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中抜きのない寄付なんてあるのか

震災が起きてから、「中抜き」のない寄付先はどこ?という投稿を幾度となくみかけた。

私自身もNPOに関わっているけれど、直接だれかの支援をなにかしているわけではない。いわゆる間接部門にいる。

だから、私の働き(給与)は言ってみれば「中抜き」部分になる。


どこに寄付すれば、一番「効率よく」自分のお金がそのまま使われるか、気になるのもわかる。

「中抜き」をどう定義するのかはともかく、たとえば決済の手数料や事務員の経費、そういうのに使われるのが嫌、という意味だろう。

わかりやすいのは、ReadyforやCampfireなどのプラットフォームに支払われる手数料だ。例えば、Readyforでクラウドファンディングをすると、寄付額の17%を手数料として支払わなければならない。

昨年話題になった国立科学博物館のクラウドファンディングであれば、約1.5億円がプラットフォーム側の手数料になる。

NPOやこうした団体が、それでもこうしたプラットフォームを利用する理由はいくつもある。

小さなNPOや団体だと、自前で信頼に足るクレカ決済のフォームを作るのは難しいし、作成から維持まですごくコストがかかる。
一方プラットフォームを活用していれば、その点はシステム的に信頼できるし、自前でコストをかけて作る必要もない。

また、小さな発信力のない団体でも、プラットフォーム自体の認知度や広告・広報によって活動を知らせることができるし、知名度の低い小さな団体のほうが(特に大口の)寄付が集まりにくい。プラットフォームもあの手この手でアドバイスもくれる。
先のクラウドファンディングも、ただ自分のサイトで告知しただけなら、そこまでの額にならなかった可能性もある。

では、自前で体制やシステム構築できる有名な団体に寄付をすればいいのか、というのも一概にはいえない。

小さな団体のほうが、その地域や当事者により近い立場で、小回りの効いた素早い親身な対応ができる、ということもある。一方、組織が大きくなればなるほど、その資金の分配にも時間がかかることも想像しやすい。

NPOに頼らず、自治体や政府に任せるべきだ、という話も見かける。
けれど、行政の仕事は良くも悪くも、そのお金の使い道を鋭く監視されるし、そのぶん申請や承認に時間がかかる。
いま、お金がなくて困っていますと言っている人に、NPOが無条件にお金や食料を渡しても市民から怒られないが、市役所がなんの証明書もなしに、お金や食料を渡したら怒る市民もいるだろう。然るべき手続きでそれらが行われなければならない。

もちろんNPOも、寄付金の使われ方は寄付者にとって重要になる。当たり前だけど、寄付金は事前に定めて知らせた使い道以外には使ってはいけないし、会計報告書で必ず報告する必要もある。

下に、Civic forceという災害支援のNPOの会計報告書を貼り付けているが、支援事業ごとに項目がわかれているのがわかる。

https://www.civic-force.org/data/media/civic_force/page/about/CivicForce_FinacialReport2023.pdf

そういう意味でいえば、受け取った寄付は必ずそのプロジェクトのみに使われるし、少なくともNPO会計に則っている団体では、いわゆる「中抜き」が起きることはないとも言える。

一方で、中抜きを拡大解釈すれば、自前でシステムを構築している大きな団体も、行政も、またそれを支える人がいて、システムの維持費ももちろんかかる。どうあっても「中抜き」は起きてしまう。

ならば、その割合が少なければ少ない方がいい、と簡単に言えるものでもない。NPOで働いてる人にも生活があるし、給与が低くて当たり前でもない。
より優秀な人材が集まれば、より活動の幅も広がるし、質も高まる、というのは一般的な企業と変わらない。人材に投資することで得られるリターンも多いし、何より一人で経理をやってます、という団体もまた正直不安だ。

自分がいいと思ったものでないなら買わないほうがいいように、いいと思えないところに寄付しなくてもいい。ここなら信頼できるし、なんか良さそう、で決めたらいい。もちろん無理に寄付する必要もない。

いまも、現地でたくさんのNPOが動いていて、そのNPOを支えている人も大勢いる。その大勢の人の働きを無駄なものだと思わないでほしい。


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