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コンサートと思い出(1)


今晩は、ドイツで師事した1番最初のピアノの先生のコンサートに行ってきました。
そもそもコロナ禍以来、私はずっとコンサートに行っておらず、ちょっとよそ行きのお洋服を着てコンサートに行くなんて、3年ぶり。それに先生のコンサートも、、、前回聴かせて頂いたのはもう10年以上前(!)、、だったような、、、。

会場はミュンヘン郊外のルービンシュタインホール。もともとはスタインウェイハウスの建物の中にあったホールですが、今はスタインウェイ社は街の中心部に引っ越し、ホールだけがそのまま郊外に残されました。

さて、プログラムの冒頭のハイドンのトリオ、、。始まるやいなや、何かものすご〜く懐かしいような気持ちが湧き起こり、、、。何故だろう、、、、?と不思議でしたが、その懐かしい気持ちが持続したままハイドンは爽やかに終わり、、、。でもあの懐かしさ、なんだったんだろう?

今日はハイドンから現代曲まで、、というプログラムで、聴いたことのない面白いピアノ曲、「奈良の大仏」なんていうのもありましたが、後半冒頭のチェロ曲、メンデルスゾーンのバリエーションで、またものすご〜く懐かしい気持ちが身体全体に蘇りました。

「また、この懐かしさ、、、でも何故?」
理由は全くわからないまま、コンサートは満場の拍手と興奮に包まれて終わり、、、。私は先生の楽屋にご挨拶に行ってから帰ることにしました。

先生の楽屋に近づくと、ドアは開いたまま!「先生、いらっしゃるかな〜?」とチラッと覗いてみると、先生はすぐに私に気づいてくださり、昔と全く変わらない笑顔で「あらあらあら〜、久しぶりじゃないの〜!ほら、あなたも彼女のこと、知ってるでしょう?彼女は大学の時、私たちのコンサートでいつも譜めくりをしてたから、覚えてるでしょ?」とチェロ奏者にも話しかけていました。

「そうか!!!そうだった!!!」

そうだったんです、、今日のハイドンのトリオ、私が大学の時に先生のコンサートで譜めくりをしていた曲、だったんです。(その時はピアノ、バイオリン、チェロのメンバーで、今日はバイオリンではなくてフルートでした。)
そして今日のメンデルスゾーンのチェロ曲も、当時のコンサートで私がよく聴いていた曲でした。

だから、懐かしかったんだ、、、。

「バイオリンの彼は、残念ながら亡くなってしまったのよ。だから今日はバイオリンの代わりにフルートに入ってもらったの。もうあの時のトリオは出来なくなってしまったのよ、、。」と悲しそうに告げる先生。ふと見ると、チェロ奏者も俯いていました。

そうか、、、もうあの「トリオ・オルフェオ」の演奏はホールでは聴けないんだ、、、。

ドキドキしながらコンサートの譜めくりをしていた大学1年生の私も、もう遥か彼方の思い出の中にしかいませんが、タイムマシンに乗ってあの頃の私に会いに行ってみたいものですね。そして「今のこの時間、本当に大切にしなさいね。未来のあなたにとっては、懐かしく愛おしい宝物のような思い出になっているよ。」と教えてあげたいです。

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