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藤原伊織とハードボイルド

「古本でいいから藤原伊織の小説を買って来て!」と母からリストを渡されました。久し振りに聞いた “藤原伊織” 氏のお名前。そして、
『テロリストのパラソル』がまた読みたくなりました。

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幼い頃〜学生時代 そして20代と、じっとしていることが出来ない根っからの遊び人だった私は、読書が苦手でした。
しかし上京してから一番のストレスになった電車通勤で、他人を気にせず平静を保つ手段として小説を読むようになりました。
手始めに購入したのが直木賞、芥川賞、谷崎潤一郎賞、江戸川乱歩賞などの受賞作品。これらを読んでおけば間違いないだろうと。

へぇ〜、江戸川乱歩賞と直木賞をダブル受賞した作品なんだぁ、と手に取った一冊が藤原伊織『テロリストのパラソル』。ぐいぐい引き込まれるハードボイルド作品。この“ハードボイルド” 感がたまらなく好きでした。
そして『雪が降る』『てのひらの闇』『ダックスフントのワープ』と立て続けに藤原伊織の小説を読んだ記憶があります。

しかし5年前に絵画鑑賞が趣味になってからは、美術関係以外の本を手にしなくなりました。“藤原伊織” と発音したのは久しぶり。我が家にあった彼の小説は、断捨離の折りに母の手に渡り、彼女が愛読してくれたのですね。

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母がまだ読んだことがなくて購入を希望した藤原伊織の作品
=私も読んでいない作品ということになります。
母のメモには『シリウスの道』『蚊トンボ 白鬚の冒険』『遊戯』『名残り火』『ひまわりの祝祭』『ダナエ』。。。早くに亡くなった藤原伊織氏の作品はこれだけなのですね。

おっ、『ダナエ』⁈。
もしかして、エルミタージュ美術館で硫酸をかけられナイフで切りつけられたレンブラント『ダナエ』のお話かも⁈。
と調べてみたら見事的中ビンゴ!。

右)レンブラント・ファン・レイン『ダナエ』(1632年)エルミタージュ美術館

画廊で自分の作品を『ダナエ』と同じように傷つけられた画家が主人公の小説。うわぁーーー、読みたい!

リストアップされている『ひまわりの祝祭』の “ひまわり” にピンっ!ときて、あらすじを読んでみると
「キーワードはゴッホの『ひまわり』・・・」
とあります。なんとなんと!。これも読まなくてはなりません。

右)フィンセント・ファン・ゴッホ『ひまわり』(1888年)ロンドン・ナショナル・ギャラリー

今日、依頼品を古本屋さんで購入して届けてきました。後日、今度は私が母から借りて読むことにします。
またあの “ハードボイルド” 感に浸れるのね・・・と今から楽しみです。

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私が若い頃から「かっこいい!」と惹きつけられて止まない “ハードボイルド” 感。
“ハードボイルド” の定義を調べてみたのですが、どうもしっくり来る説明が発見できませんでした。

私のイメージする “ハードボイルド” とは、
物欲や出世欲など無く 何事にも執着しない一匹狼。心に一つ大切にしている “こだわり” があり、それを守るためには命をも惜しまないヘビースモーカー。
小説や映画に登場する探偵を思い浮かべがちですが、萩原健一や松田優作が演じた探偵よりも もう少し賢くてクールな印象。『動く標的』のポール・ニューマンかしら。。。そしてやはり外せないのがヘビースモーカー(笑)。
若い頃はよく真似をしてタバコを吸ってみたのですが、胃が弱い私はすぐに具合が悪くなって苦しんだものです。

うーーーん。何だか曖昧なイメージしか出てこなくてうまく表現できません。
藤原伊織『テロリストのパラソル』=ハードボイルドだと記憶していたのですが、何だか怪しくなってきました。
これは再読して、私の憧れる “ハードボイルド” を言語化しなくては!
そして「かっこいい!」自分でいられるようにしたいものです。

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ところでこの「かっこいい!」概念は、時代と共に変わっていくものかも知れません。
自分の好きなことを披露して、とてつもない稼ぎをあげる YouTuber が子供たちの「なりたい職業」NO.1 になる現代。
昭和生まれの私はそんな YouTuber のことを「すごい!」とは思っても、「かっこいい!」とか、自分もあんな風に生きたい!とは全く思いません。
だって…自分を少々犠牲にしても “潔い” “誇りある” 生き方をしたいもの。それが私の「かっこいい!」だから。
(注: YouTuberが潔くない、誇りがないと言っているわけではありません。個人的な気持ちの問題です。)

では、勉強や仕事そして人間関係に対して合理的で、自分の健康に至るまで将来にわたる損得勘定そんとくかんじょうの働く現代の賢い人たちは、松田優作や萩原健一演じる私立探偵に憧れたりするのかしら?
“ハードボイルド” を「かっこいい!」と思うのかしら?

この謎を解くためにもまず、私が「かっこいい!」と思う “ハードボイルド” の定義づけにチャレンジしなくてはなりません。
よし!この秋。
久し振りに藤原伊織氏の小説を読んでみようと思います。

〈終わり〉

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