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DataAnalystCareerStudy#2 -データアナリストのキャリア戦略を考察する- イベントレポート

本記事は2023年4月25日(火)に開催されたDataAnalystCareerStudy#2 -データアナリストのキャリア戦略を考察する-これからのデータアナリストに求められる組織・ビジネス貢献のイベントレポートです。

『データアナリスト』という専門職には、そこに行き着くまでに様々なキャリアパスがあります。本イベントでは、それぞれに異なる道を通り、現在はデータ分析のプロフェッショナルとして第一線で活躍している3名にご登壇いただき、「これからのデータアナリストに求められる組織・ビジネス貢献」 についてお話いただきました。データアナリストに限らず、データ領域を生業としていきたいビジネスパーソンにとって、必見の内容となったのでそのサマリーをお伝えいたします。

▼イベント概要はこちら
https://dacs.connpass.com/event/279476/

▼共催
式会社リーン・ニシカタ
株式会社GENDA

LT#1「データアナリスト→PdM→社長となった私が思うデータアナリストの強み」

▼登壇者
菅谷 岳洋 @sugartaker
株式会社habanero
代表取締役・データアナリスト

2013年に新卒でマクロミルに入社し、データアナリストやデータ系の新規事業のPdMを経験。 その後FiNC Technologiesにてデータアナリストとして主にヘルスケアアプリのグロースハックを実行。3社目はvivit株式会社のPdMとしてキャンプ用品のECサイトやキャンプ場の予約サービスなど複数のwebサービスの立ち上げを行う。現在はECを中心としたコンサル会社である株式会社habaneroを立ち上げ、独立。

まず、1人目のLTは株式会社habaneroの代表取締役を務める菅谷さん。

ファーストキャリアであるデータアナリストからPDM(プロダクトマネージャー)、代表取締役へとキャリアを積み重ねていくなかで、取り扱う領域が広く浅くなっていく一方でステークホルダーがどんどん多くなっていくという経験をされた菅谷さん。

「ビジネスにおける最強のコミュニケーションツールはデータ」であり、データアナリストのようなデータ専門職は、データのネイティブスピーカーとして、チームや会社、組織全体のコミュニケーションのハブになっていくべきだとお話いただきました。

データアナリストが「データ警察」となって、データリテラシーの低い人を攻撃するのではなく、データ活用に向けた支援をすること、適切なデータ活用ができるように伴走することが、データアナリストの組織貢献として一番大切なことだと菅谷さんは考えています。

菅谷さんのように「データの民主化」を促すことが、データ活用の重要性を醸成することに繋がり、結果としてデータ専門職の価値も上がるので、データアナリストのキャリアにとってもプラスになると言えるでしょう。

LT#2「事業価値最大化に貢献するanalystの働き方」

▼登壇者
大西 峻人 @onitaka_unchain
株式会社メルペイ
データアナリストチーム マネージャー

2012年Panasonicで半導体プロセスエンジニアとしてキャリアスタート。2017年異業種転職でDeNAに入社し、データアナリストとして、ソーシャルゲーム領域の分析を担当。ゲームタイトルの運用分析および事業戦略立案に従事し、新たな分析の価値創出のためにセンシングやデータサイエンスを用いた分析の高度化も検討。 2019年にメルペイに入社。直近はチームマネジメントと新規事業の立案やメルカリとメルペイの体験を融合するフュージョンプロジェクトなど新しい事業価値を創出できるanalystとして日々格闘中。

LTの2人目は株式会社メルペイでデータアナリストチームのマネージャーを務める大西さん。

メルペイのデータアナリストチームのミッションは「分析を通じて意思決定のハブになり、大胆かつスピーディーなProductの成長を主導する」こと。ビジネスイシューから分析を設計し、実際に分析を行った結果から示唆を導き出し、ネクストアクションを決めるという「意思決定」において活躍する組織として動いてます。
大西さんの考えるデータアナリストが事業において担う役割は2つであり、1つは新規事業における勝ち筋を見つけるような分析をすること。もう1つは、既存事業においてグロースモデルを作り込むことと、成長のキードライバーを見つけてKPI決めることです。

単にKPIを分解するだけではなく、自分たちの組織がフォーカスすべきポイントはどこなのかを決めるための、合意形成につながるデータを出すことが本来データアナリストが担うべき役割だと大西さんは考えます。

また、データに触れることで会社の全体感を捉えられるポジションにあると思うので、組織の縦とか横の境界を壊すようなバウンダリースパナーとしての役割も担っていくこともデータアナリストには期待されていると言えそうです。

LT#3「データの民主化とアナリストのビジネス貢献」

▼登壇者
古賀 元樹 @KogyFine
株式会社タイミー
執行役員CAO

2012年に新卒で野村総合研究所に入社、小売店を顧客に持つ部署の情報分析チームに所属。その後、2015年に製薬業界向けのスタートアップで、フロントエンドの開発、データベースエンジニア、データサイエンティストなど複数職域を担当。2018年に現職のタイミーに参画。入社後はマーケティングの責任者として第1回目のTVCMを含む初期のユーザー獲得施策を担当。直近はデータ統括部の責任者として、データドリブンな組織作りや、取得したデータを事業価値に還元することに日々邁進中。

LT最後の一人は株式会社タイミーで執行役員CAOを務める古賀さん。

タイミーにおけるデータアナリストチームはデータを使って知見を集めて他のチームの意思決定を支援し、ビジネス上の課題や価値創造との接続を測るために関連部署との連携が重視されるようなチームです。

データアナリストにとってのビジネス貢献は、提供したデータやインサイトによって起こるビジネスインパクトの総和であると考えますが、データや示唆を提供したからと言って必ずしもビジネスインパクトが起こらないのがデータアナリストの難しいところであると古賀さんは語ります。

いくら意思決定につながるデータを提供しても、そこから何かアクションに繋がらないと、ビジネスインパクトはゼロになる。だからこそ、データから導き出す示唆の提供スピードと、その洞察の深さのバランスとステークホルダーを巻き込んで、どういうバランスで示唆を出すべきかはあらかじめ握っておく必要があるそうです。

また、組織が急拡大しているタイミーだからこそ感じているのは、事業のフェーズによってもデータアナリストが果たす役割やその業務内容は変化するということ。最初はデータアナリストの数が2、3人でも回っていたところから、組織が成長して細分化が進むなかで、意思決定者の人数や意思決定の数が指数関数的に増加することは往々にしてあります。そうなると、求められるスピード感や洞察の深さを提供できなくなることもしばしば起こりがちです。

そうならないためにもまずは「データの民主化」を行い、意思決定者自身がスピーディにデータに触れられる状態を作りだし、洞察の深さが求められるものにデータアナリストが専念できるようにすることを目指すのが良いと言えるでしょう。

ここまでは、LTとして3名の方に「これからのデータアナリストに求められる組織・ビジネス貢献」 についてお話いただきました。

後半は、3名に株式会社リーン・ニシカタ 栗田 雅史(@time2c0me)を交えたクロストークを行いました。

データアナリストに必要なスキルとは?

栗田)ここからクロストークということで、参加者からの質問にもお答えしながら3名の方の発表を深掘りしていこうと思います。

まず1つ目のご質問は、データアナリストが習得すべきスキルはソフトスキル(正しい質問するスキル、まとめる力、理論的な考え方等の定性的な要素)か、それともハードスキル(ツールを使いこなすスキル、各種言語の習得等)が優先されるべきか。これは組織の状況にもよりそうですがいかがでしょう?

古賀さん)個人的には圧倒的にソフトスキルかなと思っています。特に最近はハードスキルといっても、それこそChatGPTに問い合わせたらSQLを書く必要もなくなってきているので、ハードスキルだけで戦うことが厳しくなってきています。それよりも、どういう仮説を立てるのか、どういう問いを立てるのかがより大事になっていて、かつ、それをステークホルダーと認識を合わせたり、価値を伝えたりすることの方が大事なスキルになっているように感じています。

菅谷さん)もし若手だったら、まずはハードスキルの方がいいかなという気もしていて、ハードスキルってなかなか他の人が持っていないスキルにはなるので、それを持っているだけで打席に立つことができたり、打席に立つ中でソフトスキル磨かれていったりもするので。もしご質問された方が若手なのであればその選択肢もありますよとだけ。BIツールが使えないとデータアナリストとして戦えない場面もあります。

栗田)ありがとうございます。

データアナリストは経営陣に何をコミットするべきか?

栗田)次の質問は、マネージャー・組織長として経営陣にどんな内容をコミットしているのか。定性定量の目標を知りたい、とのことです。

大西さん)メルペイはグロース組織のなかにデータアナリストチームがあるので、結構わかりやすく事業のグロースにどれだけ貢献できるか?というコミットをしています。なので、事業の数字にコミットしていますし、経営陣からもそこを評価してもらいやすい環境にあります。

定性的には、データアナリストの一番の価値は戦略を作ったりインサイトを出したりすることだと考えているので、インパクトを出せるような施策を考える材料をどれだけ提供できたかという観点も、事前に経営やメンバーとすり合わせた上でコミットしています。

古賀さん)私の場合は組織長でもあり経営側でもあるので難しいですが、「データの民主化ができている状態」など、会社をどういう状態にするかという目標を設定しています。

定量で示す際にも、会社の課題に対してKPI設定から効果検証の仕組みづくりまで一貫してこういうパッケージを提供し、その結果どのようなビジネスインパクトがあったかを説明することが大事なのではないでしょうか?

栗田)ありがとうございます。データアナリストの目標設定って難しいですし、うまく設定しないと雑用係になりがちな側面もあるなかで、かなり具体的にお話いただいたので参考になったのではないでしょうか?

データアナリストが力を発揮しやすい組織にするには

栗田)次の質問は、データアナリストが力を発揮しやすい組織にするにはアナリスト自身はどんなことをしなければならないか、です。さきほど、組織のデータリテラシーを高めていくことが必要、といったお話もありましたが、菅谷さんはいかがでしょうか?

菅谷さん)そうですね、組織のデータリテラシーを高めていくことや、データでコミュニケーションをとる際のハブになることはもちろん、それにプラスしてデータアナリスト自身がマーケティングやエンジニアやプロダクトマネージャーなど、他の業務に意図的に染み出していく必要がありますね。

そうすることで、自身も成長できるとともに、組織全体にデータの大切さが伝わるのでデータアナリストの活躍のフィールドが社内に自然と広がっていくのではないでしょうか。

大西さん)自社のサービスやプロダクトが成長するにはどうしたらいいかを分析するのがデータアナリストなので、いろいろな領域に顔を出して課題解決をしていくのは欠かせません。それを行う上で、組織間の課題があって難しいのであればまずはそれを指摘して解決していくべきですね。

栗田)少し似た質問になってしまうかもしれないのですが、転職などでその会社がデータアナリストにとって働きやすい会社かどうか・活躍しやすい会社かどうかをどのように見分ければよいでしょうか?

菅谷さん)データ系で強い人がいる会社にいけば、まず間違いはないんじゃないかなとは思いますね。

栗田)「あの人がいるから」といったことはどうしてもありますよね。古賀さんはご自身で飛び込まれて、データアナリスト組織を立ち上げられた経緯があると思うのですが、いかがでしょうか?

古賀さん)会社としてデータに価値を感じてもらえないと不幸なことになるのかなと思っています。組織を立ち上げてみたものの、結局意味がないと潰してしまって、また他の人が立ち上げて…ということは往々にしてあります。なので、データアナリストとして飛び込むのであれば、すでにデータが整っている・整えなくても活用できる基盤が整っているというのは大きな観点だと思っています。整えるところからやる場合は、どうしてもそのための労力がかかるのでそこを省くことができる環境ならば割りとすっと入って活躍しやすいですね。

栗田)たしかにデータ基盤を整備するところからとなると、そこで年単位の時間がかかることもありますしね。

なぜデータアナリストは希少なのか

栗田)続いての質問は、データアナリストが非常に少ないという点について、その究極的な要因は何だと思われていますか。またそれは解消すると思われますか、です。今日のお話のなかでも一貫して、データのことをわかっている人、データリテラシーが高い人がそもそも少ないというお話はあったかなというなかで、どのようにお考えですか?

菅谷さん)ニーズの違いはどうしてもある気がしますね。エンジニアがいないとプロダクトが作れない一方で、データって見なくてもなんとかなるという側面はあって、今でこそ色々な場面で活用されていますが、そもそもデータを貯めていない、活用できる状態にないといった企業が大半だと思うので、今後DXやデータ活用といったニーズが増えてくるとデータアナリストの数も増えてくるのではないかなと思います。

大西さん)経営者とエンジニアと営業がいたら最低限会社がまわるという感覚があるので、経営リソースとして優先順位をつけていった結果、データアナリストがまだ市場に少ないという状況かと思います。

栗田)データアナリストが少ない一方で、ニーズも少ないから増えていかないという側面もありそうですね。

古賀さん)ニーズが出るとしたらまずは大企業からになるのでしょうが、大企業がそこに投資できているかというと多分そこまで投資できていないですし、そこに投資できるほど成長できていないというのが構造的な課題としてありそうですね。

最後に

栗田)ありがとうございました。データアナリストの組織貢献をテーマに、必要なスキルや目標設定、データアナリストが活躍できる組織といった多方面のお話が伺えました。最後に皆様から一言ずつメッセージをいただけますでしょうか?

大西さん)本日はこのような場をいただきありがとうございました。私自身もデータアナリストとしてのキャリアはまだまだ浅い中で、自分の経験や考えていることを皆さんと共有しながら、データアナリストってどうあるべきなのかを考えるきっかけになりました。

古賀さん)私自身、あまりデータアナリストとしてのキャリアについて深く考えていなくて、必要に応じて「今はデータが必要だからやります」という形で自分の役割を柔軟に変えてきたタイプでして。真剣にデータアナリストとしてのキャリアに向き合われている視聴者の皆さんとお話しすることで非常に学びがありました。また、皆さんがどういったところに課題を感じてらっしゃるのかを知ることができたので、タイミーのデータアナリスト組織づくりに活かしていけたらと思っています。ありがとうございました。

菅谷さん)オンラインの登壇は初めてだったので、皆さんの反応がわからないことが不安だったのですが、たくさんの質問をいただきとても話しやすかったです。ありがとうございました。

栗田)皆様ご登壇いただき、本当にありがとうございました。今後もDataAnalystCareerStudyでは、データアナリストのキャリアを考える上で有益な情報を発信してまいります。ぜひ次回のイベントにもご参加ください。

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以上、第2回DACSセミナーレポートをお届けしました。
当日ご参加いただいた皆様、また、本レポートでご興味を持っていただいた皆様がキャリアを考える際に少しでも役立つ内容となっていれば幸いです。

今回は「これからのデータアナリストに求められる組織・ビジネス貢献」というテーマでディスカッションを行ってまいりました。リーン・ニシカタは現在、一緒に働くデータアナリストを募集しています。データアナリストの皆様が存分にビジネスに貢献できる機会をご用意しております。
興味を持っていただいた方はお気軽にご連絡ください。