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たくさんの「ありがとう」を、毎日の移動販売で

 全国にあるローソンのオーナーさん・クルーさんに、マチの魅力とご自身との関わりをインタビューする企画「#マチのほっとステーションをつくるひと」。
 
 第8回目は、埼玉県、深谷市で移動販売を行う石丸健さんにインタビュー。取組みの経緯・その背景にあるマチへの想いを聞きました。


マチへの愛で、独立初日から一致団結

本日は、よろしくお願いします。まずは、石丸さんのローソン歴について、お伺いできますでしょうか。

 ローソンオーナーになりまして、8年を迎えたところになります。もともとは、違うオーナーさんが経営するローソンで2年ぐらい店長をやらせてもらってから、ファミリー独立という形で9年目になりました。そこから徐々に店舗を増やして、今は5店舗を経営しています。

店長からオーナーになろうと決意したのは、どのようなタイミングだったのですか?

 店長をしていたローソンが、マネジメントオーナー(本部とより強いパートナーシップのもと多店舗経営するオーナー)だったので、そこの社員として店長をしていたんですね。ある時、複数店舗を見る役職になるか、それとも近くの空いているお店で独立オーナーになるか。という選択の時があり、当時の社長の薦めもあって独立することを決めました。

 実は、ローソンで働く前は、車の板金塗装をやっていまして、板金塗装で独立をしようと考えていたんです。技術のほうは自信あったんですけれど、よくよく考えたら経営ってものが分からない(笑)。コンビニエンスストアって朝仕入れたものをその日の夜には売り切るみたいな、在庫管理とかそういった部分がすごく厳しい印象だったので、板金塗装で独立した時に備えて、そういったことも勉強したいというのが、ローソンで働き始めたきっかけだったので。もともと独立したいという気持ちがあったこともあり、決意しました。

板金塗装で独立する予定が、ローソンのオーナーにということは、何か心境の変化があったりしたのですか?

 板金塗装は技術職じゃないですか。それって自分がやらないと仕事が終わらないんですよ。でも、ローソンの店長をやっていたら、下は16歳の学生さんから、上は80歳前後まで、どの年代の人でも、同じような仕事ができて、そういった人たちと協力しながら業務を進めていけるんですよね。自分一人でがむしゃらに頑張らなくても仲間を巻き込んでできるビジネスだ、と考えが変わったのが大きなきっかけですね。

では、最初に店舗オーナーを始める時は、元々のお店のクルーもいない状況で、不安などもあったのではないですか?

 実は、すごくラッキーなことが二つ続きまして(笑)。一つ目は最初の店舗を始めたお店が、建ててから少し時間の経っているお店だったので、建物自体はしばらくそこにあったんですね。なので、地域にお住まいの方も「いつかコンビニができるんだ」ということを、しっかりと認識してくださっていて、募集広告にもすぐに反応してくださったことです。
 もう一つは本当に偶然なのですが、最初の店舗のオープンする日が、新商品のからあげクンが発売される日だったんですね。その味がまさかの「深谷ねぎ」味!ご当地のフレーバーがオープン日に発売されるのというのであれば、初日から日本一の販売を狙っていこう!とクルーと盛り上がり、一気に一致団結することができました。

深谷愛で一致団結したんですね。

 はい(笑)。私は隣の熊谷市出身なのですが、結婚を機にここ深谷市に越してきまして、妻も深谷市出身なので、地元愛は強いかもしれません。


このマチだからこその移動販売

石丸さんが取り組まれている変わった取組みに、移動販売があると伺ったのですが、どのような取組みなのでしょうか?

 お店で販売している商品を詰め込み、冷蔵・冷凍機能のついた専用車で50箇所くらいの場所で移動販売をしています。一台で毎日50箇所に行くことはできないので、1日あたり数カ所、日替わりでお伺いしています。

コンビニの移動販売って珍しい取組みかなと思うのですが…

 実はローソンの移動販売そのものがまだまだ事例としては多くなく、この地域でもコンビニの移動販売は初めての取組みでした。数年前、ローソン全社の展示会で当時まだ実験段階だった移動販売車が展示されていて、一目見た時から「これやりたい!」と思って。
 当時、移動販売車はあまり売れる見込みがないと言われていて、でも自分では勝機があると思っていたので、ずっと挑戦したいことを支店長に訴え続けて、始めさせてもらいました。

どういったところに勝機を感じられたのですか?

 実験結果等も教えてもらいましたが、その数字が全てじゃないなと。移動販売を始める前に、お店から20m先くらいにお住まいの方から「このお店は遠くて来るのが大変」なんていうお客さまからのご意見もあって、ご高齢のお客さまは、私たちが考えているよりずっと大変なんだと衝撃を受けたこともあり。そこで、自分自身で高齢者の人口や、近隣の閉店したお店の数などを調べてみて、ここ深谷だったら需要あるんじゃないかなって。
 今はデリバリーやネットで簡単に、外出せずに買い物ができますが、お買い物ってやっぱり目の前のものを手に取ってみて選びたい、っていう気持ちがあると思うんですよね。

販売する場所は、どうやって決められたのですか?これもリサーチして決められたのですか?

 移動販売って、勝手に車を停めて勝手に販売することはできないんですよ。なので「こういったことをしたいのですが」って社会福祉協議会に持っていってプレゼンして、協議しながら場所を調整させてもらいました。高齢者の多い場所、集まりやすい場所、移動販売があったら嬉しいといった要望の多い場所をピックアップしてもらいながら。

石丸さんの読み通りになったと。

 それがそうでもなくて(笑)。最初はお弁当みたいなものに需要があるのではと考えて、色々と積んでいたのですが、やっぱり毎日伺えるわけではないので、ベーカリーなど日持ちのするものが好まれるんですよね。そして、やっぱり卵、納豆、バナナ、牛乳といった生活の基本になる品揃えがすごく大事で、最初より積み込みする量もグッと増えました。

移動販売は、石丸さんご自身が行かれているのですか?

 自分自身がやりたくて始めたので、当初は自分で回っていたのですが、やっぱりお店の運営もあるので、それだと十分な場所を回れなくて。だったら専属のクルーを雇用した方が、多くの場所にお伺いできるんじゃないかなと思いお声がけしました。その、移動販売専属クルーの佐京さんなのですが、元社会福祉協議会の職員さんなんですよね(笑)。

なんと!

 立ち上げ時に、移動販売の実現にすごく力を入れてくれていた方で、「ここに行ってほしい」とか、「この地区は買い物ができないから行ってほしい」とか、色々と相談をさせていただいていました。ある日、ご退職されるということを聞いたので、もしよろしければアルバイトで移動販売をお手伝いいただけませんか?とお声がけして。
 佐京さんは本当にすごくて。伺う場所ごとに、常連お客様の欲しい商品とか、そういうのが全部頭に入っていて。新しい商品が出た時も「あのお客様はこれが好きそう」なんていうのも、気がつくんですよね。なので、今では移動販売は全部佐京さんにお任せしています。


移動販売を通して気が付いた「ありがとう」の気持ち

移動販売とお店での販売の違いってなんでしょうか?

 コンビニでお買い物をする時、お客様から「ありがとう」の言葉を聞くことってあまりないんですよね。それは、水道ひねって、お水が出てもありがとうって言わないように、コンビニで物が買えるという状況が、社会のインフラになっていることの証明だと思っていて。
 でも、移動販売で伺うと、お客様から「ありがとう」と言われることが本当に多いんですよ。「来てくれてありがとう」って、すごいいい笑顔で。商品を目の前にして、選んで買う、そんな私たちが当たり前にしている行為が普通ではないんだなと実感すると共に、普段のお店での接客の気持ちを大事しなければと思いますね。

お店に行ける、お店でお買い物できることが当たり前ではないということですね。

 そうですね。それでもローソンだけで販売できる品数には限りがあるので、もっと深谷で移動販売を増やせるように、市の方と協議して。今では魚屋さんと八百屋さん、某洋服屋さんも一緒に同じ場所で移動販売をおこなうこともあります。そうすると、色々なものが買えるので、その場所だけでお買い物が完結できる。

それは市が主導で偶然集まったのではなく、石丸さんが旗振りされたのですか?

 移動販売でのお客様の声をもとにしながら、市の方と「こんな移動販売があったらもっといいよね」なんてことを話して、様々なお店に市からお声がけいただきました。

それでローソンの売上が減ってしまう、ということは考えなかったですか?

 そんなことないですよ。ローソンの仕組みだと、生鮮はできても、生肉や鮮魚が扱えない。でもやっぱり「今日はお刺身が食べたいわ」なんて時もあるじゃないですか。ローソンだけだと何も買わずにお帰りになってしまうのですが、魚屋さんに来ていただけると、お刺身を買ってもらえる。そうすると、一緒に納豆とお醤油も買っていこうかな、というようになって、お互いにいい効果が生まれていると思います。

移動ショッピングモールですね。

 それを目指しています。将来的には、美容院なんかができる移動トラックも作って、そういうのも一緒に伺えたらいいなって。女性のお客様から、ファンデーションないのとか、化粧品ないのとか、そういったものをご要望されて積んでいくこともあるんですね。なので、美容院なんかはニーズあるのではないかなと。
 そういった場所ができると、コンビニは歩いて行けるという人でも、その他のお買い物をしに移動販売に来てくれて、改めてご近所での会話が生まれるんですよね。今日伺ったところは月に2回の移動販売なのですが、そこでしか顔を合わせないお客様同士もいらっしゃって、「久しぶり、元気?」なんてお互いに会話されていたりするのも見ていて。そうやって地域コミュニティーの活性化に貢献できると嬉しいです。

素敵ですね。石丸さん、ありがとうございました。


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