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喫茶店でとなりにいた人の話から考える軍隊における死傷者という数え方

どうも、黒田です。

先日、喫茶店でコーヒーを飲んでいるときに、となりの方の会話で気になることが聞こえてきました。

「新聞の見出しに死傷者が四万ってあるけど、俺はこの数え方が嫌いなんだよ。死者と負傷者は分けて考えろよ、って思うよな」

恐らく、この記事と同様の内容が新聞記事に載っていたのだと思います。確かに一般的な感覚として、その感想はごもっともです。

だが、死傷者という言葉の意味は、軍事の面と一般社会の面で考えられるニュアンスが異なることについて、少し語らねばなりません。

一般社会の場面で「死傷者」という言葉を使うとき、それが指し示すのはその事件、事故における「被害者」です。事故等であれば、加害者に賠償を求めることも出きるかもしれません。被害者の人数の多さによって、その事件、事故の大きさというものを表そうとしているのです。

軍事の場面で「死傷者」という言葉を使うときは、それとは少し異なります。もっと言えば、記事を確認して欲しいのですが、死傷・捕虜・行方不明という書き方をしています。これが意味するのは、ロシア軍の戦力がいかに削られているのか、です。

死亡者はもちろんですが、負傷者や捕虜であっても、戦力としては数えられません。負傷者が戦力と言われたときに、不思議に思われる人もいるかと思われますが、負傷者と言われたときに想像して欲しいのは、傷だらけの人よりも、指を失ったり、肩や足などに銃弾や破片が当たって身体の一部を動かせなくなった人です。

もちろん、片足がほとんど動かせなくてもその場で戦うこと自体はできますが、それだけで軍隊の中で戦力として数えるわけにはいきません。軍隊というのは時と場合に応じて移動して、自分達にとって最適な場所で戦うことが求められます。負傷すれば足が遅くなったり、必要なものを持てなくなります。そのため、気づいたら次の戦場にはたどり着けなくなっていたり、必要なものを持っていないから戦えなかったり、戦力として数えられません。

上記の記事は、そう言った軍隊として必要な行動ができなくなった人たちを数えると推計で四万人に及ぶ、つまりウクライナ侵略に充てられたロシア軍が推定で19万と言われているがその20%近くが使えない状態になったという、ロシア軍からすれば悪夢のような状態である、と伝えたいのです。

言葉というのは難しいもので、文脈によって指し示す内容が異なり、そのことを相手が知らないと伝わりません。

もしこの記事を読んだ方で、死傷者のイメージに乖離があった方がいれば、どうか御自分の使っている言葉の意味が相手と一致しているのかを、気にしてみてください。コミュニケーションの齟齬というのはこうしたところで起きるものだからです。

少し雑な話ですが、誰かの参考になれば幸いです。

[2022/4/3]


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