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晴れのち曇り。

 折角のよく晴れた午前中を見送り、軽い昼食を済ませると、「眠いな」と思う。机の上のデジタル時計は、14時と表示している。
 間違いなく、ボクは馬鹿だ。
 昨日の夜に眠気と過ごしている時には、連休初日に行くべきところは先にかたずけよう、そう決めていた。床屋の開店時間にあわせて自宅を出発して髪を切り、返却期日の図書館へ行く。それから、昨日買い忘れた牛乳を買って帰宅する。ホットケーキミックスと卵があるから、ホットケーキを食べよう。それが理想。夢の世界に入りながら思い描いた休日の計画だ。
 
 それがどうしてか、今ボクはチョコレートをかじりながら計画変更を余儀なくされている。
 まずは、これから昼寝をすることになる。そうすると、床屋に行くのはあきらめるか。でも、図書館には行きたい。図書館の返却期限を破るのは、気が進まないからだ。
 図書館には返却ボックスがあるから、夜でも返却はできる。だけど、延長はできない。別に追加料金が発生するレンタルショップとは違うのだから、2,3日なら返却しないで読み終わってから返してもいいかもしれない。そんな人は、ざらにいるように思う。でも、なんだか気分が悪い。無料だからこそ、余計に気分が悪いのだ。
 百歩譲って、読み終わった本が返却日に間に合わないのは許せる。ほかの予定で、どうしても返しに行けない人もいるだろうし、単純に忘れてしまうこともある。でも延長を無断でするのは違う。少なくとも続きを楽しみたいと思っているのに、忘れた”フリ”をするのは気持ちが悪い行為だ。自分が歩く先に、空き缶が落ちているのが目に入ったら拾ってゴミ箱に捨てるし、誰かが転んだら、「大丈夫ですか」と手を貸そうとする。同じことだ。それを避けて歩くのは気持ちが悪いから。
 だから、どうするかというと、結局は行くのだ。それしかない。
 それなら、帰りに牛乳も買って帰ろう。
 んっ? と、ここで気が付く。外に出るなら、床屋も行こう。明日にまわすのは面倒だし、店も開いてるのだから。そうしよう。
 時計は、午後15時。
 意味の解らない一時間が過ぎ、気持ちの悪いそれ以降を回避した。
 これでやりがちなのが、安心して牛乳を買うのを忘れること。ここまで予想して、やっとの思いで外出した。

 スマホの時計は、午後17時。
 帰宅して、コートを脱いでから、ハンドソープで手を洗う。
 さっぱりとした髪の自分が、鏡に映る。
 PCデスクの上には、新たに借りた本。
 
 ……牛乳を買い忘れた。
 やっぱり、ボクは馬鹿だ。

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