野村紗良

読書日記、日常のあれこれ、音楽、映画の綴れ織り。過去の就職活動記や失業経験なども綴って…

野村紗良

読書日記、日常のあれこれ、音楽、映画の綴れ織り。過去の就職活動記や失業経験なども綴っています。気が向いたら見てみてくださいませ。

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最近の記事

光の公園 いつもの帰り道 夜の公園 ブルーの光が反射する噴水 彼に会ったばかりの初春 同じ場所を二人で歩いた日 前を歩く彼のジーンズの足元にスミレの花が沢山咲いていた 彼は今夜も 静かに玄関のドアを閉めて仕事に向かう ありがとう 公園を通るたびに私は心の中で囁く

    • 寅次郎相合傘

      家族が「寅さん」好きで、時々DVDで見る「男はつらいよ」シリーズ。 今日はシリーズ最高傑作とも言われている「寅次郎相合傘」を観た。 お互い似た者同士で喧嘩ばかりするがすぐに寄りがもどる寅次郎とリリー。 寅さんの粗削りだけれど、心根の温かさを知っているリリーは甘えられるだけ甘えるけれど言いたいことがあると、遠慮がない。 心にひっかかることがあると 「そこまで言うか?」というほど寅次郎に本音をぶつける。 寅さんも寅さんで本当はリリーに優しくしたいけれど、昭和の男なんだね。 怒

      • パリ13区

        久し振りに一人で映画を観た。フランス映画「パリ3区」。 1日に1回しか上映されない上に、朝8:15の開始のみ、ときたら空いているに決まっている。 予想通り、時間ぎりぎりに入っても座席は1/3も埋まっていなかった。 これからこの映画を観ようという方は、ストーリーに触れるのでそれを記しておこう。 さて、主人公は20代前半の台湾出身のエイミーと長身のアフリカ系の男性カミーユ。 またもう一人、その二人に重なる形で30代のスレンダーなフランス人女性のノラ。 3人とも頭がよいのに仕事

        • 夜が明けるまで~連載第六話 「昭和のおっさんからの質問」

           ~これは過去に長期失業した経験を小説風にした孤独な戦い第六話です~ 怒涛のような就職活動中では、いろんな憂き目に遭うものである。 季節は夏になっていたが、そんなことは関係なく就職活動は続く。 その日、いつものように「非正規社員から正社員を目指すハローワーク」に行くと、東横線沿線にある音楽教室の受付の仕事がある、と担当のハローワーク職員はニコニコ顔だった。 それもそのはず。これは今、私がアルバイトで通っている仕事と全く重なるではないか。 職場はかなり遠いが、よし受けてみ

        光の公園 いつもの帰り道 夜の公園 ブルーの光が反射する噴水 彼に会ったばかりの初春 同じ場所を二人で歩いた日 前を歩く彼のジーンズの足元にスミレの花が沢山咲いていた 彼は今夜も 静かに玄関のドアを閉めて仕事に向かう ありがとう 公園を通るたびに私は心の中で囁く

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        • 読書感想
          2本

        記事

          第五話「怒られない子供達」

          楽器店の音楽教室に勤めて、3か月ほど経った。 先日、楽譜が届いたことを告げて、一人のお母さんに恥ずかしい思いをさせてしまった。 前もって伝えておかないと、楽譜代を持ち合わせていない。 受付の私が悪いわけではないが、可哀そうなことをした。 かといって、いつ楽譜が届くかは私達スタッフにも知らされていないのだ。 子供にピアノを習わせていても、親たちの生活はそれほど余裕がないのだ、とまたもや自分の状況もが悲惨なことを忘れ、同じ年くらいの生徒の母親が気の毒になってくる。 中にはシ

          第五話「怒られない子供達」

          夜が明けるまで~連載第四話 「ピアノの涙」

          正社員への応募は連日続けていたが、なかなか思うようにはいかない。 しかし、アルバイトは漸く決まった。 世田谷にある、小さな音楽教室の受付事務だった。 ほぼ東京都の最低時給であるが、そんな贅沢は言っていられない。 とにかく、働かなければ生活できないからだ。 私は、面接合格の電話をもらった次の日から、その音楽教室で働くことになった。 音楽大学を卒業している私だが、ずっとOLだったので音楽教室のピアノ教師で採用されるのは無理だ。 なぜなら、ここでも年齢制限がある。 働き始めて

          夜が明けるまで~連載第四話 「ピアノの涙」

          夜が明けるまで~第3話 「 ハローワークの天使」 ♪あなたのお家はどこですか

          失業給付をもらっていても、アルバイトで得た報酬をその都度きちんと申告すればよい、ということをこの時初めて知った。 しかし、アルバイトすら若い子との戦いにあっけなく敗れて、全然見つからないのだ。 するとニュースなどで、仕事と同時に住居を失った人が多数いることを知った。 なんてひどい世の中だろう。 私達は非正規社員だったとはいえ、人間である。物ではない。 感情があり、それぞれの人生があるのだ。 それなのに、ボールペンやノートなどの消耗品のごとく都合よく使用して ポイっと放り

          夜が明けるまで~第3話 「 ハローワークの天使」 ♪あなたのお家はどこですか

          夜が明けるまで~連載第二話 ハローワークにて「仮面の偽証」~アラフォー就職奮闘記~

          とにかく一刻も早く、正社員の仕事に応募しようと私はハローワークへ連日通うようになっていた。 新宿の駅から雨に濡れずに入れるその素敵なビルは、私が通うハローワークもあったが、実はその中に、今回派遣切りにあった仕事先を紹介した派遣会社も入っていた。  登録したときに担当者と相性が良かったのか、リーマンショックの前は、この派遣会社は次々と私に大手の仕事を紹介してくれたものだ。 それには感謝しているが、それにしてもこのビルは立派すぎる。  一緒に契約終了になり、前日蕎麦を食べた友

          夜が明けるまで~連載第二話 ハローワークにて「仮面の偽証」~アラフォー就職奮闘記~

          小説・夜が明けるまで~第一話  「月見蕎麦の決意」~アラフォー就職奮闘記~

          2009年早春、私は突然失業した。 それまで失業したことがなかったわけではない。 しかし、例えば長く勤めた会社を前から準備して一身上の理由で辞めたことはあったが、この時は違った。 早い話が、当時のリーマンショックの波に飲み込まれ、派遣切りにあったのである。  一緒に同じ会社を契約終了になった同僚と、阿佐ヶ谷駅前の安いお蕎麦屋さんに入った。 ワンコインでお釣りがくる月見蕎麦を食べながら、独身・アラフォーの女二人は、勤務先だった会社と派遣会社の文句を散々と言い合った。 「ち

          小説・夜が明けるまで~第一話  「月見蕎麦の決意」~アラフォー就職奮闘記~

          「行人」にみる恋愛論~大人に必要なのは曖昧さ(後編)

          さて、「行人」いよいよ完結編です。 「兄(一郎)と旅に出てくれ」と二郎から頼まれて災難なことに、一緒に出掛ける羽目になったHさんという男性。 Hさんのようなお人よしな人って、現在もいるのかな。 だって考えてもみてください。一郎は、大学で教鞭を取っている知的で文化人とはいっても、精神に異常をきたしているかもしれない人ですよ。 その様子を見てきて報告をしてください、と頼まれて「はい、承知しました。」と快諾してくれるなんて、神様みたいなお優しい人じゃないですか。 案の定、

          「行人」にみる恋愛論~大人に必要なのは曖昧さ(後編)

          「行人」直という明治の女(中編)その2

          主人公・二郎の兄嫁、直は小姑の重との仲がうまくいかない。 夫・一郎との仲が冷え、更に小姑と不仲なのだから、家庭内でさぞ孤独であったろうと想像する。 義妹のお重とは、あまりに性格が対照的なのだ。 感情をいつも抑えている口数の少ない嫁の直、言いたいことは言わずにはいられない、感情表現が派手な重。 嫁と小姑は気が合わないものだが、ここまで性格が違えば、重と直の仲が良いわけがない。 ちなみに私は、女子高校、女子短大と5年間の青春を女子だらけで過ごしていた。 いつか描こうと思うが、かな

          「行人」直という明治の女(中編)その2

          「行人」にみる恋愛論~直という明治の女(中編)その1

          主人公・二郎の兄嫁、直は果たして夫の一郎が不安症になるほど、二郎を気にかけていたのだろうか。 私自身の体験も踏まえて、直という女性を語りたい。 直の義弟への強い思慕、それが若干16~17才だった高校生の私がこの小説を読んだときには、どうも感じ取れなかったのである。 しかし、今大人になって「行人」を読むと、この小説の書かれた明治という時代に合った静かな愛し方で、直は二郎を好いていたと読み取れる。 とても控え目だが、やはり女性ならではの細やかな感情や行動がそこかしこに現れ

          「行人」にみる恋愛論~直という明治の女(中編)その1

          「行人」にみる恋愛論~兄と弟(前編)

          高校生の頃に読んだ夏目漱石の「行人」を読み返している。 流石に高校時代は○十年も前なので、大雑把にしかストーリーを覚えていなかったと痛感させられる。尊敬する漱石先生なのに、ごめんなさい。 この小説を読んでいるとき、母から「みんな受験勉強で忙しいから、誰も読まないでしょ。そんな暗くて長い小説。」と言われたが、読み返してみると暗いばかりではないことに気付いた。 この主人公の二郎(次男だから二郎とは、漱石先生、ネーミングが意外と単純)は、いかにも次男らしい飄々とした性格なので

          「行人」にみる恋愛論~兄と弟(前編)

          夏目漱石~出逢えて光栄です

          夏目漱石~出逢えて光栄です