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(平等)BIは人が判断しないから公平?

最近こんな話をBI導入賛成の理由として挙げる人が多いです。

生活保護の仕組みは不公平だ、人間の判断が入るからどうしてもそれは回避できない、だから人の判断を介することのないBIを導入することが平等の観点から良い、という話。

3秒で論破します。

「AI使えばいいんじゃないですか?」

ウソです。もう少し書きます。なお、上だけだとちょっと論破には足りません(笑)

ただ、AIとBIを関連付ける人が多い割には、こういう論理を持ち出す人を見たことが無いです。なんででしょうね?

まず、論理が飛躍しすぎなんですよね。不平等だから全員に配ろうって。元々生活保護が不平等だと批判されているのは、救わなければいけない人に届いていなかったり、救う必要のない人がズルをしていたりすることが問題なのでしょ?まず、そこを是正する方法は無いものかと考えるのが先です。判断を排除する代わりに全員に支給するのなら、同じ額を払うためには財源がものすごく増える。当然のことです。で、その財源が無いから実現性が無くなる。

マイナンバー制度が導入されましたよね。あれは生活保護制度で起きている不平等の是正に役立つ方策の一つです。全国民の所得をあれで捕まえる仕組み。給与所得であれ、報酬であれ、支払主には給与支払報告書または支払調書というものを毎年自治体に提出しなければならないのですが、ここに支給者のマイナンバーを記載しなければならないのです。多くの方は給与所得者だと思いますが、マイナンバーを会社に提出しましたよね?

このマイナンバーは来年から、銀行口座との関連付けも行われる予定です。これにより、上記の給与所得・報酬所得をキチンとした手続きで自治体に報告している所得はもちろんのこと、それら以外に明らかに大きな所得を得ていそうな兆候があったら、税務署にもバレやすくなるということです。

これにより、生活保護費の不正受給を防ぎやすくなります。

ちなみに、2015年の不正受給の統計があります。

http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG20HDM_R20C17A1000000/

約44,000件、170億円。大変な額ですし怒っていい額ですが、全生活保護支給者は214万人、費用は3.8兆円。件数で2%、費用で0.5%。制度を変えなければならないほどの崩壊状況とは到底言えませんね。

そこで次の話。こっちが本丸になるわけですが、支給すべき人に支給されていないこと。こちらも問題になる事件がしばしば報告されますね。本来受給資格を十分満たしているはずの家族が、申し込みもしておらず餓死して見つかるとか、「不正受給者なめんな」というプリントがされたTシャツを着て対応していた職員がいたり。また、僕の一連の記事にもコメントを寄せていただいていますが、審査手続きは無駄も多く、やり方も杜撰。既得権益が守られているとのこと。僕は審査の現場にも、申請する側にもいたことは無いのでこれを検証することはできませんが、まぁそうだとしても。

マイナンバーは、収入を把握できるわけですから、隠し所得を捕まえるだけではなく、収入が無いことも把握することができるわけです。受給資格があるはずの人が申請していないことを、これでピックアップしやすくなるはず。

次は申請プロセスですね。ここでAIが出てくるのです。まず、収入が無いこと自体は審査において、上記のやり方で不正を防ぐことができます。次は「働けないこと」を証明する必要があるわけですが、ここを人間が審査するから「あなたは若いのだから働けるでしょう」とか、「鬱?そんなの甘えだ、働けるだろう」等々のキツイ当たりもあるんでしょう。

しかし、医療の分野こそAIが進展することが期待されている分野です。医師の目よりも高く、正確な診断を下せるという事例が続々と報告されています。今すぐにというわけにはいきませんが、どうせ今すぐにBIを導入することなんてできないのですから、長期的視野で行けばこっちに期待する方がいいのでは?

そして、それまでの間は時限措置として、無収入者に審査なしで生活保護費を支給してもいいでしょう。

https://newspicks.com/news/2309353

こちらの記事で挙げた、フィンランドのような方法です。「就職が決まっても当初予定の2年は支給を止めない」というやり方は就労意欲を促進するいい方法だと思います。これはマネてもいいと思います。

BIの定義について改めて言いますが、基礎的な収入をあまねく全国民にいきわたらせることによって、生活不安を取り除くことがBIです。奴隷的労働、とまで言うと元々アウトですが、ブラック労働から解放されることもメリットと言われますね。一部の弱者(これには年金受給者という”老齢”によって働けない人も含みます)に絞って支給するのは僕はずっと否定していませんし、フィンランドの件も生活保護や失業保険の性格を帯びるもので、BIの概念からは大きく外れたものです。

しかし、生活保護制度のゆがみを理由にしてBIをやろうというのは、「不祥事を起こしたチームが甲子園辞退」みたいな論理で、一部の人が起こしている問題を全員で被ろうという変な論理なのです。結果、財源が全然足りなくて、元々困っている生活保護受給者等には致命的な支給額減が訪れて、誰も幸せにはならないのです。

最初にも書きましたが、カネの使い方は必要なところに集中的に投資すべきものです。満遍なくあれにもこれにも使ってたら、足りないに決まってるじゃないですか。そう考えたうえで、以下の記事を見てもらうと生活保護制度と言うのも実に緻密に考えられて設計されているのだなと思います。

タンクトッパーさん、借りちゃいました。イノヴェイション!(笑)

そんなわけです。今日はこんなところです。次のネタももう考えてありますが、途中であきらめるかもしれないので予告はしないでおきます。できるかなぁ。。。


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