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「行人」にみる恋愛論~兄と弟(前編)

高校生の頃に読んだ夏目漱石の「行人」を読み返している。

流石に高校時代は○十年も前なので、大雑把にしかストーリーを覚えていなかったと痛感させられる。尊敬する漱石先生なのに、ごめんなさい。

この小説を読んでいるとき、母から「みんな受験勉強で忙しいから、誰も読まないでしょ。そんな暗くて長い小説。」と言われたが、読み返してみると暗いばかりではないことに気付いた。

この主人公の二郎(次男だから二郎とは、漱石先生、ネーミングが意外と単純)は、いかにも次男らしい飄々とした性格なのである。

ネタバレになるが、この物語の中心は兄・一郎が自分の弟と妻・直が恋愛関係にあるのでは、と疑いを持つことによる心の葛藤である。

高校生の時に読んだときは、自分が子供だったせいか「一郎って神経質で根暗で気難しい男。疲れるわ~」などと単純に解釈していたが、大人になって読むと一概にそれだけではないことに気付く。

一郎は頭も良いが勘も働く性質で、二郎は天然モテ気質の性質だと気づいたからだ。

嫂や書生だった岡田の妻が、二郎を意識してヘアスタイルを変える。それを見た二郎は、嫂の髪型をみて「暑いのに大変ですね~兄さんの好みですか、そのでこでこ頭は。」などとからかったりしているお気楽な性格。

これが、高校生の私が気付かなかった二郎の「天然モテ気質」である。

長男でもたま~にいますが、圧倒的に次男に多いですよ。このタイプ。

こういう男性って、学生時代でも社会人でもチラチラいますよね。女性のヘアスタイルや服を気軽にからかって、それすら忘れてしまう人。でもからかわれた女性は、自分のヘアスタイルや服装を気にしてくれていたのか、と勘違いしてしまう。

二郎は罪な男性である。そして学生時代のクラスでは一人、二人くらいの確立でいるタイプでもある。

故に、気軽に女性をからかうことなんてできない、まして女性のヘアスタイルや服装の変化なんて気づかない生真面目だったり不器用な男性、それが長男、一郎のような人である。弟とは正反対。弟の調子の良さを見て、頭にきたり、落ち込んだり。。現代はどちらかと言えば、一郎タイプの方が多いのではないか。

そう思って読み進めると、「行人」は高尚な恋愛小説であって、現代にも通じるような小説である。そう、決して暗い小説ではないのである。


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