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海の向こうで起きていることだけれど。

カレーを作りながらふと、今の状況について少し書いたほうがいいかな、と思いました。気合いを入れて「書くぞ」と思うと力んでしまうので、カレーを弱火で煮込む間ぐらいがちょうどいいのではないかと。

今、私が立っているのはロサンゼルスの実家のキッチン。母の鍋やへらを使って時折カレーを混ぜながら、そろそろ暮れ始める空を眺める。綺麗に晴れ渡る空を見る限りでは、世界中がパンデミックに揺れているとは想像もつかない。でも、父がリビングで交互に見ている日本とアメリカのニュースからは緊張感が伝わってくる。

数年前から私は東京をベースにしていますが、家族とともに40年近く前に移り住んだLAには仕事とプライベートで一年のうち3ヶ月から半年ぐらいは帰っています。今回も仕事で帰ってきたのですが、コロナの影響で当然その仕事も延期、全米のイベントはほぼ全て中止となりました。

学校はオンラインに移行、子供たちの親もリモートワークに切り替え。州や市によってはレストラン、バー、クラブ、ジム、映画館などのエンターテイメント施設は全て営業停止。ロサンゼルス市も二日前からレストラン等がシャットダウンされています。

日本からこっちに戻ってきた二週間前は、世界の動きに注目するものの自分たちの国が大変なことになるという危機感をまだ一般のアメリカ人は持っていないようでした。(専門家たちは早くからフラグを立てていましたが、国のトップのおかげで対応が大変遅れました)

たった二週間前はまだ、私の「日本から来た」という事実が人を少し戸惑わせるような、戸惑わせたくないからひとまず二週間を静かに過ごそう、というような雰囲気でした。(日本に限らず海外から戻ってきた多くの人が、言われていないけれど「積極的には出歩かない」状態で過ごしていました)

二週間が過ぎ、幸い体調も良く、そろそろ友達にも連絡しようかなと思ったら、もう世の中がそのような状況ではなくなっていました。私だけでなく、誰もが「self-quarantine(セルフ・クオリンティーン)すべき」という空気になり、「人にうつさないために家にいて」と悲願する人と「俺ら(私ら)は若いから大丈夫〜」と混み合ったクラブやバーで夜な夜な遊ぶ人たちと分かれました。「若いあんたたちが一番ひとにうつしてるんじゃー!」と怒りを覚える人、なんとか家にいるようにとSNSでお願いする有名人も増えました。

アメリカの人にとってコロナウィルスが突然「現実」となったのは、3月12日の18時〜19時(LA時間)の間に起きた3つの出来事。俳優トム・ハンクスと妻で女優のリタ・ウィルソンがコロナウィルスの検査を受けて陽性だったことを発表し、プロバスケットボールリーグNBAがシーズン中断を発表、トランプがヨーロッパからの外国人の入国を全面的に禁止すると発表した。

その辺りから、アメリカ国内でもパニックバイイング(買い占め)が始まりました。「他人事」が「自分ごと」になる瞬間を見た気がしました。

こちらでパニックバイイングをするのは高齢者ではなく、もっと若い人たちで、それを咎めるのもまた「高齢者ではない」人たち。スーパーで高齢者がなかなか買い物ができない(商品に行き着かない)ため、営業時間より1時間早く開けて、午前7時〜8時までは「エルダリー(高齢者)のみ」入店できるというスーパーも出てきました。(レストラン等がクローズしても、スーパーと薬局は開いています)

このコロナ騒ぎの前半を日本、後半(だと思いたい)をアメリカで過ごす中で、改めて国民性の違いを目の当たりにし、アメリカで育った自分としては今この国で起きていること、アメリカのトップの言動に「アホか」とか「信じらんない」と腹が立ち悲しくなるのですが、同時にアメリカ人のこういう時の生真面目さや脆さ、責任感の強さ(同時に弱さも明るみに)がわかるので、互いを支え合うにはどうしたら良いだろうというマインドになっています。

と同時に、夫と弟一人は東京にいるので毎日日本の情報も聞き、大丈夫かな、ちゃんと食べてるかな、このカレー絶対喜ぶと自信満々なのですが、日本に戻れるのはいつになるだろうと今のところ「少し先」も見えない状況です。LAに住む両親は普段は私より元気なのですが、ふたりとも70代ということを思い出し、このような時にはそばにいられてよかった、と思います。

東京はこれからとても気温が上がるみたいですね。今年は桜が見られないのが残念です。

良い1日をお過ごしください。




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