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深読み: エディとヴィシュヌ

アイアン・メイデンの7枚目のアルバムについての基本情報を、はてなブログにまとめました(上記リンク)。こちらのnoteでは、深読みといいますか個人的な思いを書き記そうと思います。といいますのも、このアルバムは、僕の愛聴盤であり、夜眠れない時に、ガッと集中して聴くと、マインドが浄化されたようになり、すぐに眠れる内容なんです。ジャケットをしげしげと見つめていると、エディの達観した表情が何かが見えてきそうなので、改めていろいろ考えてみたいと思います。
まずアルバムジャケットのエディの額に金属のプレートタグのようなものが付けられていますが、これがまずヴィシュヌのUの文字に見えてきました。そして、背後で漂っているドローンみたいなライトが、ヴィシュヌの円盤にも見えます。

シングル曲、The Clairvoyantのジャケットでは、エディの顔が3つになり、額には第3の眼が描かれています。ブラフマン、ヴィシュヌ、シヴァの三神を思わせます。

歌詞について考えてみます。ブルース・ディッキンソンはコンセプトアルバムとして考えていないようですが、スティーヴとしては通底する深遠なテーマを設定していたのではないかと思います。歌詞の内容は、ヘヴィメタルにありがちなファンタジーの一種で、なんとでも解釈できてしまうと言ってしまうと、そうかもしれません。しかし、僕は、本作にはスティーヴの実存が投影されていると考えています。Evil(悪行)またはThe Evil(悪行を行う者)というのは、メイデンのいつも出てくるキーワードです。もし、Evil=Musicと置き換えたらどうでしょう。一方で、The EvilをThe Playerに、HellをLiveにすればどうでしょうか。Infinite Dreamsについて、スティーヴは、アルバム制作中の「産みの苦しみ」を描いたともコメントしています。本作では、未来を透視する超能力(Clairvoyant)を身につけてしまった男の葛藤が描かれています。The Crairvoyantを、類稀な音楽的才能を持ち、世の人々を音楽によってHappyにしている人物と置き換えるとどうでしょう。そう、The Crairvoyantとは、スティーヴ・ハリスその人であるように思えてなりません。もっと普遍的な観点で言うと、何かを創造し、人々に与えている人にはみんな当てはまるかもしれません。
本作の主人公の苦悩は、「バガヴァッド・ギーター」で苦悶するアルジュナの姿にも重なって見えます。ヴィシュヌの化身クリシュナに導かれ、悟りの境地に達します。本作の終盤の曲、The ProphecyやOnly the Good Die Youngでは、悟り切った姿が描かれているようにも読み取れます。Only the Good Die Youngは、The Evil That Men Doの歌詞内容ともリンクしているように思えますが、シャイクスピアの政治劇「ジュリウス・シーザー」のくだり「人が行う悪は人の死後も生き続ける。善は人の骨とともにしばしば埋葬される」。The Good=自分とせず、あくまでThe Evilをテーマにする。スティーヴ・ハリスなりの、もしかしたらイギリス人特有のサーカズムかもしれませんが、Iron Maidenというバンドで、音楽を創造し、発表し続けるというサイクルの中に閉じ込められ、そこからは解放されないという、ある種の皮肉と覚悟がそこに込められているようにも思います。

僕の敬愛するスティーヴ・ハリス。The Evilを描かれるからこそ、The Goodについて考えるきっかけが与えられます。彼が言うEvilはファンにとってはGoodなんです。Infinite Dream(永遠に続く悪夢)とは、バンドが活動に続くことへの祈りと特殊能力を持つ選ばれし者の覚悟が込められています。そんなスティーヴ・ハリスを見守るエディ・ザ・ヘッド。なんだかやはりアルジュナとクリシュナみたいです。




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