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少しの憧れは、いろんなところにある

 書店に行くと足を止めてしまう手帳コーナー。ちょっと憧れのようなものがある。でも、わたしは見る専門、手帳を持っていない。
 いまだに手帳を記入する自分は想像上の人物で現実味はないから、利用している人はどんな気持ちで、どんな時に記入しているのか不思議で仕方がない。多分、時間の使い方がうまく、字も綺麗で、目標を明確化できるスマートな思考のできる人。そんな人物像を思い浮かべている。そして、あの大量に並べた手帳コーナーに入っていく時は、あたかも自分もそういった人ですと姿勢を正して、「さて、今年も手帳を新しくする季節ですね」と表情に張り付けて手帳を手に取ってみるのだ。
 なんだろう、文具の中でもひと際魅力的に見える手帳を購入する日がくるのだろうか。喫茶店で読書する人よりも手帳を、しかも程よく記入済みの新品よりふっくらした手帳をみている方がかっこいい。
 むかしから映画で見るような社長秘書が手帳片手に予定を伝える姿も、もちろんかっこいい。その場合は、手帳はあまりふっくらしていない方が似合っている。いまはタブレットのほうが便利なのかもしれないけど、手帳のほうが好ましい。
 ベテランの風格漂うおじさんも薄めの手帳がいい。どこからともなくスッと取り出す。ぺらッと必要なページに視線を落とすといった簡潔な所作ですませ、颯爽と歩き出す。かっこいい。
 
 こんな風にわたしの頭の中には、たくさんの手帳持ち達がいっぱい住んでいる。手帳のオーナーと読んでもいい。それくらい、わたしと手帳の距離が遠くに感じてしまう。
 「買ってみればいい」、そう思うかもしれない。でもそうは簡単じゃないのだ。わたしにとって手帳を買うというのは、ちゃんと記入して、更新して使う。無事使い終わったら、手帳が発売される季節には書店で使いやすい物を探し、2年目の手帳持ちとしてその道を精進する。そういう事なのだ。ただ単に、気に入ったものを駄菓子を選ぶ感覚でレジに持って行って支払いをするだけのことではないのだ。
 それでいいなら体験済み。手に入れても殆ど新品のまま、バックに入れることもなくなる。当然、中身を記入するどころか空気にさらされないままのページだって存在したままお役御免になる。ノートならそんなことはないのだけれど、こと「手帳」となると、どうしていいのか分からない。そして、それが故に憧れる。

 今年もたくさんの手帳持ち達がこの世に生まれるだろう。わたしは、またその道を進めないだろう。不精で片付けたくない気持ちが今年も沸いては消えるから、書店の手帳コーナーは人で溢れているのかもしれない。わたしもその一人。
 
 ルフィーもこんな気持ちで自己暗示をかけているのかな。
 手帳持ちに、オレはなるッ。

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