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【アートのミカタ11】ルノワール Pierre-Auguste Renoir

【人物】後期印象派の紳士的絵画

「日本人に愛される歴史的画家」の一人として知られているピエール・オーギュスト・ルノワール。「舟あそびの昼食」や「雨傘」などは、ひとめみてルノワールの作品だとわかるほどに、作品の安定した素晴らしさや彼の知名度は高いと言えるでしょう。

私は彼の風合いにとても紳士的な印象を受けます。
光をいっぱいに浴びた画面に、美しい女性像。人がごった返したような画面でも何故かスッキリと見れてしまうほど配慮された構図。気遣いがスマートで、しつこくないですね。

この「アートのミカタ」は今回で11回目になりますが、久々に、皆さんが聞き慣れた画家をテーマにしていくので少し緊張します…!
が、お話していきましょう。

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なぜ美的センスを磨くのか。科学の発展に伴い、心を作る芸術的思考もより広く知ってもらいたい。
このブログは、歴史上の偉大な画家たちをテーマに、少しでも多くの人にアート思考を築くきっかけにならないかと書いています。
まずはそれぞれの画家の特徴を左脳で理解し苦手意識を払拭するのがこのブログの目標です。その後展示等でその画家に触れる前の下準備として御活用下さい。私たちの味方となり、見方を変える彼らの創造性を共有します。
目次
【人物】後期印象派の紳士的絵画
【背景】宗教絵画の終焉と色彩革命
【核心】プリズムの軌跡のような画風

【背景】宗教絵画の終焉と色彩革命

前回書かせていただいたルドゥーテが亡くなった頃に生まれ、またルオーはルノワールの息子世代に当たるかと思います。
このように、19世紀から20世紀にかけては本当に数多くの画家が誕生し、いまでも語り継がれています。これは、これまでの宗教絵画や貴族向け絵画という立ち位置から、劇的に変化した証であると言えるのではないでしょうか。

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宗教にとらわれすぎないものを好む日本人にとっては、説明責任の問われていた宗教絵画よりも馴染みのある時代と言えるでしょう。

またこの時代は、色彩学的にも革命の時代でした。
19世紀といえば、ルンゲの「色彩球」やゲーテの「色彩論」、ショーペンハウワーの「視覚と色彩」、ヤングの「三色仮説」…などなど。見るからに『色彩とは云々、光とは云々』という論文が目立ってきました。
美術史上、最大の色彩革命だったと言われ、この技術の発展が当時の画家に大きく影響を与えたと言わざるを得ません。

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舟あそびの昼食 1880-1881.

1841年。フランス中部に5人兄弟の4番目として生まれたルノワールは、そんな変革の時代で過ごしました。
10代では絵付師として活躍しますが、絵付の機械化の影響をもろに受けます(ルノワールは生涯、機械を嫌っていたのだとか)
その後20代から本格的に絵を学ぶこととなりますが、なんと2箇所に通うほど熱心に学んだそうです(コール・デ・ポサール/国立美術館、シャルル・グレールの画塾)さらにとても社交的な性格から、友達も多く、後に発表する「舟あそびの昼食」では出てくる人物全員友達状態だったそうです。


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ラ・グルヌイエール Claude Monet/クロード・モネ/1869年

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ラ・グルヌイエールにてPierre-Auguste Renoir/ピエール=オーギュスト・ルノワール/1869年
28歳のころ、ルノワールがモネと並んでセーヌ川を描いたとされている作品です。風景画を数多く残しているモネの作品は、場の空気や印象に焦点を置いているのに対し、ルノワールは人物に焦点を置いているのがよくわかる2点です。逆に言えばルノワールの舟は手前に起き上がってるように見え違和感を感じてしまいますし、モネは人物や木々の印象が粗末な感じがしてしまいます。2人の良さを互いに感じさせる素敵な風景画です。

【核心】プリズムの軌跡のような画風

光を巧みに操った画家と言えば、このブログでもフェルメールをご紹介しました。しかしルノワールが扱う光とは少し違うのがおわかりでしょう。

印象派の特徴の一つして「見たものをそのまま書かず、空気や光を色に変換する」というものがあります

フェルメールが見たもの(肉眼、またはカメラレンズを通して)をそのまま表現したのに対し、ルノワールは明らかに「色眼鏡」を通して見ています。

光の中にはピンクや青、黄色など複数色をモザイク状に散りばめていますし、また肌の色も単色ではありません。まるでプリズムの軌跡のように表現された光の存在感は、彼が発見した独自の色眼鏡なのではないでしょうか。
同時期に風景画を主に描いていたモネとも比べると、ルノワールの色眼鏡は、より繊細な移ろいを描いているようにも思えます。

またルノワールが描く女性像は、まるで肖像画を描いているかの如く、丁寧で美しいと感じます。題材はどれも幸福で陽気、彼の友好的な人柄を感じさせてくれます。

技術、独自の色眼鏡、そして友好的な人柄が画面いっぱいにプラスに働くことで、ここまで愛される画家となったのではないでしょうか。

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ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏場Pierre-Auguste Renoir/ピエール=オーギュスト・ルノワール/1877年

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ここまで読んでくださってありがとうございます。
画家一人一人に焦点を当てると、環境や時代の中で見つけた生き方や姿勢を知ることができます。現代の私たちにヒントを与えてくれる画家も多くいます。
また次回、頑張って書くのでお楽しみに。




いつもたくさんのご支援・ご声援、ありがとうございます。