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社会科学のアプローチで、ビジネスにイノベーションを起こす。ReD Associatesが立てる「本質的な問い」とは? Pop-up Creative Class #4イベントレポート

北欧をはじめ、欧州で活躍するゲストと共に様々なトレンドやインスピレーションを集め、共に学ぶ機会を提供する「Pop Up Creative Class」。2020年5月14日(木)、4回目のオンライン開催となる今回は、デンマークの戦略・イノベーションコンサルティングファーム『ReD Associates(レッド・アソシエイツ)』のダニエル・バード氏をお招きしました。

ReDとLaereの出会いは、Laereが企画・取材を担当した雑誌『WORKMILL issue2』でのデンマーク取材。コペンハーゲン中心部にあるReDのオフィスを訪れました。社会学的アプローチを用いる戦略・イノベーションコンサルティングファームであるReDは、デンマークの玩具ブランド『LEGO』の経営を再建させた立役者でもあります。LEGO以外にも、アディダス、サムスンなど業種問わず、世界中の企業が彼らを頼りにしています。

そんなReDが信念とするのは、「意味を作り出し、意味を解釈するのは、人」。ビジネスにおいてデータが先行する社会で、人間の本質に迫るアプローチを重視しています。今回のイベントでは、ダニエル氏からビジネスで応用できる「本質的な問い」の立て方を学びました。プレゼンテーションの一部内容を抜粋し、レポートしていきます。

● ゲストスピーカー Daniel Bird(ダニエル・バード)氏
ReD Associatesにてシニアマネージャーを務める。主にヘルスケア業界、テック業界、消費財業界において「人間中心的/人文科学的」な視点をビジネス成長戦略へと繋げることを専門としている。ReDでの仕事では、企業の経営層に対し、戦略的な意思決定の核に「人間」への深い理解を取り入れることを支援。前職では、海外直接投資や債券取引の職に従事。コペンハーゲン大学、ダラム大学にて、心理学及び哲学を修めている。

人間を深く理解するため、ビジネスにも社会科学的アプローチを

「ReD Associatesでは、ビジネス分野の経験と社会科学分野の専門性を持ったメンバーが働いています。私たちは通常ビジネスコンサルタントが使うフレームワークに加え、社会科学の領域で使われる思考ツールやアプローチを用いて、企業のイノベーション戦略を支援しています。」

そう語るのは、ReD Associatesでシニアコンサルタントを務めるダニエル・バード氏です。哲学、歴史学、考古学、美術史、心理学などの社会科学分野で、博士課程レベルの専門家を擁しているのがReDの特長。ダニエル氏もまた、心理学と哲学の学問的知識を持ちながら、金融や投資、トレーディングの領域でキャリアを積んできました。しかしなぜ、ビジネスの文脈で社会科学の知識が求められるのでしょうか。

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ダニエル氏: ビジネスの重要な意思決定は、人間の行動や認識、信念に基づいて行われることが多いのです。だからこそ、人間そのものを扱う社会科学のアプローチを通して人を深く理解することは、ビジネスの文脈でも意義深いと考えています。

私たちは顧客の行動観察やエスノグラフィーといった社会科学のアプローチによって得られたインサイトを、ビジネス戦略に落とし込んでいます。クライアントが新しい市場に参入するための支援を行ったり、ブランドのポジション戦略を立てています。

本質的な問いを見つけるリフレーミング

今回のイベントでは、ReDがプロジェクトを進める実際のプロセスを一部紹介していただきました。プロセスの最初に実行するのは「リフレーミング」。クライアントがReDに持ってきたビジネスの問いを、人間の本質に迫る問いに変えていきます。

ダニエル氏: たとえばクライアントが「次世代のノートパソコンはどのようなものか」というビジネスの問いを持っているとしましょう。私たちはこの問いを、「今のノートパソコンユーザーの生産性向上を阻んでいるものは何か」に変換します。ビジネスの問いを、社会科学の問いにリフレーミングするのです。

このように問いをリフレーミングした後は、人間を深くリサーチすることに時間をかけます。リサーチする際、ReDが大事にしているのは「仮説を脇に置く」こと。先入観を持たずにオープンマインドで人々に向き合うことで、自分たちが気づきもしなかったインサイトを得られるのです。

仮説を持たないアプローチの盲点を、多様性でカバー

仮説を持たないアプローチ。ReDは自社の企業哲学に採用するほど大切にしている考え方だそうですが、参加者の方からはいくつか疑問の声があがってきました。ある参加者の方は、「仮説を持たないとリサーチャーの知識や文化的背景に頼ることになるため、逆に視野が狭まってしまうのでは?」と問いを投げかけてくれました。それに対し、ダニエル氏はこう答えます。

ダニエル氏: 視野が狭くならないよう、多様な視点を持つようにしています。リサーチでは私たちに似た考えの人に偏らないよう幅広い属性の人々に会って、異なる視点を得られるようにしています。また、これはReDの特長の一つですが、異なる専門性を持つ学際的なチームをつくるようにしています。そうすればそれぞれが持つ偏見に気づき、対処できるようになるからです。

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また、ダニエル氏は「プロジェクトにクライアントを巻き込む大切さ」を語ります。

ダニエル氏: 私たちのプロジェクトは仮説に基づかない形でスタートすることが多いので、クライアントとの信頼関係を築くことは非常に重要です。関係性を築くために私たちが行なっていることは、プロジェクトの内容や方法をできるだけ明確に知らせ、クライアントを巻き込むことです。なかでも重要なのは、プロセスの各段階にクライアントに参加してもらうこと。実際に顧客の声を聞くことができますし、クライアントが持つ知恵や意見で私たちの考えを改善することができます。


複数の視点をもってプロジェクトを進めることで、新しい発見にオープンになり、顧客の鋭いインサイトを見つけることができます。このような多様な人々とのコラボレーションがReDの強みを際立たせているようです。

お知らせ

ReD AssociatesとLaereではパートナーシップを組んで互いの強みを活かして協働し、企業や様々な組織のプロジェクトを支援していきます。ReDが社会科学のアプローチを通した深いインタビューや観察、分析を経てプロジェクトの哲学をつくるプロセスをリードする一方で、Laereでは、北欧社会の知識や経験を活かしてRedの貢献が日本で最大限に活かされる方法を共に探り実践しながら、Redの哲学から具体的なプロジェクトでアクションに落とし込むためのプロセスを支援していきます。

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ご興味をお持ちいただいた方は、Laereまでぜひお気軽にお問い合わせください。


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