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プライドの価値。

 日曜日の午前中、男が風呂に入っている。
 「上半身が、少し肌寒くなってきたな」と、バスタブの中に座ったまま思い、それと同時に視界に入った自分の胸元をぼんやり見ていた。ぬるくなったお湯に、乳首のそばから生えた毛が一本、揺れている。
 自分はこれと同じだなと、男は思う。
 人知れずここまで育ち、これが何に必要かもわからない。そして、流されるまま、「わたしも大勢いる毛の一員さ」といった顔をしているのが妙に腹立たしかった。さらには自分の一部であるからこそ、無理に引き離そうとすると痛みを伴うのだ。当然、その姿は醜いものである。

 それでも男は、その風呂でそれなりの満足をしている。
 男は立ち上がりる。
 シャワーを体にかけてから風呂場のドアを開けると、熱いお湯と冷たい外気がリラックスを完成させる。喝采を送るように身体から湯気が上がった。
 電気シェイバーのもみあげトリマーを使って、乳首の毛を切り捨てる。
 
 なんてことないプライドが一本、床に落ちた。

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