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お薦めクラシック4

ヨーロッパではクリスマスはだいたい三日にわたるお祝いだ。24から26日までだ。こういうみんなが休んでいるとき芸人は忙しい。皆さんのお休みをにぎわせるのがお仕事なので、もうあちらこちらへ飛んでってはちゃらちゃら弾いている。今日もあと数時間で教会に行ってコーラスと一緒にクリスマスのコンサートだ。それでようやくクリスマスはおしまいだが一日休んだら大晦日とニューイヤーのイベントにむけて準備が来るので風邪ひく暇もない。
大みそかの定番といえば日本ではベートーベンの交響曲第9番だが、ヨーロッパではそんなことはない。なんでこの曲が日本で定番なのか長らくしらなかったのだが、コーラスが付くと客が増えてモチ代が稼げるという理由を聞いてそうかもしれない、と思った。
こちらで大晦日といえば、シュトラウスのこうもりだ。音楽家にとってのシュトラウスと言えばパーティー野郎で楽しい Johann.シュトラウスと、譜読みがめんどくさい、考えすぎでロマンチストなRichard.シュトラウスがいる。こうもりは、Johannのほうなので、たのしいが何回も弾くと頭がだんだんバカになる。

貴族のアイゼンシュタイン氏は、役人を殴った罪で明日から刑務所に入れられる。悪友ファルケがやってきて、刑務所に入る前に今日はパーティーにでて騒ごうぜ、と彼をそそのかして男二人はにんまり。そんな二人の悪だくみに妻のロザリンデはうすうす勘づきつつも、彼女もそれどころではない。昔の恋人に言い寄られてときめきつつも、扱いに困っている。そのうえ、この大変なときに女中のアデーレは今晩休みが欲しいという。
それぞれの人がみんな少しずつ後ろめたいことがあり、身分を隠して、結局同じパーティーに参加するのだ。みんな自分がそこにいることは内緒だ、と思っている。酔っぱらって散々大騒ぎをして、次の日酒から覚めた頭で現実に戻るといろんな嘘がもつれて、訳の分からないことになっている。一体どうということ?!となるのだが、実はこれらすべて悪友ファルケの壮大ないたずらだった。
なぁんだ、全部いたずらかよ、よかったー!カンパーイ!と強引にめでたしに持ち込む。本当に大丈夫か。
いつもの事ながら登場人物たちは変装してパーティーに出る。フランス人だと偽って知ってるフランス語を無理やり並べてみたり、ハンガリーの貴族だといってハンガリーの歌を歌ってみたり、女優だと言い張ってみたり、まぁみんなのつく嘘がおかしい。酔っぱらいは滑稽だ。

音楽は作品をとおして常に表情豊かだ。ヨハン・シュトラウスといえばワルツ王という別名を持っている。今も昔も、踊れる音楽がパーティー音楽と決まっている。彼の美しき青きドナウは有名すぎるほど有名だが、こうもりのどの曲も人の心を素早くつかむ。楽しい色気のある曲は一度聴いたら忘れない。
この作品にでてくるのは酔っぱらいだけで、死人が一人もでない。めずらしく愛の話でもない。夫婦そろってパリピで酒が好きというだけのお馬鹿話だが、ヨハン・シュトラウスの音楽とじつにぴったりで、新年を笑って楽しく迎えるにはもってこいだ。




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