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人生の回り道が、経験値をくれた。社会に出てからたどり着いた、税理士という仕事 #羅針盤のつくりかた

「ラブソルの顧問税理士の渋田さんって、めちゃめちゃ面白いんだよ! 」

ある日、代表の柴山が興奮した様子で話しはじめました。

ラブソルの顧問税理士を担当してくれているのは、池袋にある税理士法人V-spiritsという会社。「V-spiritsさんでは4年に一度オフィスを移転すると決めていて、どんどん大きくなっている」とだけ、聞いたことがありました。

税理士さんが面白い…? 一体どういうことなのだろう? 

税理士というと、私の中では会社の会計を代行したり、申告をしたりという少しお堅いイメージでした。
渋田さんのお話を伺うまでは。 

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渋田貴正(しぶた・たかまさ)
司法書士事務所V-spirits代表。東京大学経済学部卒業後、大手食品メーカーの製造現場や外資系専門商社にて財務・経理担当として勤務。在職中に司法書士、社会保険労務士の資格を取得。2012年独立し、司法書士事務所開設。2013年にV-Spiritsグループに合流し、税理士資格を取得。現在は、税理士・司法書士・社会保険労務士として、税務・人事労務全般の業務を行う。

今年の4月、ラブソルは合同会社から株式会社になりました。
大学生でありながらラブソルでお仕事をしている私は、勤めている会社の形態が変わる瞬間に立ち合うことになりました。それをきっかけに、会社とは、組織とは、そして会社員とはなんだろうとふと考えました。

この機会に、いつもお世話になっている顧問税理士の渋田さんに、普段のお仕事のことはもちろん、経営資源としてのヒトの在り方、会社とヒトの関係についてお話を伺ってみたい! 

これから社会に出て働いていく立場である大学生だからこそ、どのような働き方があるのか、どのようなヒトが求められるのか、気になります。

ということで、税理士・渋田さんにお話を伺ってきました!

新卒で配属されたのは、パン工場の現場! 一念発起して資格取得へ

ーーはじめに、現在の渋田さんのお仕事の内容を教えてください。

V-Spiritsグループは、税理士や社労士の業務、資金調達、補助金関連のサポート、コンサルティングなどをしています。その中で僕は、主に税理士や社労士関連を担当しています。税理士としては、会社の経理代行から申告のサポートまで。社労士としては、入社・退社の手続きや助成金のサポートなどをしています。司法書士の資格も持っているので、会社登記の手続きなどもすることがあります。

ーー一つではなく、幅広くお仕事されているのですね。渋田さんはいつからV-Spiritsにいらっしゃるんですか?

2013年くらいからですね。東日本大震災の翌年、2012年の2月に働いていた会社を辞めて、半年ほどウロウロしていて。あまりにもウロウロしすぎて収入がなくなってしまって、V-Spiritsにアルバイトとして入社し、途中で正社員となり今に至ります。

ーー税理士になることは、大学生のころから考えていましたか?

全く考えていませんでした。今持っているどの資格も、実は、卒業してから取得したんですよ。学生のころは、大学に行かず遊んでばかり(笑)。バイクに乗ったり、アルバイトをしたりと好きなことをして過ごしていました。

ーーバイク! なんだか意外です。

大学受験で力を使い果たしてしまって…(笑)。ファミリーレストランで4年間フライパンを振ったり、キャベツを切ったりしながらアルバイト三昧の生活をしていました。

ーー就職活動の時、これがやりたいというものはありましたか?

なかったんですよね。だから、就職先がなかなか決まらなくて…。唯一内定をいただいた大手食品メーカーに入社して、半年ほど千葉の工場でパン作りをしていました。当初は経理として採用されていたのですが、1年間は現場で働くことになっていて、 一日10時間立ちっぱなしで作業。でも、現場の期間が伸びて3年工場で働くことに。さすがにもう無理だと思って辞めました。

当時は、今みたいに第二新卒の募集なんてなかったので、半年で辞めた新卒なんてどこも採用してくれなくて。仕方なく派遣会社で1年ほど派遣社員をして、外資系の化学商社に財務経理担当として3年半ほど勤めました。

ーーさまざまなお仕事をされていたのですね…!

振り返ると、もう少し就活本を読んだり、説明会に行ったりしておけばよかったなと思いますね。そうしておけば、今ごろ大きいビルの課長クラスにはなれていたかも、なんて(笑)。

外資系の化学商社では、半年ほど人事の研修部門にいましたが、僕は研修自体が苦手なので企画ができるはずもなく。研修企画はできませんと伝えて、財務経理の部門に入れていただきました。

働き始めて少し経った頃、日本の管理部門をシンガポールに移すという話になりました。

日本の管理部門には人事や経理の最低限の人だけ残して、他はすべてシンガポールに移管するという話です。そうやって人を減らしていく計画なら、今のうちにと、勢いで辞めました。

当時はほとんど定時上がりだったので、帰宅後や休日が暇で司法書士の勉強をはじめており、在職中に資格を取得することができました。

人に言われた通りの仕事ではなく、自分の頭で考え働きたい。

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ーー働きながら司法書士資格を取得されたとのことですが、資格の勉強はどのようにされたのですか?

お金もあまりなかったので、とりあえず本屋さんでテキストと過去問を購入して、平日の朝や土日に勉強して…。完全に独学ですね。大学受験もそうなのですが、予備校とかは苦手で。すべて独学でした。

ーー東京大学も、司法書士も独学で受かってしまう! すごい…。

僕は、学校の授業で人の話を聞いて黒板をノートに写す、みたいなのが苦手でした。苦手というか、人が書いた黒板を写す意味がわからなくて。問題集や過去問をずっと解いていましたね。人に言われた通りのことをそのままやるのは苦手みたいです。

ーー私も法学部に所属しているので、周りに司法書士や税理士を志している友人がいますが、独学で合格したという人はあまりいません。改めてすごい…。

世間一般的にはそうですよね。僕は良くも悪くも、人がやっていることを同じようにやるのはなんだか嫌なんですよね。

ーーどうしてですか?

予備校とかって、1年とか2年と決められたカリキュラムが組まれていて、それをすべてやらないと受からないみたいな。そうじゃなくて、僕は自分のペースでやりたかった。

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ーーなるほど…。税理士資格はどのようにとられたのですか?

V-Spiritsに入ってから、必要を感じて税理士も独学で取得しました。3年ほどかかりましたね。

化学商社を辞めたあと、司法書士として一人で半年ほどやってみましたが、全然何もできなくて。実務経験がなかったので、何からやればいいのかもわからなかったんですよね。実務経験を学んでから独立という人が多いのですが、僕は逆からはじめてしまったので。

でも、またどこかに再就職をしていても、あのままではまた言われた通りに働いて、「あぁ、なんでこんなことしているんだろう」と思っただろうなって。それは嫌だったので。できるかは分からなくても、1年くらいと見切りをつけて挑戦したのはよかったですよね。

ーー一人でやってみようと思ったのはなぜですか?

会社で4、5年働いてみて感じたのが、僕は会社のペースに合わせるのが苦手だということ。だから、再就職や転職をしようとも思ったのですが、一度自分一人でやってみようかなと決めました。

独立して、よく書店においてあるような「未経験でもできる」とか「人脈がなくても」と書いてある本を読み漁ってみました。でも、実際は未経験でできるはずもなく。

ろくに仕事もないまま、セミナーに通っていました。そんな中あるセミナーでV-Spiritsグループ代表の中野さんと出会いました。「何しているの? 」と聞かれたので、中野さんみたいに起業支援がしたくて司法書士として開業してみたけれど、半年でお客さまからの依頼は1件しかなかったとありのままお話しました。

話をしているうちに、中野さんから「来週からうちでアルバイトしないか」とお声がけをいただきました。

中野さんのセミナーの内容で、本人でも忘れているようなことを覚えていたみたいで。僕のことを記憶力が異次元ワールドですごいと思ってくれたそうなんですけど、実は全然実務ができなくて、仕事がない。
そんなところが、中野さんの好みの凸凹が激しい人物だと思ってもらえたみたいです(笑)

最初はアパートみたいなところで中野さんと二人きりだったのですが、今は大きなビルの中にオフィスを構えて…、人も増えましたね。

アルバイトでも、自分の時給はいくらか? と常に考えることで業務を効率化していく

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ーーアルバイトではどういったことをされていましたか?

お客さまのレシートを貼ったり、会計を入力したりですね。パソコンとか、Excelソフトをいじるのは得意でした。

ーー中野さんのFacebook投稿から、渋田さんは日々の業務を自分の頭で考えてどんどん効率化していったと拝見しました。どのように働かれていたのですか?

一般的に、アルバイトって時給いくらでこれをやって、という感じじゃないですか。中野さんとはそうではなくて、業務をざっと渡されて「これいくらでやって」という感じで。

業務に何時間かかったとしても、いただけるのは決まったお給料。時間がかかればかかるほど時間当たりの金額は安く、逆に早く終わらせることができれば、高単価になります。

時間当たりの単価を考えて、やり方を工夫していくうちに効率よくなっていきましたね。

ーーなるほど! アルバイトで自分の時給を考えて働ける人って、多くはないですよね。

アルバイトといっても出来高制だったので。それはアルバイトなのか? って感じですけど(笑)。業務委託みたいな感じですね。これやったらいくらもらえると思うと、頭を使って頑張っていました。今、振り返るとよくやっていましたよね。

アルバイトとして働いていくうちに、会社の売り上げも伸びていきました。そのタイミングで、中野さんから社員として一緒に働こうと言っていただき、今に至ります。

ーー現在のお仕事について聞きたいのですが、経営者の方によっては、面談で何を聞かれるかわからないと思います。プレッシャーはありますか?

いや、ないですね。

ーーえぇっすごい…!

普段から、どんな質問が来るか考えています。知的なゲームみたいな感じですね(笑)。最近ではどんな質問がきても、その質問で本当は何を聞きたいのか、背景がわかるようになりました。一見何を聞きたいのか分からない質問や問い合わせでも、その背景を読み解いて、お客さまの立場になって考えてみると、こういうことを聞きたいのだろうと理解できるので。それは、僕が回り道をたくさんしてきたからなのかな…。

お客さまの立場になって考えるというのは、ある程度の経験を積まないと見えてこないものがあると思います。僕もはじめの頃は自分の生活ややるべきことで精一杯でした。でも回り道をして、経験として積み重ねた今は自然とお客さまの目線で考えられるようになりました。お客さまがまだ気づけていないことや、こういうふうにした方がいいとか。

もちろん、税理士として会計をして「この金額を納めてくださいね」という仕事の方が単純明解だと思います。でも、自分がお客さまだったらどうかと考えると、法律の範囲内で「こんな方法がありますよ」と提案される方が嬉しい。だから、常にお客さまにとって良い方法を提案したい。

もしかしたら、はじめから税理士事務所にいたら分からない、答えにくいということはあったかもしれません。

ーーなるほど…。回り道をしたとしても、無駄にはならない。経験を積みながら考えてこられたのですね。

そうですね、何事も無駄なことはないと思います。知識を応用したり、一つの経験を他でも生かしたりすれば、きっとどこかで助けになってくれる。はじめにとった社労士も、一人で生かそうとしたときには何もできなかったけど、今では役に立っているし。

「自分は会社に何で買われるか? 」変化する経営資源としてのヒトの在り方

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ーー私が想像していた税理士さんのお仕事って、会計や手続きなど、決められた業務を担当するものだと思っていました。渋田さんのお話を聞いて、イメージがすごく変わりました!

一般的な税理士事務所の税理士さんは、会計や経理代行などを行う、まさにイメージしている通りだと思いますね。V-Spiritsも税理士事務所ではあるのですが(笑)。

ーー私は現役大学生で、周囲の大人の働き方を見ながら、これからの自分の働き方についても深く考えるようになりました。渋田さんが考える、経営資源としてのヒトの在り方を教えてください!

働き方や、人材の在り方って、流動的に変化していますよね。今後は、「この人は会社にとって何ができるのだろう? 」ということが求められると思います。

会社の規模にもよると思いますが、これまでは何年か働いたらこの役職になって、給料が変化して…という時代でした。しかし、これからはそれだけではない。新卒で仕事がすごくできて会社にとって大きな利益になるなら、給料もそれなりになる。昔みたいに、定時に出社して、会社にいたらいい、ということではないと思います。

ーー中野さんのもとで始められたアルバイト時代の経験は、さらに説得力を増しますね。任せられた仕事を自分の頭で考えて効率よくこなしていけば自分の時給も高くなるし、働き方もアルバイトから正社員へと変化していく、みたいな。

そうですね。組織の一員として働いているという「帰属意識」も重要になるんじゃないかな。自分は会社に「何で買ってもらえているか」を考えられる人が呼ばれるし、稼いでいく、重宝されていくと思いますね。職務とかタスク思考で考える時代ですよね。

これまでは終身雇用を重要視する企業もヒトもいましたが、最近では大手でも「この人は会社にどんな価値が提供できるのだろう」という視点で考えられています。会社もヒトも在り方、働き方がどんどん変化していますよね。

ーー自分がどんな価値を提供できるかを考えておかないと、ぼーっとしていたら置いていかれるのですね…。ラブソルでもよく「自分は何で会社に買ってもらえるか」を考えようとミーティングでも話題になるので、引き続き頭に置かないとと思いました。

経営資源は「ヒト、モノ、カネ」と言われていますが、今後は特にヒトの重要性が高まると思います。だから、ただ会計の処理や相談に乗るだけではなく、お客さまと一緒に会社とヒトの在り方を考えていきたいですね。会社にとって、お客さまにとって何ができるかを常に考えたいです。

取材・執筆:野元 萌乃佳
撮影:池田実加
編集:柴山 由香
バナー制作:小野寺 美穂

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