見出し画像

「お掃除屋さんは見た!家の裏側はミステリー」第18話〜R様宅〜

本日のお客様はR様。

厳密にはお客様ではなく、お見積りに伺っただけで受注にはいたらなかった方です。

私たちのお店は、ホームページからのお問い合わせが7割を占めていて、特に事務員は置いていません。

お客様宅にて作業中、電話に出られないことも多く、基本的にはお店のホームページに設置してあるメールフォームよりご連絡いただくのですが……

R様はお電話でのご依頼でした。
「今日中に見積もりして、今週中に作業できるかしら?」
電話のお声は切羽詰まったご様子。

その日は夕方までビッシリのスケジュールでしたので、
「本日、夜7時ごろならお伺いできます。遅い時間で申し訳ありませんが、ご都合はいかがでしょうか?」

そうお聞きすると、
「それでいいわ。お部屋の鍵は開けておくから私がいなくても見積りを始めていてちょうだい」

(お部屋の鍵を開けておくって不用心ね)
「ご住所はマンションのようですが、空室ですか?」

「……。そんなところ。荷物はあるけど誰もいないから気にせず見積りして」
R様の一瞬の間が気になりましたが、お受けすることにしました。

その日の作業を終えて夕食を済ませた後、子ども達と護身用のスタッフも一緒に、R様のマンションへ見積もりに行くことにしました。

「お見積りを終えたらすぐに戻るから、待っていてね」
車に子ども達とスタッフを待たせて、私だけR様宅へ。

R様のマンション入り口はガラス張りの自動ドア。
でも2つ目の扉がオートロックらしくドアが開きません。
「困ったわ。お部屋の鍵は開いているとおっしゃっていたけれど、オートロックマンションだったのね」

夜なので、マンションの管理人もいらっしゃらない様子。
R様にお電話をかけてみましたが、お出になりません。

(これではお見積もりできないわね…)
帰ろうかと思った時、マンション住民の方がピピッ!と入り口をロック解除したので、さらっと建物内に入ることができました。

R様のマンションは3階。
階段を上がってお部屋番号を見ながら探していくと、一番端っこにR様のお部屋は
ありました。

一応「ピンポーン」とチャイムを鳴らし、10秒待ってからドアノブに手をかけると、ガチャッと開きます。

「失礼します。家事代行の○○です!」
誰もいないであろう室内に声をかけて入ると、お部屋は灯りがついています。
持参したスリッパに履き替えてお部屋の中を見渡すと、家具が一通り設置されている様子。

(これから入居というより、退去されるところかしら?)
お部屋まるごとのクリーニングは、荷物の有無でお掃除の手順や料金が変わるため、両方のパターンでお見積もりすることにしました。

間取りは2LDKとお聞きしていたので、まずは水回りからチェック。

(汚れはそれほどひどくないわね)
水回りは標準のクリーニング料金でいけそうです。

リビングの窓の数をチェックして、奥のお部屋をお見積もりしようと思ったその時。

「プルルルル!」
携帯電話がなりました。

(R様かな?)
画面を見ると、車に待たせてあるスタッフからの着信。

「すみません、娘ちゃんがトイレの限界みたいで」

「近くのコンビニとか…この辺、何もなかったわね。仕方ない、後でR様にお伝えするとして、お部屋のトイレをお借りしましょう」

マンション入り口に迎えに行き、スタッフも子ども達も一緒にR様宅へ。
「トイレを使った後は、これでお掃除してね」
娘に除菌シートを渡し、またお見積りの続きに戻りました。

(一つは洋室、一つは和室だったわね)
一番奥のお部屋は和室らしく引き戸です。
そのドアの前に立った時、なんだか変わった臭いがしてきました。

(なんだろう?怪我したあとのような…消毒薬のような臭い?)
私は見積書にメモを取っていたので、スタッフがガラッと引き戸を開けると、
「ヒイーーーッ!!」
奇声をあげるではないですか。

「どうしたの!?」
固まるスタッフの後ろからお部屋をのぞくと、和室の畳が黒っぽい赤色で染まっています。

「なにこれ!血の痕?」

そうしたらトイレの方から
「助けてーー!!」
娘の声がします。

(今度は何?)
急いで娘のところへ行くと、青白い顔をして立っています。

「血のついたおばあちゃんが…!」
娘が指さす方を見ても誰もいません。

小さな頃から場の空気に敏感な娘。
私たちに見えない何かが視えているのかもしれません。

お見積りは中止して、ガタガタ震える娘とスタッフを連れて、帰ることにしました。

(R様には申し訳ないけれど、お断りしよう)
そう思って、R様の電話番号へ何度かけてもお出になりません。

一緒に行ったスタッフには、
「何か事件があったんですよ。もう関わるのはやめましょう」
と言われ……

見えないおばあちゃんを視た娘は、
原因不明の高熱が出て、2日間うなされ……

その後、R様にもご連絡は取れず……
こうしてR様宅のご依頼は、自然消滅したのでした。

あのマンションで何があったかはわかりません。
調べれば出てくるかもしれませんが、意識がつながってまた娘が体調不良になると困るので、触れないことにしました。

このお話を読んでいる皆さんにお願いです。

事件・事故後のクリーニングは、普通のお掃除屋さんではなく、特殊清掃を請け負う専門店にご依頼ください。
何卒…よろしくお願いいたします。


最後までお読みいただき、ありがとうございます🍀
「お掃除屋さんは見た!家の裏側はミステリー」は、note創作大賞2023にエントリー中です。
スキやコメントをいただけると創作の励みになりますので、白いハート🤍をポチッと押して赤くしてくださいませ❤️
どうぞよろしくお願いします😊

↓お掃除ミステリーの続きはマガジンへ↓


*感謝* お読みいただいた上に、サポートまでありがとうございます😊 子ども達が笑顔になることに使います💕