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[記事自己紹介] ニワトリ胚に鳥類を見る

<バイオロギング研究会会報 2023年7月号より>


所属ラボの鳥研究メンバー(通称とりびと)で共同執筆した記事が、『生物の科学 遺伝』に掲載されました。研究室ホームページで全文PDFを公開していますので、読んでいただけたら嬉しいです。

「ニワトリ胚に鳥類を見る ―ゲノムから生態までをつなぐ発生メカニズム―」
竹田山原楽・藤橋さやか・米井小百合・塩見こずえ・田村宏治
生物の科学 遺伝, 2023年7月号『特集“タマゴが先”の最先端研究 ─ トリ胚は「形の魔術師」だ』

[記事PDF(@ラボHP)]


■ どんな話?
私は動物発生分野の研究室に所属しています。研究室の皆さんは主に、鳥の四肢や魚の鰭が形作られる発生過程・発生メカニズムの研究をされています。

発生研究では、ニワトリ(胚)がモデル生物として長年活躍してきました。ただしそれは「鳥のモデル」としてではなく、「脊椎動物のモデル」という位置付けである場合がほとんどだそうです。

 軟骨染色をしたニワトリ胚。美しい。

それに対して今回の記事では、鳥の鳥らしさや鳥類の中で多様性が生じたメカニズムを、ニワトリ胚を使った発生メカニズム研究を土台に追求する枠組みを提案しています(下図)。タイトルにあるように、ニワトリ胚を鳥として見よう、ということです。鳥類の行動と形態、形態とゲノムの繋がりを示した発生研究の例について概説し、全階層を貫く研究への展望を述べました。

鳥の行動生態、形態、ゲノム情報を発生メカニズム研究でつなぐ


■ バイオロギングと発生学
私の研究対象は鳥類の移動です。バイオロギングを活用して、図中の黄色で囲った部分をもっぱら調べてきました。発生学にはたぶん大学の受験勉強以来ほとんど接しておらず、「あー、内胚葉・中胚葉・外胚葉ってあったねぇ、懐かしー」というレベルで今の研究室に入りました。

ですが、動物の「行動」は機能面でも制約面でも「形」と密接に関わっており、「形」は「発生」を介して「ゲノム情報」から作られています。したがって、私がバイオロギングデータを通して見ている移動パターンが進化の過程でどのようにして形成されたのかを知るヒントが、発生研究からも得られるのではないかと今は考えています。

そのようなわけで、バイオロギング研究者の皆様にも読んでいただきたいと思い、紹介しました。ご意見・ご感想がありましたら、ぜひよろしくお願いいたします。


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