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Culture|Moi Sauna Moi Towada 〈05.冬の北奥(ホクオウ)であいましょう〉

フィンランドが発祥とされるサウナ。ここ数年は日本でも人気が高まり、「ロウリュ」や「ヴィヒタ」といったフィンランド特有のサウナ文化も浸透してきていますが、まだまだ知らないことも多いはず。この連載では、今年の春にオープンしたサウナ施設・十和田サウナさんに、サウナにまつわる様々な話を伺います。

こんにちは、十和田サウナです。全国的にもだいぶ寒くなってきましたが、十和田湖ではすでに雪が積もりはじめています。北東北の奥地、秋田県と青森県の県境に位置し、標高約400mの場所にあるこの土地は、1年の半分が冬といっても過言ではありません。3~4月頃まで雪が降る、フィンランドの北部とも似ているところ。

連載の中でも雪中のサウナづくりを紹介しましたが、自然の厳しさをまざまざと思い知る季節でもあります。氷点下の気温、毎朝夕の雪かき。農作物が育たなくなるこの時期は、秋までに仕込んだ保存食もうまく活用しながら暮らします。「なんだか毎日大変そう」そんな印象を雪国に抱く方も多いと思います。私自身もこの表現をよく使ってしまいますが、「慣れてしまえば毎日の歯磨きと一緒」。この過酷な状況下だからこそ、自然から与えられるものの大きさを感じるのです。今回はシーズンを迎えた今、「冬こそ楽しい」十和田湖をご紹介します。


ネイチャーガイドチームとの出会い

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そもそも十和田サウナは、十和田湖の自然環境を楽しんでもらうためのツールとして誕生しました。サウナを通して研ぎ澄まされる五感。その状態で十和田湖に身体をあずけると、言葉にはできないネイチャー体験が待っている、とはしつこいぐらいにこの連載でもお伝えしてきたかと思います(最終回、しばしお付き合いください)。グリーンシーズンはもとより、ウインターシーズンもしかりです。

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そして、その体験ができるのは、実は十和田サウナだけではありません。雪のアクティビティといえば、スキーやスノーボードを思い出しますよね。と同時に「運動神経がある人の遊び」と個人的に思ってしまうのは、人一倍運動神経がないからでして…。少しだけ個人的な話を続けると、十和田湖に住み始めたのはちょうど雪が降る頃でした。雪がまったく降らない場所で生まれ育った私は、最初は雪の存在に浮かれつつも「冬は一体何をしたらいいんだ?スキーもスノーボードもできないのに」と戸惑っていました。

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そんな時、十和田湖での過ごし方や遊び方を教えてくれたのが「Towadako guide house 櫂」のネイチャーガイドチームでした。十和田湖をフィールドにして、一年を通してカヌーやランブリング(ぶらぶらと森を歩くこと)のガイドをしている友人たちです。彼らもまた、カヌーやランブリングを通して十和田の自然を感じてもらおうと活動しています。十和田サウナのはじまりは、彼らに教えてもらった十和田湖からといっても過言ではありません。


水の上に浮かび、雪の上を歩く十和田湖の冬

雪の中を歩くだけでアクティビティになるのか、氷点下の冬の湖でカヌーをするとは?アウトドア経験のない私の頭は当初、クエスチョンだらけでした。しかし、冬の湖に出てみれば、モノクロームの世界に包まれ、静まり返った自然の中で聞こえるのは鳥の声、風の音、水の音、雪の音、空気の音。いつの間にか自分自身もその一部となる瞬間が訪れます。それは、土の上を歩くのとは全く違う、水に浮かびながらの異次元の感覚。出会ったことのない世界へと誘ってくれるのです。

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雪の山を歩けば木の穴にどんぐりが。「これはリスが貯食しているのだけど、よく忘れちゃって取りに来ないんだよ」と教わります。

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枝には見たことのない透き通ったグリーンの何かが…ミノムシ?「それは『ウスタビガ』の幼虫。めったに見られないよ」なんてことも。葉を落として春を待つ木々にもたくさんの物語が詰まっていることを知りました。

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そして、もちろん雪の中はただのブーツや長靴では歩けません。北欧でもよく使われているスノーシューやクロスカントリースキーの一種であるスノーランブラーという道具を使って雪道を歩きます。森の傾斜を登っては滑るを繰り返すのですが、高さ60㎝くらいであれば、私でも斜面を滑ることは恐くない!自然と身体が動きます。

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写真は十和田湖から流れ出る奥入瀬渓流の滝が凍結してできる「氷瀑」。普段は近づけない滝も、雪のおかげで私たちも自由に動き回ることができます。


自然に感謝しながら十和田湖を遊びつくす!

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以前訪れたフィンランドの森と湖にも、同じようにサウナがあり、カヌーがあり、森を歩く人がいました。冬も、スキーはもちろん、湖でアイススイミングを楽しむなど、フィンランド人の遊びはいつも自然があってこそ。スキーもスポーツである以前に、自然を親しむための道具なんだと教えてくれました。これは、前々回にお伝えした北欧の「自然享受権」の話にもつながります。自然を敬いつつ、自由に利用し後世に残していくこと。ただ守るだけではないのです。私たちはそれを十和田湖でも実践したいと思っています。

十和田サウナの連載は最終回を迎えますが、この連載を通して、ニッポンの北奥・十和田湖に少しでも親しみを感じていただけたら幸いです。公共交通機関がすべて絶たれ、自力でしか来ることができない冬。この厳しい環境こそが、ありのままの自然に触れられる時です。次はぜひ、冬の北奥(ホクオウ)であいましょう。


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https://towadasauna.com/

Instagram: @towadasauna
Twitter: @towadasauna

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