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司法試験過去問解説 平成18年刑法第2問

1 問題文

2 解説

本問はシンプルに「緊急避難の法的性質」を問う問題です。

(1)学生Aの立場をまず確定せよ。

 まず学生Aがどの立場に立っているのかを確定させます。
 Aは「緊急避難に当たる行為に対して正当防衛は成立しないが、緊急避難は成立する」という立場に立っています。
 正当防衛が成立する場合は、違法性のある行為に対して正当防衛が成立するので、正当防衛が成立しないということは、緊急避難に当たる行為違法性のない行為ということになります。そうすると、Aは違法性阻却事由説に立っていることがわかります

(2)学生Aの立場に照らし合わせて、正答を選びましょう。

 次に緊急避難が違法性阻却事由である考えと整合性のある選択肢を探していきましょう。
 まず、選択肢1ですが、制限従属性説に従うと、共犯の従属性について、正犯の構成要件に該当し、違法性を有する行為が従犯に及ぶということになります。
 そうすると、選択肢1の「正犯が緊急避難に当たる行為」を行った場合は、違法性が阻却されるので、仮にその正犯の幇助をしたとしても、共犯の従属性はその正犯を幇助した人には及ばないので、不可罰になり、1が正解になります。
 よく勘違いしやすいのは選択肢3であるが、民法の緊急避難は物が原因で生じる危難を非難するという意味であるので(民法720条)、仮に違法性が阻却されたとしても、その危難が物によって生じた場合は、損害賠償が可能な場面に遭遇する可能性があります。よって選択肢3も間違えになります。
 選択肢2,4,5の説明は、違法性阻却事由説に立っても矛盾はなく整合性はあるので、間違えになります。

3 チェックポイント

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