしくお願いします。宮尾節子です。皆さん、ありがとうございます。

雪柳 今日はですね、大まかに分けて4つの話題をお話ししていきたいと思ってまして。まず、宮尾さんの自己紹介を最初に伺いつつ、私たちが詩誌を創刊するまでに思っていたことなどをお話できたらなと思っています。それから、今この時代に“女性”という性別を持って生まれてきた人たちと一緒に実際に詩誌を企画してから、発刊までに起こったことなどをお話ししたいと思います。後半になりましたら、詩への感想や、今後のラ・ヴァーグについてなども話していきたいなと思っています。

◆女性詩誌の「これまで」 ~「ラ・メール」の存在~

宮尾 (中略)私が詩を書き始めたのは、十歳。「小学四年生」っていう雑誌に書き始めて、それがなんと(雑誌に掲載)になってという。書いてみて、たまたま書いたら、入選、特選だったのかな。万年筆をもらって。載ったから同級生なんかが色々すごいねと言ってくれて。……あんまり先生に褒められたりする子でもないし、国語ができたわけでもない。 ちょっと変わってるねとか言われて、自分はなんか変なのかなってずっと不安に思ってたけど。ああ、詩っていう形は受け入れてくれるんだっていう。その時に、すごい存在を肯定された気持ちがして、うれしかったの。
(中略)その後、詩はずっとひとりで、勝手に書きたいように書いてたんですよ。大学生のボーイフレンドに大学からガリ版借りてもらって、書いた詩をガリ版で刷って、ホッチキスで止めて、河原町の歩道に座って売ったりしてました。そしたら、現代詩手帖の存在を教えてもらったりして。好奇心が強いもので、一応やってみるかと、えいっと投稿してみたんですよね。それで投稿したのが、その名も「デビュー」っていう詩(笑)。一発目のデビューが載ったんですよ。現代詩手帖に載ったんですけど、それが選外佳作で。
しばらく投稿続けて、 落ちたり載ったり、載ったり落ちたり落ちたりっていう感じで。ずいぶん端折りますが、その後で、「ラ・メール」っていう詩誌を知るわけです。

◆”女性”性への問いと連帯感

宮尾 ”女性”っていう括りが、ちょっと窮屈だと思ったんですよね、できたら私、 性別不明の詩人になりたくて。だから、名前も、宮尾節子じゃなくて、宮尾グリコにしたいって(笑)。そしたら家族に、それだけはやめた方がいいって猛反対されて、しぶしぶ宮尾節子になりました。
何かのきっかけで目にした女性詩人が、吉原幸子さんだった。(他には)石原吉郎とか、西脇順三郎とか、田村隆一とか、割と堅い系の。割とかっちりした……うん、惚れた男が硬派の詩を書いてたとかの、 影響もあって。あんまり女の人の詩には興味なかったんですが。きっと皆さんだって書いてる時は”女性”ってことを意識せずに書いてると思うんですよね。
 でも、やっぱり女性って、楽しいんですよね。楽しいなと思うのは、一緒におしゃべりしていて楽しい。服の話とか化粧品の話とか、いつまでも喋っていられるの。
 やっぱり詩っていうのは、日常の言葉では語り得ない思いや、日常の人々に語られた言葉では自分の中で成仏できない想いっていうの、ありますよね。未完了で、不完全。それを非日常空間、非日常語で解き放つっていう。この行為を詩と呼んで、やっぱりそこに生き延びる人々を詩人と呼んでいるんだと思うんですけど。
 ”女性“詩誌っていうと、まだまだ世の中が男性社会で自由になれてない思いと、女性同士ならではの楽しさと、(両方)あるでしょう。プール行った時に女子高生みたいにキャンキャン跳ねたりはしゃいで、黄色い声あげて。よく見たら、結構シニアなんですよね(笑)。(中略)ここだからできるような、そういう仲間がいるっていうのは。今、ひらひらしたものを楽しんでいたい、甘いものをいつまでも口に含んでいたい、みたいな。でも、母でも妻でもない、仕事の役職もない自由な中に、花のように開く愉しみというか。これはやっぱり女性誌ならではのものがある。今回のラ・ヴァーグの皆さんも見ても、本当に、色とりどりの花が咲いてるお花畑みたいで。やっぱり女性誌いいなっていう感じです。
で、私は結局「(現代詩)ラ・メール」で、最後の、賞をもらって。最初で最後ですけど。(中略)それからどんどん、新川さん、吉原幸子さんの詩を読むようになって。吉原幸子さんが、いつの間にか、 特に名前を出したりしないんですけど、すごく自分の中に入り込んでる感じがして。 賞も、やっぱり吉原幸子さんが(選んでくれて)。なんかちょっと私、毛色変わってたんですけど、受け入れてくれた気がして。吉原さん、新川さんの二人の女性詩人なしでは、今の私はないと思います。なので結局は、女性に助けられた私でもあります。

雪柳  宮尾さんの歴史を色々伺って、いろんなところから、宮尾さんを書くものに駆り立てるものがあったんだなっていうことを、今伺いながら思っていました。
「ラ・メール」は十年続いて、1993年で終わるという最後に(宮尾さんが)「ラ・メール」で賞を取られたことを伺っていて。私たち、詩誌創刊の時に、ぜひ「ラ・メール」に関わりのあった方にゲストに来ていただけたらということを最初に話しておりまして。それで、宮尾さんと柴田さん(柴田千晶さん、ラ・メール新人賞受賞者)にお声がけをさせていただいたんです。「ラ・メール」への憧れを持って、宮尾さんと柴田さんがつながりを作ってくださって、創刊号を立ち上げることができました。ありがとうございます。(中略)年月は意識したわけじゃないんですけど、ちょうど2023年は節目で。(「ラ・メール」終刊の)1993年と後ろの一桁が合う形で。何十年後という拓かれた海で、私たちはどういう波でありたいかと思いながら、憧れを持って創刊したラ・ヴァーグです。


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