見出し画像

コンポーザーに祝杯を

 今回もリズムゲームの話題になる。ただし、主眼を向ける対象は他ならぬ影の主人公ーーコンポーザーたちである。
 リズムゲームは楽曲なくして成立しない。たまにエイプリルフール企画などで、楽曲と呼んでいいのかわかりにくい音源を用いることはあるが、それも含めてリズムの「核」があるからこそゲームとしてデザインできる。
 ここでは、その「核」を生み出すコンポーザーたちの中でも、自分が気に入るメロディセンスを有する面々をピックアップしていこう(敬称略)。

Tatsh
 BEMANI全盛期の立役者である。大作「Xepher」や「RED ZONE」は言うまでもなく、数々の名義を用いてあらゆる現場に楽曲を提供してきた。
 彼が初めてリリースしたアルバムを、兄は至るところで愛聴していると聞く。自分もその楽曲のいくつかは記憶しているが、透明感ある「TOPAZ」はアルバムオリジナルであるにも関わらず、彼のメロディセンスを全面的に打ち出す良作であった。
 彼はコナミを退社してなお、ゲームに楽曲をプロデュースし続けていて、そのいずれも評価が高い。ある意味、リズムゲーム楽曲界の「生ける手塚治虫」的ポジションを担い続けてさえいると考えられる。

かめりあ
 彼を知ったのは、リズムゲームコンポーザーとしてではなく、ボーカロイドプロデューサーとしての実像だった。白いハットがトレードマークの美男子が、如何な理屈で「Bangin' Burst」を世に問うたかは量り知る由もない。
 SDVXユーザーならわかるように、彼はしばしばヘヴィテクノの楽曲を提供してきた。DIVAのためにさつき が てんこもりと共作した「システマティック・ラブ」にも、彼のテイストがアピールのように出ている。
 主にコナミゲームで「ボスクラス」の楽曲を手掛ける彼だが、最近ROUND1に設置されてきているタイトーのMUSIC DIVERにも楽曲を提供して、しかも自力でクリアしている。いわゆる「自給自足ゴリラ」と揶揄される面子の一人だったのである。
 かめりあとの出会いが、ある種の「人間を第一印象で量ること能わず」という教訓を自分に植え付けたようなものである。

cosMo@暴走P
 学生時代の一押しコンポーザーは彼だった。ニコニコにストーリー式楽曲を投稿していくうちにイラストレーターと結婚、制作体制が大きく変わった人物である。
「消失」の話は言わずもがな、彼が手掛ける楽曲にはとにかく「一見さんお断り」である楽曲が多い。DIVAからSDVX、太鼓、チュウニ、オンゲキ、プロセカとその版図は飛び火のように拡大していった。
 彼は音楽プロデューサーになる前からずっとリズムゲームが好きだったようで、効果的なプログラミングはリズムゲーム楽曲で学んだとも自負している。天性の「自給自足ゴリラ」の一人だったとも言えよう。
 彼の名曲「エンドマークに希望と涙を添えて」は、自分の力で到底クリアできないが。

小塩広和
 彼の存在を知ったのは、オンゲキに「あの曲」が移植されたときだった。
 しかし、本来の彼は決して「怪談の人」で終わらない。
 彼は2015年度までタイトーに在籍していたが、その間オリジナル楽曲から東方アレンジ曲に至るまで、さまざまなゲーム楽曲をーーことにグルコスに対してーー提供し続けた。そしてそれらの完成度は見事なものであった。
 彼の功罪とはつまり、グルコスをアーケード稼働の終了時まで支え続けたことと、自分がグルコスと聞けば「2112410403927243233368」のことしか考えられなくしたことである。

MASAKI(ZUNTATA)
 最後に、自分がリズムゲーム楽曲で初めて「泣く」という経験をした、その仕掛け人を取り上げる。
 COSIOがタイトーを退社してから、MASAKIはそのメロディセンスを世に問うが如くZUNTATAに加入した。そして先輩・COSIOと共作した大作「Got a over score?」は、グルコスのアーケード稼働終了を高らかに告げるフィナーレのような楽曲だった。このとき、自分は涙腺が緩んでしまい、思わずハンカチで顔を覆って譜面動画を見ていた。
 無論、MASAKI個人のメロディセンスは卓越したものである。特に光るのがグルコスに収められている東方アレンジ曲で、感情に直接干渉してくるサウンドが爽快感をもたらす。しかし、それに乗る譜面はハードなものであるが。
 今一番気になるコンポーザーが、このMASAKIである。

これこそ「コンポーザーの根本さ」
 今回はここまでとなる。もし、おすすめのコンポーザーがいるなら、あるいは感想や質問があればいつも通りコメントしていただきたい。
 コンポーザーいる限り、リズムゲームは絶えない。次の世代にリズムゲームを残すために、自分たちが起こせるアクションがあれば、それはコンポーザーの作曲癖を「盗み、再構築して」新たな時代に好まれる形にすることだろう。

 それでは、また機会があれば。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?