「DINOSAUR」までのB'zアルバム個人的ベスト1たち
早いもので2023年も終わりが近づき、人々の忙しさはピークに達する勢いになりつつある。
今年の音楽的話題は、何と言ってもB'zの35周年が軸になっていた。
自分は彼らの楽曲を高校時代から本格的に聞いていたが、彼らの唯一性は至るところで語られ続けてきた。その唯一性あってこその35周年に、敬意を超えた感情さえある。
そこで、今回は彼らのアルバムのうち、未試聴の「NEW LOVE」と「Highway X」を除く20作から、個人的なナンバー1楽曲をピックアップして、その楽曲の魅力について語っていきたい。
B'z:だからその手を離して
デビュー・アルバムを語るならば、忖度なしでこの楽曲を取り上げる他ない。
今でこそ音楽のトップランナーである彼らだが、デビュー当初は売り上げがまったく振るわず、関係各位を焦らせるほどだったと言われる。
この楽曲はB'zにとっていわば「名刺」であった。デビュー・アルバムの1曲目にして、同時発売されたデビュー・シングルの表題曲でもあった。
当時のスタッフは、プログラミング音に放火するような松本孝弘のギターサウンドが、よもや後世の音楽シーンを書き換えることになるとは思わなかっただろう。
当時の音楽はエコーが強くかかっていて、新世代には何処か鬱陶しくも聴こえるだろう。だが、エコーの中で屹立するように焼け焦げるギターサウンドと、未だ荒削りな稲葉浩志のボーカルは、当時のサウンド環境でこそ輝くものである。
OFF THE LOCK:NEVER LET YOU GO
6分を超える、長大で激情的なバラード。後にリメイクされた。
イントロのギターで「何かが始まる」ことをリスナーに訴え掛けた直後は、悲壮感あるデジタルサウンドと重厚なギターリフが共存する。稲葉は今にも泣き出しそうなボーカルで、それでも冷徹に歌う。しかし最後のサビでついに感情が爆発するのである。
楽曲のテーマに「雨」があるが、2回挿入されるギターソロのうち間奏側は降る雨のようにしっとりとしている。一方でエンディングは稲葉のボーカルに負けないくらいに、感情を爆発させている。このコントラストも世界観を構築する要素となっている。
BREAK THROUGH:今では…今なら…今も…
どことなく昭和歌謡のようなメロディラインの切ないナンバー。これも後にリメイクされている。
歌詞で起こっている出来事は、時間軸に直せば1分程度でしかないのだろう。だがその1分間に「意味」を持たせている歌詞は、おそらくB'zとしては初めての試みだったと思う。
RISKY:HOT FASHION -流行過多-
流行に疎い男の目線で描く、社会に皮肉を利かせるアップチューン。
アルバム「RISKY」は故ジェイソン・コーサロを迎えてニューヨークで制作されたのだが、デビュー当初と比較してそのセンスは一足飛びに上昇していた。
その3トラックに位置づけられるこの曲が有する「驚異的中毒性」は、今のB'zなら「意図的に回避すべき」ものかもしれないが、当時の彼らにはかえってピッタリと当てはまるものだった。
真の流行を知る者は、ダサいところを見せられる勇気がある者だろう。
IN THE LIFE:もう一度キスしたかった
B'zのバラードを語る上では、必ずと言っていいくらいこの曲が挙げられる。
ストーリー性の強い楽曲は珍しいものではない。問題は表現の質と、それに説得力を持たせるオケが伴っているかどうかにある。
楽曲の世界観から逆輸入する形のメディアミックスもよく存在する。しかしそれは、楽曲の質を低下させるリスクさえ有する。そういう意味で、この曲はメディアミックスが不要なほど完成されたストーリーを持っている。映画を愛した松本のメロディセンスと、稲葉の脚本家じみた歌詞が噛み合ったからこその世界観である。
RUN:Out of Control
本来なら表題曲を挙げたいところだが、ここではあえて「王道を外す」形でこの曲をチョイスした。
週刊誌の偏向報道を受け始めた頃のB'zだからこそできたと思われる社会風刺曲。しかし歌詞に説教のような要素はまったくない。それどころか、トリッキーに切り替わるリズムとオルガンがアクセントとなって楽曲を構築している。
ギターソロ前の「愚痴」が癖になる。
The 7th Blues:LOVE IS DEAD
このアルバムには秀逸な楽曲が多く、選考に悩んだ。その中でオープニングを飾ったこの楽曲を選んだことには、しっかりと理由がある。
第一に、B'zの「コンピューターに依存しない楽曲スタンス」の片鱗が見え始めたこと。オルガンを除くサウンドは生楽器で録られており、スケールは過去作と比較して異様である。
第二に、この頃から「自分たちのよく知るB'z」が形成されてきたのだが、その中でもこの「LOVE IS DEAD」は特異なものであるということ。リズムパターンはジャズと4つ打ちを融合させたようなものになっており、メロディも歌詞も「ドス黒い」。ここまで力を入れておきながら後の作風に衰えが出なかったことは、ひとえに彼らのスキルの高さを物語るだけでないだろう。
こうした理由から、この楽曲を選んだ。
LOOSE:ザ・ルーズ
現代的に言うなら「おれらのうた」。学生時代の稲葉のエピソードが元になっているらしく、何処か自虐的にして楽天的でもある。
イントロのリズムは意図的に「取りにくく」しているところが、この楽曲最大のキモである。
SURVIVE:DEEP KISS
楽曲自体はオープニングだが、レコーディングは最後に行われた。
歌詞とオケはデモ段階とレコーディングで大きく異なる形になったのだが、それが結果としてB'zの持つクールエナジーを全面アピールすることとなった。
デモ段階で英語だった歌詞を日本語に差し替えてまで稲葉が入れたかったと思われる、楽曲最大のパワーフレーズがある。「黙って研ぎ続ける才能」の一文だ。自分は「DEEP KISS」を聴くたび、才能を「正しい姿勢で、黙って研ぎ続けられているか?」という問答に入るのである。少なくとも彼らのような研ぎ方はできていないだろうが。
Brotherhood:Brotherhood
言わずと知れた、B'zの最感動楽曲。
自分は人生で大きな転換があるたび、この楽曲に身をゆだねることに決めている。
祖父母を亡くしたとき。
お世話になった就労移行支援事業所を卒業したとき。
初めて買ったギターを手離したとき。
常に「生きていくだけ」という主張は寄り添ってくれる。
次にこの楽曲を聴くような転換がいつ訪れるか、それは誰にもわからない。言えることは、「道は違っても一人きりではない」ことである。
ELEVEN:Seventh Heaven
このアルバムも選考に困った。楽曲の独自性が強いため、B'z史上最もクセがあるアルバムとなったためである。
その中から強いて一曲挙げるならこれだろう。歯切れの良いギターカッティングと、押し付けない程度に主張する歌詞はB'zのスタンスである。
GREEN:GO☆FIGHT☆WIN
楽曲については敢えて深い説明をせず、このアルバムがどのような位置づけであるか、野球の打席になぞらえて記述したい。それを見れば、自ずと自分がこの楽曲をチョイスした理由も伝わるだろう。
1番:熱き鼓動の果て(一)
2番:STAY GREEN〜未熟な旅はとまらない(捕)
3番:SURFIN’ 3000GTR(遊)
4番:Blue Sunshine(投)
5番:Warp(三)
6番:SIGNAL(左)
7番:美しき世界(右)
8番:Everlasting(中)
9番:GO☆FIGHT☆WIN(二)
予告先発:ultra soul
中継ぎ:FOREVER MINE
抑え:The Spiral
BIG MACHINE:儚いダイヤモンド
全体的に聴きやすいアルバムだが、同曲は傑出してエナジー感がある。
イントロの摩訶不思議なエフェクトをかけたギターサウンドが印象的である。
THE CIRCLE:Sanctuary
前作で、いわゆる「自分たちがよく知るB'z」は打ち止めとなり、このアルバムから一曲当たりの熱量が控えめになっていく。
その中で、この楽曲に限って言えば前作までのイメージが残っていて、「静と動の融合、その果てにあるサンクチュアリ」を感じることができる。
MONSTER:無言のpromise
ライブでは未演奏の「隠れた名曲」だが、切なくも美しいメロディが際立つ。
間奏に敢えて導入されたタガログ語のボイスがアクセントとなっている。
ACTION:純情ACTION
人生の転換点で聴きたい、もう一つの楽曲。
当時のB'zはライブツアーを見送るほどのスランプに陥っていたというが、そのもがきの中で得られた成果の1つである同曲は、自分たちにも前向きに影響をもたらしている。
MAGIC:FREEDOM TRAIN
アルバムの最後を飾る楽曲。自由はタダで買える安物ではないことを訴えながらも、その中で懸命に生きる力を与えてくれる、応援ナンバー。
C'mon:命名
表題曲と「ピルグリム」で悩んだが、最終的に揺るぎないメッセージを有するこの楽曲にした。
2011年、「世界が変わったあの日」を経験した自分たちが、未来の命にすべきことを教えてくれる、壮大なミディアム・バラード。
EPIC DAY:Black Coffee
わずか10曲だけを収めるこのアルバムにおいて、メロディが特に突出している楽曲。
歌詞は何処か「年季」を感じさせながらも、新しい関係性に向かおうと積極的になっているところがある。
DINOSAUR:ルーフトップ
最後にチョイスするのはこの楽曲。
稲葉は「タイトルを忘れはしたが、印象的な内容だった映画」に着想を得てこの歌詞を書いたという。それに乗るメロディは何処か懐かしささえ感じる。
サビでさり気なく鳴っているシンセサイザーが、この楽曲の隠し味である。
「よくまあここまで俺たち来たもんだな」
今回はここまで。個人的なチョイスになったが、20曲の個性を端的に伝えた次第である。
もちろん、触れていない楽曲にも名作は数多ある。興味があれば、ぜひ自らの耳で確かめていただきたい。
拙稿に対する感想や、個人的に評価したいB'z楽曲があれば、コメントで伝えていただきたい。
それでは、また機会があれば。
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