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アプリで出会って、恋をして【13】

ハレさんが車を買った。
アルファロメオ147。あえて言っておくと中古だ。
キレイな薄い水色をした車体だった。

名前だけ聞いて「かっけぇー」としか言えなかった。
私は車の事はよく知らない。

ハレさんは、車が大好きだ。
そういえば、アプリのプロフィールにも
「運転が好き。助手席に彼女を乗せたい。」って
書いていたのを思い出した。

嘘だとは思わなかったが、車好きの程度を私はぶっちゃけ舐めていた。

人の「〇〇が好き」ってホントにマニアな人から、かじった程度の好きがあると思う。

私もそうだ。
歴史が好きだけど、文献を読み漁る程かと言われるとそうでもない…。ただ歴史小説を読んだり、歴史的建造物を見たり触れたりするのは好きだが、研究するほどではない…私の好きはそこまでだ。

申し訳ないが、ハレさんの「車好き」もその位かな?と思っていた節があったが、違った。

彼は"本物"だった。

デートしていても、通る車を見れば何処の何車でいつ作られたのかを言うことが出来る。場合によってはデザイナーの逸話付きだ。

私にそれが本当の話かどうか正解は知らないけど、多分、本当だろう。

彼の頭の中はどうなってるんだ……
私が、「今日ネイル行ってくるよ」って言っても忘れるのに。

そんな彼のお陰で車に詳しくない私にも、普段流し見ていたレトロな車が目に入るようになった。
日常には意外にもレトロな車が走っていることを知った。

私はこういう時に、誰かと恋愛する事をプラスに感じる。
ハレさんのお陰で私は新たな世界を得て、歩ける場所が広くなった。
街を見て歩く事の楽しみがまた一つ増えた。

さて、ハレさんの愛車だが、本人は相当に気に入っているが、私はイタリア車など全く分からないので、毎日のようにアルファロメオ147について書かれた記事を送られて来てもイマイチ、ピンと来なかった。

そこには
「21世紀に売っちゃいけない車」とか
「愛すべきポンコツ車」とか
「これぞイタ車!すぐ壊れるが、そこが良い!」とか

「手が掛かる車ナンバーワン」とか………

え?好きなの?嫌いなの?
褒めてるの?ディスってんの?
ってか乗れるの??

と私の中で総ツッコミだった。

ハレさんも納車して最初の感想は
「音が官能的だよね!」
「早くもサスがやばい!」
「うーーーん、いい感じのポンコツ!」
「こいつは手が掛かるぞ〜〜」
とディスってんだろうが、嬉しそうだった。

納車して直ぐ色々直したので私が乗るのに暫く日がかかった。

とある日、ハレさんが修理した車を持ってくるからドライブに行こうと言っていたが、一向に帰ってくる気配が無かった。

夜の22時になっても帰ってこず、私は不安になり連絡を取るも返事はないし、事故にでもあったのでは無いかとソンソワした頃、ハレさんがごめんっと言いながら帰ってきた。

当然ドライブなんてする時間じゃないし、私はちょっと拗ねるも、いそいそと寝る準備を始めたらハレさんに腕を捕まれ

「外出てきて。行こう。」
と言われた。

は???
夜の23時。
まさか…と思い外に出ると見慣れない車がハザードを打っていた。

ハレさんは、アプリでの願望通り、パートナーを助手席に乗せたのだった。

乗り心地はまぁ普通で、マニュアル運転独特のガクンという衝撃はある物の記事で読んだような深刻な問題は無さそうに思えた。

強いて言えば、ドア内側にBOSEと書かれたスピーカーのようなものがあったが、それはハリボテだと言われた事が1番衝撃だった位だ。

いや、スピーカーっぽいやん。音出そうやん。
と盛大なツッコミを入れて出発した。

私達はベタにお台場まで車を走らせ、夜のレインボーブリッジを堪能し、バーミヤンで夜食を食べて、ハレさんはそれはもう大層ご満悦な表情で帰路に着いたのだった。

余談だが、イタリア車同好会みたいなのがSNSであるらしく、それに登録すべく愛車の名前をどうしようかとハレさんに相談された。

安易だが、147から「イヨナ」と言ったら、これもまたハレさんの中で大ハマりしたらしくそれで登録。
二人で「イヨナちゃん」と呼びまくっている。
因みに英字で"Eyonah"である。不覚にも本気の名付けになってしまった。

更に因むとハレさんの命名候補は
「チェントクワラントセッテ」ちゃん。
(Cento­quaranta­sette)

つまり、147である。

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