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「繋げる」

⚠︎ 当記事は「ゼルダの伝説ティアーズオブザキングダム」のネタバレを大いに含みます。

 メインチャレンジ「龍の泪」をクリアした。









 ブレスオブザワイルドには、3体の龍がいた。フロドラ、ネルドラ、オルドラ。雷、氷、炎をまとって空を優雅に舞っていた。
 ティアーズオブザキングダムには、そんな彼らよりも遥か上空を飛び交う新たな龍が居た。その龍にプルアパットのウツシエを向けると、そこには「白龍」の名前が表示された。しかし、その時私は何故かウツシエを撮らなかった。

 ティアーズオブザキングダムには、ブレスオブザワイルドには無かった地上絵がハイラル中にあった。自由に探索が出来るようになった私がまず向かったのは「カカリコ村」。インパに会いたかった。するとそこにはインパの姿は無く、私はインパを探しに馬宿まで向かった。インパはその近くにある地上絵を調べていたのだった。インパが調査していた地上絵をリンクが調べる。すると、涙の形をした所に水溜まりのような物が現れる。それを調べると回想シーンが流れるのだ。
 城の地下で離れ離れになったゼルダ。彼女は遥か遠い過去、ハイラル王国建国の時代に飛ばされていた。そこで初代ハイラル王ラウルとその王妃ソニアと出会っていた。これは、ゼルダの状況を見ることが出来るものだと思った。
 それから忘れ去られた神殿に向かい、世界中の地上絵がどこにあるのかの模式図のような地図を発見。そして地上絵を見るべき順番であろう壁画も見つけた。当初の私は、それをゆっくり、週に1個くらいのペースで見ていく予定だった。しかし、その回想シーンに不穏な文字が現れたのだ。

 不穏な文字が現れたのは、プルアパットであろう地上絵で見られる「龍の泪 その3」の中の「ミネルの助言」という回想シーンだ。過去の時代に飛んできてしまったゼルダ。今すぐもとの時代に戻らなければ。そう急ぐゼルダに、ラウルは知見のある自身の姉ミネルを紹介する。回想シーンはミネルがプルアパットを調べている様子から始まる。ゼルダが未来から来たことを疑わず、彼女はラウルと自身の種族であるゾナウ族の秘石を持つゼルダに、ゾナウの秘石について教えてくれた。そして、ミネルは唯一の時を超える力、秘石の伝承をゼルダに伝える。

 龍化の法

「秘石を呑んだものは長生不老の龍となり、永劫の時を手に入れる。」
これを、ラウルはある意味で時を超える力かとその伝承に唸った。「しかし、」とミネルは続けた。

「龍へと姿を変えた者の心は、永劫に戻らない」

 その言葉がSwitchを持つ私の目に、耳に飛び込んできた時、嫌な汗が滲んだ。まさかあの白龍は。はじまりの空島を飛び立つ時、あの白龍が唸り声をあげた。こちらに来て何かしてくれるとか、そういった演出があるのかと思ったが、特に何も無くリンクは地上にたどり着いた。最悪のシナリオが頭に描かれていった。ゲームの序盤、ゼルダが目の前を歩いていた。彼女を厄災から救うことができたことを実感できた。それが嬉しくて、ゲームを進めるのを拒む私がいた。進めば進むほど、ゼルダが遠のくのが分かったから。しかし、彼女は想像以上に遠くへ行ってしまったかもしれない。それが酷く恐ろしかった。

 嫌な予感を抱きながらも、私はゲームを進めていくことにした。でも、そのうちに「ゼルダならやりかねない」という思考が頭の中を泳いだ。
 ゼルダの伝説の歴史、その最古を描いたシリーズである「スカイウォードソード」では、ただのリンクの幼馴染みのゼルダが登場する。しかし、ゼルダは太古の昔に終焉の者と呼ばれる巨悪と戦い、地上を打ち上げ人間を空へと逃がした女神ハイリアの生まれ変わりだった。彼女は女神ハイリアの使いのインパと共に時を遡り、終焉の者の封印を強めるために、戦いの時代からゼルダとリンクの生きる未来までの数千年間眠りにつく。そして、ブレスオブザワイルドの、ティアーズオブザキングダムと同じゼルダは100年間もの間自ら厄災ガノンを抑える人柱となり続けた。ゼルダという魂は、幾度となく時を超え続けているのだ。だから、やりかねないと思ったのだ。
 空を見上げると、シルエットしか見えないほど遠くの空を泳ぐ白龍の姿が見えた。あの時と同じように、私はプルアパットのウツシエを白龍の方向へ向けた。そして今度はしっかり撮った。すかさず私はプルアパットを開き直し、ハイラル図鑑を開いた。記録された白龍のところを開く。するとそこには「まばゆい黄金色のたてがみと純白の体から白龍と呼ばれている」と説明文があった。そして、

「同時になぜか懐かしい気持ちになる」

との言葉が添えられていた。疑いは確信に変わった。


 空島を探索していた時、上空を白龍が舞う姿が見えた。「近い。」そう思った。私はゾナウギアの「翼」とかをいろいろ出して繋ぎ合わせて、簡易の飛行機的な乗り物を作った。大きなゾナウエネルギーを何個か使って少ないバッテリーを補い、ギリギリのところで白龍の体に飛びつくことが出来た。白龍の頭には光る何かが刺さっていた。頭に足を降ろすと、そこには目を疑うものが刺さっていた。

マスターソード

 Aボタンで「ぬく」の表示が現れた。しかし、私はその時ハートの器の数も少なく、がんばりゲージも一周分しか戻せていなかった。Aボタンを押すと、白龍がリンクを振り払おうとするように、痛がるように暴れていた。表示される消耗するものはがんばりゲージであった。
 「まだ全然進めてないし、抜けずに振り落とされるだろうな...」と思っていた。だから抜けた時にびっくりしてしまった。そしてゼルダのムービーが流れる。私は全くゼルダの気持ちを知らずにマスターソードを手に入れてしまった。

 それから猛スピードで「龍の泪」を進めるべく、一気に地上絵を巡った。ガノンドロフの登場シーン、ラウルのもとへ訪れ跪く場面。それを見た時私は「時のオカリナじゃん!!!!」とデカい声が出た。時のオカリナで、力のトライフォースと共鳴し魔王となったガノンドロフ。ティアーズオブザキングダムでも、彼はゾナウの秘石の力により魔王となった。
 封印戦争。ゼルダはその未来を知っていた。だから、ラウルに勝てないと告げた。するとラウルは王としての覚悟と、「リンク殿に託そう」と未来を見据えた発言をし、「ゼルダに出来ること」について言及してその場を去った。魔王の封印は必ず解かれる。ゼルダは呟いた。

「もう人には戻れない」

 ゼルダのもとに現れた、朽ちたマスターソード。その中に眠る剣の精霊ファイの声がゼルダに届く。ゼルダは、自分の中に宿る破魔の力を長い時間をかけてマスターソードに宿し、ガノンドロフの瘴気にも打ち勝つ刃にしようとしたのだ。だから彼女はゾナウの秘石を飲みこみ、マスターソードを抱き、龍へと姿を変え雲海へと消えていった。

「リンク!世界を...!」

 その回想シーンを見終わった時、私の両目からはボロボロと涙が流れていた。
 ブレスオブザワイルドでは、ゼルダはどれだけ修行を重ねても封印の力に目覚めることが出来ず悩み続けた。父には叱責され、リンクは退魔の剣に選ばれた。ずっと劣等感と無力感に苛まれていた。厄災ガノンが復活し、ハイラルを護るために配備された四神獣とガーディアンが乗っ取られた。神獣の繰り手に選ばれた四英傑、ゾーラ族の姫ミファー、リトの戦士リーバル、ゴロンの猛者ダルケル、ゲルドの族長ウルボザを失った。そして、実の父親であるハイラル王も。リンクに手を引かれ逃げるゼルダは、泥に足を取られ体勢を崩してしまう。リンクがそれに気づき振り返ると、ゼルダは泣いていた。「私のせいで」と、17歳の少女は泣き崩れた。「私のせいで、仲間たちを、民を、お父様を死なせてしまった。」ブレスオブザワイルドでゼルダは苦悩し続けた。たった17歳の少女が、世界の全てを背負い厄災に立ち向かった。そして、100年の時を経て目覚めたリンクが、彼女を助け出した。それなのに、ゼルダはまた自分を犠牲にして世界の全てを背負った。自分というものが無くなってしまう選択を選んだ。
 秘石を飲もうと、両手で秘石を持つゼルダの手は小刻みに震えていた。そして身体が龍に変わる。彼女の本心は、理解出来る。だからそれが泪となって世界中に落ちて地上絵となった。地上絵は、ゼルダの存在証明だったのだ。

 まだクリアしていないというのに、私は震えあがった。ゼルダの役目は、マスターソードを癒し力を込め、リンクに渡すこと。私のプレイするティアーズオブザキングダムのゼルダは役目を終えたのだ。なのに彼女は、未だに大空を飛び続けている。それが酷く辛かった。龍の泪をクリアしてしばらく、白龍の背中に乗った。もう離れられないと思った。結局私は、マキューズ半島からゲルドキャニオン辺まで白龍に乗り続けた。。。


 そして昨日、改めて「ゼルダの伝説ティアーズオブザキングダム」のメインテーマを聴いた。情緒が終わっていたので、その旋律だけで泣き出した。
 ブレスオブザワイルドのメインテーマは、意図的に音が切られた場所がある。それは厄災により絶たれた100年を表している。ティアーズオブザキングダムは「パチンッ」と音が響き最大の盛り上がりに繋がる。それは、太古からのゼルダの想いが未来の最後の希望であるリンクに繋がった音、リンクした音だ。優雅な序盤の演奏から、この音の区切りによって壮大な、雄大な勇気が邪悪な力に立ち向かっていく姿が描かれているのだった。そして、最後に儚く流れる「ゼルダの子守唄」が、ゼルダが消えてしまうような物悲しい音に聴こえて辛かった。




 2022年に出会い、虜になってしまった作品「ゼルダの伝説」。全作品に目を通し、自分でもプレイした。ブレスオブザワイルドの時は全く無かったゼルダの伝説の知識。ティアーズオブザキングダムは大量のゼルダ知識を蓄えてプレイした。だからより感動が沢山あった。

 いや、まだ私はクリアしていない。この先あと何回泣くだろうか。ガノンドロフを倒すのはとにかくやり込んでからがいい。と思う気持ちと、ゼルダを早く助けたい気持ちの両方がある。まだまだ始まったばかりだと信じて、私はガーディアンの居ないハイラル平原を走った。














サムネイルは、白龍の上から撮ったもの。

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