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【歴史の勉強はなぜ必要?】史学科大学生が考える、歴史を学ぶことの意義

例えば本や鉛筆、コップのような身近な物。

今この記事を読んでいるデバイスや、この記事のようなWeb上の文章の媒体など、比較的新しい技術によって作られ、現代の生活には欠かせない物。
そして有史以前から人間がつくってきた文化や今私たちが暮らす世界の成り立ちなど、一見すると自分には関係ないと思えてしまうほど、スケールの大きいもの。

どんなものにでも必ず存在し、何かが生まれるためには必ず必要なもの。

それが「歴史」。


しかし。

「歴史なんて将来使ったりしないからやらなくていいじゃん」

「歴史なんて勉強して何の役に立つの?」

「昔のこと勉強したって意味ないよ」

なんていう声も多いのが現状。
たしかに、日本の高校までの受験用の歴史科目はほとんどが暗記で終わってしまうことが多いので、苦手な人にとっては苦痛で仕方ないでしょう。
そのような勉強をしているだけでは、歴史を学ぶ本当の意味が見えなくても無理はありません。

でも、本当に歴史の勉強は無駄なのでしょうか?
本当に何の役にも立たないのでしょうか?

今回は、大学で史学科に在籍している私が、具体的な例を挙げながら、「なぜ歴史を学ぶ必要があるのか」について考えていきます。
(今回ここで私がお話しすることは、あくまで個人的な考えに基づいています。)

みなさんもぜひ、改めて歴史を学ぶことがどういうことなのか、一緒に考えてみてください!


「過去」は教訓になる

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もし、あなたのテストの成績が振るわなかったら、あなたはどうしますか?

きっと多くの人が、自分がどういう間違いをして、その問題に対してどんな勉強をしていたのかなどを、過去を振り返ってもう一度見直すのではないでしょうか。
テスト勉強ではどこがよくて、どこがダメだったのか。
理解していなかったことは何だったのか。
そしてそこで得た知識や経験を使い、次の試験に繋げていく・・・。

私は、歴史学もきっと同じことなのではないかと思うんです。
違うのはスケールの大きさだけ。

歴史そのものは事実の連続でしかありません。
誰かが当時の状況を書き留めて次の世代に繋がなければ、事実は過去のこととして忘れられてしまう
それがもし、疫病の世界的な流行や大災害、大きな戦争のような、世界を揺るがす大事件であったとしても。

2020年現在、新型コロナウイルスの爆発的な流行で、世界が混乱しています。
みんながみんな外出時にはマスクをつけ、人との接触を避けながら、今までとは全く違う生活をしなくてはいけなくなっていて、このウイルスによって多くの人が亡くなっている。
でも、もしこの出来事を誰も記録しなければ、この流行が終わったらいつかは忘れ去られてしまうのです。

そしてこの先の未来、もし同じようなことが起きてしまった時に、何の記録も残っていなければ、人はまた同じようなことを繰り返すことになってしまいます。

過去を学び、現在に応用して、未来につなげる。

歴史は、人類全体にとっての大切な教訓なのです。


歴史からわかる、世界の「今」

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常に変化し続ける世界情勢。
この世界で生きていく以上、世界情勢は決して他人事ではありません。

他の国のことなんて自分には関係ないよ」と思う人もいるかもしれませんが、戦争や対立など、深刻化すればやがて自分も巻き込まれていく可能性がある問題も少なくないんです。
そのような問題に対して適切に意見していくには、やはり自分が住んでいるこの世界のことを知っていくしかありません。

この世界には多くの国があり、それぞれの国に、仲のいい国や関係がギスギスしている国があります。

ではなぜ、世界の国々は今のような関係になったのでしょう。

それを紐解いていくにはやはり、その国がたどってきた「歴史」が鍵となるのです。

たとえば昔、A国B国という隣り合う二つの国が、国境にある資源の豊富な一つのCという地域をめぐって争っていたとしましょう。
C地域は時代によってA国の領土になったり、B国の領土になったりを繰り返してきました。
そして一番最近の戦争で、戦争の前にはB国の領土だったC地域はA国の領土となり、B国は資源を調達するための地域を一つ失うことになったのです。
これによってB国は国力が衰えてしまい、滅ぶことはないまでも、少なくともA国よりは力が弱くなってしまいました・・・。
現代でもB国は、経済や産業などの点でA国よりも弱いままです。

こんな話があったとして、A国とB国の関係はどうなったでしょう?

実際の国家間の関係性はもっと複雑なので、一概にそうとは言えませんが、おそらくA国とB国は今でもあまり良好な関係とは言えないでしょう。
国と国の関係が悪くなってしまうと、人間のように謝って「はい、仲直り」というわけにはいかないのです。
関係を回復するには、両国の指導者たちの思惑、国民の意思、経済的な問題など、さまざまな条件を長い時間をかけて調整しなければなりません。

このように、「現在の国際情勢が、なぜそのような状態なのか」は、現代を見ているだけでは理解できないのです。

今があるのは、過去があったから。

過去は現代を知るための重要な手掛かりになります。


「世界を知ること」は、「世界と繋がること」

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今、世界にはさまざまな対立が溢れかえっています。

宗教上の対立、領土における問題、文化の違いから起きる対立・・・。

このような対立の要因として、国民レベルでの「不寛容」や「そもそも他の国のことを知らなさすぎること」、それゆえに「排外的になっている」ことなどもあるのではないかと、私は考えます。

では、そのようなことを減らすためにはどうしたらいいのでしょうか。

人は「未知のもの」に対して不安感恐怖受け入れがたさを感じるので、相手の国や地域のことを徹底的に知るしかありません。

文化や言語など、さまざまなことを全体的に知るべきですが、ここでもやはり歴史が重要になってくるのです。

どうしてそのような文化があるのか、どうしてその言語が話されているのか。
それらは歴史を知ることで見えてきます。
そしてそのようなことを知ることで、より深くその国や地域のことを知ることができます。
相手をよく知ることで違う文化や考え方を受け入れることに繋がり、やがてそれが異なる文化を持つ人同士の協調に繋がっていくと思うのです。


歴史を学んだことを直接活かすことのできる仕事は、正直なところあまり多くありません。
歴史を学んだことがすぐに目に見える形で役に立つわけでもありません。

しかし、歴史を学ぶことは、私たちが「この世界で暮らしていく上でどうしたらいいのか」を考えるときのヒントになります。
これは、私たちの人生の根幹に関わることです。
「働いている時間」だけでなく「生きている時間」という単位で見たときに、「歴史を学んだこと」は確実に自分のためになっているのではないかと、私は思います。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
あなたが「歴史を勉強することの意味」を疑問に思ったときの、自分なりの答えを出すことの一助になれば幸いです。

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