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【読書記録】「流山がすごい」(大西康之氏著、新潮新書)

6年連続人口増加率全国トップとなった流山市を舞台に、子育てをしている共働き世代に的を絞った政策などを中心に、流山市がここまで脚光を浴びるまでになったのは何が凄いのかを著した本書。2022年12月刊行。

帯に書かれているように、「すべて実名」の人物が登場し、流山市を盛り立てたストーリーがルポチックに描かれています。
自治体のそもそもの在り方、地域計画やプロモーションの大切さなどがわかる良著だと思いますが、成功の分かれ道は「やるべきことをやるか、やらないか」であって、やらない理由を探して延々とその理由を評論家のごとく語るのではなく、自ら機会を作り出して変革していくことが成功の秘訣という巻末のコメントには膝を打ちました。

なお、2022年の人口増減率ランキングは以下の通り。人口20万人の都市では2022年も増加率第1位で、同じくつくばエクスプレス沿線駅のつくば市と競っていますね。

地域社会課題解決に直結する章のタイトルと簡単なポイントをメモしますので、気になる方は是非ご購読してみてください!

「流山がすごい」章立て

第1章 保育の楽園が生んだ奇跡

1日100円で市内各所の保育所まで子供を送り届け、午後8時まで延長保育で預かってくれる「送迎保育ステーション」の凄さと生い立ちがわかる。
これは本当にすごい。保育園難民が社会問題として表出したのが2016年。流山市は2021年に待機児童ゼロを達成しています。

第2章 ヒューストンから来た市長 井崎義治物語

千葉県北端の知名度のない市が変革に踏み出したきっかけがわかる。ここで登場する井崎市長は初出馬で落選したものの、1度の落選ではへこたれずに現職市長で6選中。
井崎市長が変革に踏み出さなかったら、流山市はつくばエクスプレスが止まるだけの市だったかもしれない。

第4章 「母になるなら、流山市。」流山市改造計画

有名なキャッチコピーが生まれた経緯などがわかる。マーケティング課を設立したり、有名なキャッチコピーライターを味方につけたのは興味深い。

第6章 起業するなら流山 和菓子店の女主人は31歳

松戸市出身で実家住みの31歳女性の起業の経緯や市の支援などが描かれている。第8章は「野菜買うなら流山…」と合わせて読むと、社会インフラとして保育園施設や利用環境を徹底して改善したことが産業振興などにも繋がっている、という感じが伝わる逸話。

第10章 東京ドーム30個分の「EC神殿」が1万人を雇用する 

物流施設誘致で雇用創出、サッカー場新設など、子育てとは一線を画した地域産業振興などが描かれている。蛇足のような気もするが…。

少しでも興味をもった方は是非本書を買って読んでみてください。定価780円(税別)です。

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