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最後の審判

【入院日記3 2023年2月17日(金) 33日目】

 昨日は今日で退院できるものと思っていたらおあずけを食らってしまって悄気ていたが、朝起きていつものルーティン通りに動く。起床10分前にトイレに行き東の端の窓から外を見るとちょうど朝焼けの時間帯だった。手前の風景は殺風景だけどこの朝焼けの色は美しい。


起床時間直園の東の空

 今日は起床時間と同時に採血もあった。言うなればこれが「最後の審判」だ。過去の入院ではここで引っかかって退院が延びた苦い経験もある。なのでたかが採血だが、されど採血。採血が終わるといつものようにコーヒーを買ってデイルームで写経をし、すっかり明るくなってから部屋に戻る。休む間もなくバイタル計測や血糖値計測があり、8時には朝食。昨日も書いたが朝食はすぐには食べずにまいにちハングル講座を先に聴いてから食べる。

 今日は午前中カレンダー作りに没頭しウォーキングはしなかった。というのもすっかり右足にはマメができ、皮もむけて歩くだけでも痛い。なんだってここまでして自分は頑張っているのやら。早朝の採血の時に止血のために貼った絆創膏をとりあえず右足の裏に貼り付けてその場しのぎをする。しかし病院の中にいてなんともいい加減な処置だ。

 これまで何度となくこの日記にも書いてきた最凶最悪の同室患者二人は今日になっても相も変わらずだった。ブツ臭は手術があるのにいつまで部屋に居るんだよと思うくらい普通にいた。いればいたで独り言がブツクサとうるさい

 ナース大好き爺は結局今日になっても己の行動が非常に迷惑なことだと言うことにも気付かず今日もまたお気楽に僕のところに用事できたナースを呼び止めてくだらない話をしていた。連日大音量でテクノばかり聴いていたのでたまには別の音楽が聴きたくなり午前中はディープ・パープルやマイク・オールドフィールドなどを聴いていたがテクノと違って血が沸いてくる。そのまま点滴台を振り回して暴れたくなって来るくらいにこれまでずっと我慢していたのがわかる。隣のブツ臭なんかボコボコにしてしまいたいくらいの衝動に駆られていた。Burnあたり聴きながら大暴れしたらさぞかし気持ちいいだろうなと思った。

 そのブツ臭、ひげそりをしている間にいつの間にか連れ去られていた。これでもう二度とは会うことがないのを願うばかり。お願いだからもう二度と僕の目の前には現れないでもらいたい。現れるのなら独り言をブツクサいう危ないクセをちゃんと治してからにしてもらいたい。それから程なく自分の隣には別の人がやって来たが、やっぱりブツクサ煩い奴だった。まだドレーンやバルーンも取れていない状態のようだ。ブツ臭がいなくなったのでまずはイヤフォンなしの状態で久しぶりに寝ることにした。この瞬間を10日間待っていたんだ。

 もう一人のナース大好き爺は午後に移動が決まっていたが、その時間までの長いことといったらない。まるでオラが天下とばかりに立てられる音は立てまくって最後の最後まで周囲に迷惑をかけていた。まあこの人の場合は車椅子なのでどうしても音を立ててしまうという事も考慮に入れる必要はあるが、スマホで写真撮る時にカウントダウンまでしてから撮るくらいでその音はなんとでもできるだろうと突っ込めるところたくさん。これもいつの間にか連れ去られていった。もう二度と会うこともなかろうに、来週からのリハビリ頑張って車椅子を卒業してから退院してくれ。

 午後になると距離は短いがウォーキングを再開。今日は昼三本と夕食後一本の合計で四本ウォーキングをした。1階のコンビニにも行き絆創膏も買っておいた。もちろん足の裏に貼るためのもの。

 夕方くらいにナースステーションの事務さんがやって来て正式に退院の書類を受け取った。と言ってもこれは明日の手続の手順を書いた紙だが、これをもらえば退院だ。自分を信じて一生懸命に頑張った努力が報われる思いがした。シャワーがE5最後の枠を押さえてあったので今日はゆっくりと楽しむ。このシャワーにも本当にお世話になった。

 こうして今日で同室のクズ患者とおさらばもでき、自分自身の退院も決まった。もう後は言うことなど何もない。夕食後廊下を歩いていると声をかけてくれるナースもいた。もう二度とは会えないのも寂しいが、退院というのはそんなものだ。

今日の西側の夕方の空 うっすら富士山も見える

 同室のクズ患者みたいにとっととおさらばして二度とは会いたくなと思う奴もいれば、ナースなどのスタッフには非常にお世話になり離れがたいという一面もある。それでも退院できる喜びと開放感には代えがたいものもある。

 今日はうるさい連中もいないので夜はぐっすり眠れるはずだ。以前より書いているが疲れも溜まる一方なのに隣がうるさくてどうしてもぐっすりとは眠れなかった。こういうの今思えば多少は師長にも苦情を言っておくべきだったかな。10日以上もじっと我慢するようなことでもない■

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