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フィリピン世界遺産バナウエの棚田を訪問「心を開いたからこそ体験できた最高の誕生日」

「天国への階段」とよばれるフィリピンの世界遺産・バナウェの棚田。「誕生日の思い出に」と、ひとり訪れたフィリピン人英語講師はここで思わぬ出会いがあり、自分自身を見つめ直すきっかけになったといいます。いったいなにがあったのでしょうか。彼がこの旅で訪れたスマギン洞窟や、これから行ってみたいバタネスやイロコスなどについても併せて紹介します。

始めての飛行機搭乗はわからないことだらけ!

フィリピン人の英語講師である彼がコルディレラ地方を訪れるため、今住んでいるセブ島を出発したのは10月3日。

「旅行が好きなんだ。仕事が休みの日はいつもいろんなところを旅してる。10月6日が自分の誕生日だったこともあって、自分へのバースデープレゼントをしようと思って、ひとりで訪れたんだよ。誰も誘わずに一人で出かけたから、あとで旅行のことを知った友達になんで教えてくれなかったのといわれたけど、お金かかるからね」

実は、彼はこの旅行で始めて飛行機に乗ったのだとか。

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「セブ島からマニラまで飛行機に乗ったよ。初飛行機! チケットの座席の見方がわからないから、機内でどんどん奥のほうに行っちゃって。すみません、すみませんっていいながら人の流れに逆らって混雑する通路を前の方に戻ってきたんだけど、CAには笑われるしさ。トイレにいって水を流そうと思ってボタンを押したら、吸い込むときにズボッ!っておのすごい音がするでしょ? あれですごく驚いちゃって‟わぁ!”って。ドアの向こうにCAがいたらしく、お客様大丈夫ですか?って聞かれたほどだったよ(笑)」

「天国への階段」バナウェイの棚田群を目にして

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ところで、なぜ彼はわざわざ飛行機にまで乗ってバナウェイの棚田を見に行こうと思ったのだろう。


バナウェイの棚田は、山の斜面地を利用してつくった稲作地で、棚田の総延長は20,000km。壮大な棚田風景は「天国への階段」とも言われている。また世界七不思議の次に来る「世界8番目の不思議」との呼び名があるほど。フィリピンが世界に誇る世界遺産の一つとしても有名。

彼が訪れたときは朝。山の気温は低く、息を吐くと白くなるほどだったという。「目の前に広がる壮大な自然を前に、自然と涙がこぼれた」と彼は話してくれた。

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「I only saw this in my books when I was in elementary. Now, I just can’t believe it’s right in front of me.」

言語も違うし、誰とも話さなかった

彼はここでたくさんの記念撮影をしたそう。ところで、誰が写真を撮ってくれたの?

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「ツアーガイドだよ。パッケージツアーに申し込んだんだ。旅行自体は1人でいったんだけど、棚田を見に行くときはほかの人も何人かいたよ。1台のバンに数人が乗り、一緒に出掛けたんだ。でも、バンの中では誰とも話さなかった。だって、全然知らない人たちだったし、自分はビサヤ地方出身。ほかの人たちはマニラ周辺の人たちだと思ったから。言葉も、僕はセブアノ語だけど彼らはタガログ語を話すしね。ずっとヘッドホンをつけて、一人音楽を聞いていたよ」

同じフィリピンでも出身地によって違う2つの言語

ところで、彼はタガログ語は話せるの? フィリピンの言語、タガログ語とビサヤ語(セブアノ語)はまったく違うと聞いたことがあるけど。

「話せるよ。小学校で習うからね。でも、語学学校のあるセブ島などビサヤ地方にいるときは基本ビサヤ語しか話さない

彼は、勤務先の語学学校ではいつもたくさんの友達に囲まれているけど、シャイなところもある。今回の旅では、一人だったし、まわりはみんな違う地方の人出身だったから話さなかったんだと思う。たぶん、言葉の壁もあるから、彼は積極的にほかのツアー客には話しかけなかったのかも。

自己紹介して打ち解けた結果、お互いを受け入れることができた

そんななか、休憩のときにガイドがそれぞれ簡単な自己紹介をするように言ってきた。それをキッカケにこのあと、彼に予想外の出来事が!

「13人いたかな。大きな1つのテーブルについて、お互いに自己紹介をして打ち解けたよ。なんでこの旅にひとりで来たの?といわれたから、10月6日が誕生日で自分へのプレゼントにと、答えたんだ」。

彼がバナウェイの棚田を訪れた日はちょうど誕生日当日。この話を聞いて、一緒にツアーに参加した人たちは口々に彼におめでとうと言ってくれたそう。

「家族と離れて、たったひとりきりの誕生日を迎えるはずだった。でも、彼らがおめでとうといってくれて、すごく嬉しかった!全く知らない人たちなのに、僕のためにお祝いしてくれたんだよ」

嬉しいのはそれだけじゃなかった。

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洞窟探検中に「誕生日のケーキでお祝いしよう!」

彼らは、バナウエ棚田を見学したあと、みんなで洞窟探検にでかけたそう。スマギン洞窟では、王の間といわれる「キングズカーテン」と地底湖のプールを見てきたとのこと。中にはいるときはガイドが必要で、ガイド料500ペソを払えば4人まで入れる(2018年1月時点)

「足元が悪いから命綱のロープをしっかりとつかまっていないと危ないよ。洞窟内は手つかずで、自然の造形美が楽しめる。ツアーで仲良くなった人たちと一緒に行ったから、とても楽しかったよ」

それに……と彼は言葉を続けた。

「君の誕生日を一緒にお祝いしたくて」

「バースデーストーンって知ってる?」

バースデーストーン? なにそれ。聞いたことないなぁ。

「一緒に行ったツアーの人たちが、ある場所にいったときに”君にケーキを用意してあげるよ。だから目を閉じて”と言ったんだ。そして‟いいよ、目を開けて”というから目を開けたんだけけどなにもなくて。‟どこにケーキがあるの?”と聞いたら、大きくて平らな石を指さして‟これだよ! 本物のケーキは用意できないけど、君の誕生日をお祝いしたくて”と言ってくれてね。すごく嬉しかった」

なんだか泣けてくる。

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洞窟の中は、暗いし足元は滑りやすい。ひとりで訪れるのもいいけど、仲間と「気をつけてね」「あ、足が滑った」「大丈夫?」なんてやりとりをしながら進むのも思い出の1つになっていいかも。

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「キングズカーテン」

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地底湖のプール。水着を持っていけば泳げる(らしい)

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一人旅もいいけど、仲間ができると旅は数倍楽しくなる!

吊るされた棺桶、赤い民族衣装、スマギン洞窟。コルディリェラ行政地域の観光スポット

彼が訪れたコルディリェラ行政地域には、いくつかの観光スポットがある。サガダ地方では崖から棺桶をつるす「ハンギング・コフィン(懸棺葬)」とよばれる独特の埋葬風習がある。これは自然崇拝に基づくもので、人口1万人ほどの山村に古くからつづくものだそう。

彼がこの旅でもう1つ感動したのは、赤い民族衣装を身に着けられたこと。

独特の深みがある赤い衣装で、これを見た時なんて美しいんだ!って思ったよ。僕は、大学でMAPEHという音楽、美術、保健体育がひとつになったフィリピン独自の教科を取っていたこともあり、アートや文化にはとても興味があるんだ

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自分が心を開けば世界はどんどん広がっていく

「今回の旅でどんなことを学んだの?」と、私は彼に聞いてみた。

「いろいろあるよ。その地域に根づいた独特の文化を体験することは自分にとってすごくいい経験だったし、インスパイアされた。民族衣装の色あいや柄の織り方にも感銘を受けた。コミュニケーションを取ること、心を開くこと、人と関わることの大切さも学んだ。

この日のツアーに参加したとき、僕は誰とも話そうとしなかったし、自分の世界に閉じこもっていたんだ。そもそも一人旅行だったしね。だけど、一緒に行った人たちと話して仲良くなったら、彼らは誕生日を祝ってくれて。そのうえとても素晴らしい贈り物をしてくれた。おかげで、ものすごく大切な思い出ができた」

でかけるときは1人旅だったけど、現地でたくさんの人と知り合ったことで、帰る時には仲のいい人たちみんなと一緒に出かけた旅になっていたよ。すごく思い出に残る旅だった」

フィリピン最北の地バタネスや街全体が世界遺産に登録「イロコス・ビガン」に行ってみたい

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今後、彼はどんなところに出かけるつもりなんだろう?

「そうだねー。バタネスとかイロコスかな」

バタネス州はフィリピンの中でもっとも大きな州。ルソン海峡に浮かぶバタン諸島から成っている。ストーンハウスと呼ばれる石積の家や教会、バタン島のシンボルであるライトハウス(灯台)などが有名。フィリピン最北の地にあり、台湾に近いことから台湾文化を受け継いだ独特の文化が見どころ。

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イロコスはスペイン統治時代の街並みが残り、どこかヨーロッパを感じさせる場所。「フィリピンのバロック様式の教会」のひとつとして世界遺産に登録されている聖オーガスティン教会や、街全体が世界遺産として登録されているイロコス・スル州の州都、ビガンなどが有名。ここ、実は道路が石畳でできているため、自動車は走行禁止。代わりに何を使うかといえば、「カレッサ」といわれる馬車! 馬車で街散策なんてかっこいい!

「イロコスは物価が高いよ。でも、行ってみたいんだ」

彼は、本当によく旅行に行っている。たぶん、1カ月に1回くらいはどこかにでかけていると思う。彼の話を聞いていると、フィリピンでいっぱい訪れてみたいところが出てくる。

「今度フィリピンに来たら、案内するよ。語学学校の仲のいい先生たちみんな誘って一緒に行こう」

フィリピンといえば、セブ島とマニラくらいしか知らなかった私の世界は、彼を始め、語学学校の先生たちによってどんどん広がっていく。フィリピンを訪れるのが、また楽しみになってきた。

※ビガンの写真提供:生方正

私が英語を学ぶ目的の1つは、英語でインタビューできるようになりたいから。その目的を達成するために、今、語学学校の先生たちひとり一人にインタビューしています。今回は、QQ EnglishのFamous先生に彼の趣味の旅行の話を聞きました。ご協力いただきありがとうございます。

※昨日書いた「フィリピ国内外を自由に旅したい。ある英語講師の願い」第二弾として、今回は旅行に絞って話を聞きました。


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