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独占禁止法で裁かれるべき企業とは?

独占禁止法で裁かれるべき企業とはどのような企業だろうか?私たち消費者はどんな企業に対し独占している!と問題意識を持てばいいのだろうか。「米IT4社 議会公聴会で“独占的地位で不当に利益”を否定」という記事を読んで考えたことを紹介する。この記事が皆さんの課題意識を持つきっかけになれば幸いである。


そもそも独占禁止法はなんのためにあるのか?

独占禁止法は立場の弱い消費者を守るために存在する。一つの企業が市場を独占するとその企業が供給を絞ることで市場の均衡価格を意図的に調整することができるようになる。これを悪用して不当に企業が高い利益を得て、消費者が搾取されないように作られたのが独占禁止法であると認識している。

今回のようにIT4社が独占禁止法に違反するか考える場合、”不当に高い利益”を得ているか、否かが争点になるだろう。この不当という解釈はかなり難しいと私は思う。不当かどうかを考えるためにカルテルを作成しダイアモンドを独占して販売しているデビアス社を取り上げてみる。


不当な利益とはなんなのか?価格を吊り上げていることを不当としていいのか?

独占禁止法という話題の中でよく出てくるデビアス社、19世紀後半にはダイヤモンド生産の世界シェア9割を握ったという。世界的なカルテルを作り生産量(供給)を絞り込んだことでダイヤモンドの価格を吊り上げたのだ。そんなデビアス社だが何度か独占禁止法に違反するとして判決は下されているものの解体などはされず現代でも世界有数のダイヤモンドの卸売業者として確固たる地位を有している。

ここで考えたいのは、デビアス社は本当に不当に利益を得ているのかということだ。ダイヤモンドという商品は一般消費者にとってただのキラキラと輝く石だ。そしてキラキラと輝く石ならルビー、サファイヤ、エメラルド、さらにはガラスでさえもと同じような商品(代替品)として考えていいだろう。(ダイヤモンドには硬度が最も高いという商業的な利用価値はあるが、一般消費者はそのような硬度を求めて購入しているわけではないので今回は無視している。)一般ユーザーにとって、もしダイヤモンドを高いと感じるのであれば、同じような商品であり、より安価に買うことができるルビー、サファイヤなどを買えばいいのだ。その点から考えるとダイヤモンドの購入において消費者は自ら望んで高価なダイヤモンドを購入しているため、”不当な利益”を得ているとは言えないと考える。

これはグッチやエルメスが財布やバッグを10万、20万で売っているのと同じことだ。デビアス社はただ生産量(供給)を調整するだけではなく、「ダイヤモンドは永遠の輝き」というキャッチコピーを作成し、ただの石を不変の愛を表現するシグナル(記号)としてブランディングを行なった。その結果、一資源であるダイヤモンドそのものを一つのブランドとして形作っているのだ。


IT4社は不当な利益を得ているのか?

以上を踏まえた上でIT4社が不当な利益を得ているのかを見ていこう。IT4社が不当な利益を得ているか考えるが、そもそもIT4社それぞれがカバーする業界はとても広い。なので一般的にイメージされる各社の主要業界についてここでは考える。

■Google

検索エンジンやスプレッドシート、MeetsなどWebツールとしてのGoogle。そもそもほとんどのツールは基本無料で使用可能だ。基本無料で多くの人に使用してもらうことで顧客の行動や個人情報などを独占しているとも考えられるがこれは独占禁止法の範疇ではないだろう。

■Amazon

EコマースとしてのAmazonは消費者に対し不当な利益を得ているとは言えないだろう。Amazon以外にも楽天、アスクル、イオン、業務スーパーなど小売業はいくらでも存在するからだ。


■Facebook

SNS、メッセンジャーアプリとしてのFacebook。これもGoogleと同じように基本無料のサービスで広告料金や個人情報の取得で利益を得ているが、独占禁止法の範疇ではない。


■Apple

iphonやmacの販売などを行う、デジタル製品の開発、販売業社としてのApple。iphonにしてもmacにしてもAndroidやWindowsPCという代替商品が存在する。Apple製品が多少高くても消費者が購入するのは他に手段がなくしぶしぶではなく、最新鋭、洗練された、おしゃれといったブランドに魅了されたからであろう。


まとめ

以上私の見解としてはIT4社は独占禁止法に違反しないと考える。

商品の価格が高いことを”不当”と見るか、ブランディングによるものだと見るか。

無料でサービスを提供することで市場を独占し新規参入を阻むような戦略を違法(独占禁止法では裁けないのではないか?)と見るか。

皆様はどう考えるだろうか?


参考資料

NHK : 「米IT4社 議会公聴会で“独占的地位で不当に利益”を否定」

Wikipedia : デビアス


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