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思い出は引き出しの中に。


うわっ!お金だ!
まだ入荷して日が浅い無垢材の小引き出しをスタッフが掃除していたところ、引き出し内に敷かれていた折り込みチラシの切れ端の下から(湿気などが気になったり、古い引き出しの中にはよく敷かれていることが多い。先代の知恵的な?)お札を2枚見つけた。これは絶対そうだ。所謂「へそくり」っていうやつだな。

今回はお金だったけど、古道具買取あるあるの一つで百発百中(は言い過ぎかも)小引き出しを買取するときはゴロゴロ、コロコロ、チャリチャリと必ず音がなる。その音は裁縫道具の待針とかボタンとか外国硬貨とか筆記用具とか。ちょうどいいサイズの小物が引き出し内を転がっている。

中にはおそらく学生時代に使用した小引き出しかもしれない、25点と書かれた答案用紙が引き出しの奥の方というかほぼ背板と一体化させるように、綺麗に挟まっていた。これも絶対にわざとだな。きっと「お母ちゃん」に怒られると思っていい隠し場所を探し続けた結果、答案用紙とその青年自身が一番居心地の良い場所に辿りついたのだろう(よくぞ今日まで隠しきった!俺もよくやったなー。見つかって教科書で叩かれたけど)。



五拾銭と書かれたお札はこちらを睨むように険しい表情浮かべる。
そのお爺ちゃんの名前は「板垣退助」。
歴史上の人物で絶対に間違えたことのない偉人のひとり(何やってた人かお覚えてないけど)。あの髭のセンスが中学生の僕にはかっこよく見えて「早くヒゲが生えないかなー」なんて思ったこともあったっけ。中学生の頃より物事に対しての許容範囲が広がっている30歳手前ではあるが、あの頃と変わらず「板垣退助の髭はかっこいいな」と思う。一週間ほど髭を伸ばしたことはあったけど、あまりに中途半端な生え方をしたため断念。諦めた。

そうそう引き出しの中といえば、SINGERやBROTHERといった足踏みミシンの袖に付いている長いボビンケース。あの引き出しはユニークなモノが沢山入っている。「誰かの思い出が詰まった引き出し」、経年劣化した得体の知れないモノに恐れながらも、丸く窪んだ取手に手をかけるほんの数秒はドキドキする。開ける時に少しだけ、ミシンが僕の好奇心に訴えかけてくるあの感覚が癖になって、未知の領域を毎回楽しんでいる。

鮮やかに輝く赤や黄色の糸を纏った木製のボビン、先端は錆び、持ち手の跡がくっきりと残る糸切鋏。「何を作っていたのだろう」誰かが、誰かのために使われていた日ヤケした天板や滑車の擦れ、痕跡ひとつひとつが尊く思える。

今日も水屋箪笥を洗う。
あの引き出しの内側に広がる世界は一体どんな景色が広がっているだろうか。



(ちなみに献立表出てきた)。





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