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42歳なの

私と同じ1977年生まれのシャキーラは43歳の誕生日に、50歳のジェニファー・ロペスとスーパーボウルのショーで最高のパフォーマンスを披露し、絶賛された。

2人ともラテン系で、高齢出産をした母でもあり、パワフルでセクシーなエンターテイナーとして進化し続ける憧れの女性。中年であることも、子育て中であることもルーツも何ひとつハンデにはしない。全てをひたすら明るく、ポジティブに、エネルギーの塊にして表現している。

今までのヒット曲とメッセージを集大成のように15分のショーで表現し、でもそ、なんら懐古的な印象がないことにひたすら感動し、パワーをもらった。何度もなんども見て泣いた。かっこよすぎた。

アート活動に明け暮れた22歳まで

3年ぶりのnoteのタイトルを「42歳なの」としたのはちょっとした思い出がある。今から20年前に、22歳の2月に札幌の「4プラ」というファッションビルの最上階ギャラリーで「22歳なの」というアート展(2人展)を開いたことを思い出したからだ。

「22歳なの」というタイトルは、年齢にイメージされる若さを嘲笑しつつ、華々しさとは無縁の地方の大学生の現実との隙間みたいなところを挑発的に表現したかった……気がする。22歳の私は挑戦的でアグレッシブで、そしてひたすら若かった。

展覧会の内容は、大学の卒業制作「自己愛完結型プロジェクト:進路相談バージョン」を札幌・時計台ギャラリーで卒業制作展として合同展示をした後に、さらにギャラリーを借りて搬入し、展示したもの。美術科の卒業の選択肢を「教師」「就職」「進学」「アーティスト」という4択にして表現した。

さらにエッセイを書き、親友がイラストを描いた作品に、インスタレーション作品を加え、約2週間展示をした。4年間の集大成をめいいっぱい表現したかった。ギャラリーが私たちのステージだった。

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自己と向き合うのは学生時代で完結した

「自己愛完結型プロジェクト」と題したインスタレーション型の作品は20歳の頃から2年間に渡って「恋のバレリーナ」「愛の女教師」「就職活動」として全4作、さまざまな合同展覧会に出展していた作品。ドイツの展覧会にも出したこともある。

表現と自己との葛藤を詰め込んだシリーズだ。自分の顔と身体の写真を撮り、グッズにして販売するような作品だったのだから、黒歴史になってもおかしくないけれど、意外と恥ずかしくない。今でも悪くない作品だったと思うくらい。

卒業後は制作会社に就職し、それ以降は紆余曲折あれど、編集・企画・執筆を主な食い扶持にしてきたので、文字通り私の「卒業」制作となり、自己との葛藤も卒業できたせいか、アーティスト活動をすることはなかった。

私は表現者でも教育者でもなく編集者になった

大学で制作を進め、就職を考える中で、プロ同士でコラボする面白さに気づいた。
そして社会に出て、「企画をする」「プロフェッショナルと一緒に規模の大きいものを作る」という仕事を始めると、とても性にあっていた。

父方の祖父が小学校・中学校の校長先生、母方の祖父が大学教授など、教育関係に携わる人が比較的多い家系だったこともあり、小学校5年生の頃からずっと一貫して10年以上、教師を目指していた。でも教育実習を経て、最終的に教師を目指すのは辞めたし、大学で美術を勉強したものの、表現者としてのアーティストの道も目指さなかった。

自分は表現者ではない。教育者でもない。表現する人やクリエイターの仕事をつなぐ、紹介する、整える編集者になった。大学4年生の頃の私の選択肢は「教師」「就職」「進学」「アーティスト」という貧弱さだったが、フリーランスというどこにも属していない選択をしている。22歳のあの頃考えていたよりも、働き方の選択肢は広がり、そして繋がるものだった。

しかし最近、「教育」「美術」に関係する仕事の依頼が増えた。卒業して20年、道はゆったりと続いていたのだと思う。どれも「諦めた」とか「選ばなかった」ではなく、どこかでまた繋がることもあるのだ。

42歳なの

「42歳なの」という語感は相手も自分も居心地悪くさせる印象がある。「そうすか」としか返せないような……。男性なら本厄だし、特に面白みもなければ、そんなに興味もそそられないかもしれない年齢。諦めることの方が多いような気がする。でもそれはそれで受け入れて、過去の自分も受け入れて、さらに道を作っていくことはできる。

シュタイナーは「教育は芸術の域にまで高められるべきだ」と主張した。芸術と教育の繋がりはまだまだ考えたいことがたくさんある。そして、子を育てる母となった今「本当に良い教育とは何か」という哲学的な問いが常に胸のうちにある。教育者でありたいと願った思いも繋がっている。

道をつなげてつなげて……私の42歳のステージも、大観衆を揺るがす感動はなくとも、誰かに何かが届くパフォーマンスをしたい。ひっそりと。でも熱く。

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