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食育にテーブルマナーを

久々のnote更新ですが
ずっと書きたいと思っていた事を書きます。
仕事柄でしょうか、様々な場面で日本人のテーブルマナーが気になります。
それは僕のお店でというわけではなく
たまたま入ったレストランでとか、旅や食の番組やら動画を見ていてとか
海外で日本人旅行者を見かけた時なんかに。

「いやそれ、気を付けないと・・」
同じ日本人として
見ていて、じっとりと汗をかくシーンもしばしば。

我々日本人には日本料理のお作法というものがあって
伝統的な事には厳しいお国柄ではあるものの、
日常レベルでは、厳しい人とゆるい人の二極に分かれていると思います。

タイトルにあえて「食育」という言葉を入れました。
これは食育という概念とテーブルマナーのどっちが大事か?
という話ではなくて、食育にテーブルマナーの概念も入れたらどうか?
という提案のような物です。

僕のお店では、テーブルセッティングに箸は置いてません。
(言われれば出します)
僕の方針というよりは、お客様から求められていないから。
(「お箸ください」とは言い出しにくいのかもしれないけど)
西洋料理はナイフフォーク&スプーンで食べるものだから
普通と言えば普通なんだけど
多分、うちのお客様はほとんど皆さんが海外経験豊富で
テーブルマナーの重要性を理解していらっしゃるからだと思います。
お子さんにも、きちんと教えていたりするシーンもよく見かけます。

だからこそ、一歩外に出ると目立つわけで。
では、ここで僕が何を言いたいのかといいますと
国内外を問わず
「食事のシーンでの立ち居振る舞いは、かなりチェックされています」
という事。
ほんとコワいです。

それがきっかけで差別されたり、
期待したようなサービスを受けられない事は多々あるのではないかと。

長い時間をかけて構築された
日本の日本料理における「お作法」を
日本人が蔑ろにしているシーンを見れば
大抵の日本人は眉をひそめてしまうのではないかと思います。

それが外国人だったら、日本人はある程度許すかもしれません。
しかし、イヤだなと思う人も一定数います。
でも、その外国人が我々の「お作法」を知って、学んでくれたなら
きっとその人に好感を持つでしょう。
お作法とテーブルマナーは同じ。
相手を不快にさせない行動規範(=マナー)は大事なんです。

当然西洋料理は外国の文化なので
日本のお作法と同様に長い時間をかけて構築されたテーブルマナーがあって
それは大切にされています。
食事の場は社交の場ですから、そこに出てくるためには
最低限のマナーを知る必要があります。
そうしないと、周囲に不快感を与えてしまうばかりで
運が悪いと差別的待遇にあって、ガッカリする事に繋がりかねません。
レストランなら特に
サービスの人間はプロですから、その辺はすぐに見抜きます。

ここからはハウツー的になりますが
フランスで高級なレストランを利用するといった前提で
(日本でも、その他西欧諸国でも、結構当てはまります)
僕が気になるマナーの話をまとめていきたいと思います。

①テーブルに着く前からテーブルマナーは始まっている 
エントランスでギャルソンの対応を待ち
予約者の名前、時間、人数などを慌てずに伝えましょう。
予約でない場合は、その旨を伝え
今から食事が可能かを必ず確認しましょう。
確認が済むまでは勝手に店内に入らず、もちろん着席などは論外です。

②着席からオーダーまで
着席すればまずドリンクのメニューが手渡されます。
必ずなにか注文しましょう。
お酒が飲めなくても、です。例外は無いと思ってください。
ノンアルコールの物もあります、良く見て判断しましょう。
それもマナーです。
最初のドリンクオーダーの時点で
アペリティフ&一番目のワインぐらいを伝えておけば良いでしょう。
食事の注文はアペリティフが用意されてから改めて行います。
お店のレコメンド(お勧め)やメニューの体系を確認し

アラカルトなら
最低でも一人一皿は「メインディッシュ」を注文します。
繰り返しますが前菜ではありません、メインです。
国外では「量が食べられないから前菜だけ」という論理は通用しません。
食べきれない物は残せばいいのです。
基本的には
前菜1皿メイン1皿の2皿構成がベター
余裕があればそこに、デザートやチーズなどを加えていきます。

コースなら
同じランクのものを人数分注文します。

プリフィクスなら
プリフィクスの利用を伝え、枠内からチョイスします。
日本人にはプリフィクスの仕組みが分かりにくい事があります。
ここでちょっと解説を。
大抵、プリフィクスでは
「前菜」「メイン」「デザート&チーズ」の3つのカテゴリ
または
「前菜」「メイン」「デザート」「チーズ」の4つのカテゴリで
カテゴリ内には数種類ずつの選択肢が用意されていて
2皿ならいくら、3皿ならいくらという設定になっています。
3つのカテゴリで2皿なら
「前菜+メイン」か「メイン+デザート」でチョイスします。
3つのカテゴリで3皿ならそれぞれのカテゴリから一皿ずつチョイス。
そんな感じです。

ここまでがスムーズにできると
相手側からの敬意がしっかりと感じられるようになるでしょう。

③食事が始まったら
両手にナイフフォークをきちんと持って、食事をしましょう。
日本人はお箸の文化が根強く、
ついつい利き手にフォークを持ち換えての「片手食い」になりがちです。
これはかなり目に付くポイントになります。
非常にみっともないです。

もちろんパスタやスープをすするとか、
皿を持ち上げるとか、食器をカチャカチャ音を立てるとかはNG。
犬食いや食いちぎりも多いですね。
この辺も気を付けたい所。

シェアはしない方がいいです。
勘違いされがちですが
本来シェアとは、例えば4人分の料理を4皿に取り分ける事であって
取り分けるのもギャルソンの仕事です。
一皿を複数の人間で分け合う事ではありません。
お皿を真ん中に置いてみんなでグチャグチャつつくのは
甚だしいマナー違反で、非常に見苦しく映ります。
「少しずつ色々食べたい」というのは
日本人特有の悪いクセだと思ってください。

もちろん、外国人でも片手食いする人はいます。
カジュアルなレストランでは少し崩してもいい部分はあると思います。
でも、知った上で崩すのと
最初から崩れているのは違います。

追加オーダーや次のワインの注文など
ギャルソンを呼ぶ時は「目くばせ」と軽いリアクションで。
そばにいない時には待ちましょう。
「すいませーん!」はあらゆる場面で「無し」です。
彼らのプライドを大きく傷付ける行為になります。

④食事が終わったら
お皿の上げ下げの際に
ありがとうの一言や、料理や食材に対しての質問などをするだけで
ギャルソンとの信頼関係は深まります。
ちょっとした気遣いを忘れないようにしましょう。

食事が終われば
食後酒やチーズ、デザートなどの注文になります。
余裕があれば、その辺も楽しもうとする気持ちは大切です。
コースであってもコーヒーなどの飲み物は別注です。

会計もスムーズに済ませましょう。
タイミングを見てギャルソンに目くばせをして
会計の旨を伝えます。
ここでも「すいませーん!」は無しです。
よほど、東洋人を蔑視するスタッフに当たらない限り
一連の流れやマナーがスムーズに行われていれば、
この時点で良いサービスが受けられていると思います。
ならば、チェックの際はチップもお忘れなく。

小難しい話に聞こえるかもしれませんが
このくらいは当たり前の話です。
こういう事が分かっていない東洋人がレストランに来ると
どうしても目立ってしまい、
白い目で見られる原因を作ってしまいます。
日本人は自らの立ち位置とスタンダードのブレに気づけず
案外、自ら災いを招いている事に気付かない場合が多いんです。
日本における洋食料理の常識やら、マナーやらは、ほぼ通用しません。

逆に、こういった部分を無難にこなしながらであれば
テーブルを共にする仲間たちと、大いに会話が盛り上がったりする事には
とても寛容であるとも言えるのです。

悪しき前例が、積み重なって偏見は形成されます。
対応の悪いスタッフというのは大抵の場合、悪しき前例をたくさん見て
結果、そういう対応になっているものと思われます。

大同小異ならともかく
ここで書いた話に異議があるような方には
単純に高級レストランへの出入りはお勧めしません。
当人が恥をかくだけならともかく
このあとに続く同胞への「負の遺産」になってしまいます。

どうして、そうなってしまうのか?
当たり前ですが、慣れてないからです。

やはり実践的なマナー教育は必要なんだなと、僕は考えます。

国際化も女性の社会進出もますます進んでいきます。
国内であっても、あらゆる場面で人との交流があり
どんな仕事でも、誰しもが、機会に直面し
食事の場は非常に重要になっています。
食事だけは、世界中のどんな人も食べるんです。

もしあなたの周囲に「そんなものは必要ない」と言う人がいたなら
その人はその程度です。耳を傾けない方が賢明です。
そのくらい重要です。

繰り返しますが
食事のマナーは、テーブルマナーであれ、お作法であれ、
他者への気遣いが込められた紳士録です。
食事はみんながワイワイ楽しんでOKですが、
場に応じたルールはあるという事。
本来なら親から子へ受け継がれるべきものかもしれませんが
みんながみんな授けてもらえる物ではない事も明らかです。
大人になってから覚えるのは、ある程度「恥をかく」覚悟も必要です。
(僕もずいぶん恥をかきました)
誰もが自由に世界を行き来できる、こんな時代ですから
「食育にテーブルマナーの概念を」
できれば感覚が自然に身についているようにしたいものだと思います。

外に出ればそんな事を考えていますから、
日々の仕事の中で
お子さんにマナーを教えているご家族を見かけるたびに
「素晴らしいなぁ」と思うこの頃です。

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