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困った男②

 「恥ずかしい!」母は言った。
「離婚なんかしたら他人ひとにわかちゃうでしょ!なんて言われるか。見っともない!」

 10もサバをよんで女の人を口説くなんて恥ずかしいマネをしたのは父で母ではない。見っともないのは父である。母を気の毒に思う他人はいても母が恥ずかしがることはないのでは?と思ったが、
話がこんがらがるので口を挟まずに聞いていたら母の悪態がエスカレートし始めた。

 母が何を言っても父が申し訳なさそうにしてるだけで黙りこくっているせいで、かえって母の声はどんどん大きくなっていく。喉が張り裂けるのではないかと思うほどの叫び声になっていた。

「死ね!死んでしまえ!」
「死んでくれた方が助かるんだわ!」

 いくらなんでもそれはダメだろ⁈とわたしは怒りを感じてしまい「ちょっとお父さんと2人で話したいから」と言って父を連れて外に出た。

 北海道は夜になると冷え込む。父と2人、車の中に入ったもののシートに座ると身体の芯が冷えるようだった。

 父はやはり「悪いのは俺だから」と言ったきり話にならなかった。



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