体育けテぶれ初日 〜けテぶれ導入の具体〜
最近ありがたいことに
「体育ではどのように学びを任せていますか?」
「体育にけテぶれを導入する手順を教えてください」
という質問を受けることが最近増えてきました。
本当にうれしく思うと同時に、身が引き締まる思いです。
そこで今回は、今年度、私がどのように体育授業においてけテぶれを導入したのかについて書いていきたいと思います。
この記事が誰かのお役に立てばうれしいです。
けテぶれの紹介
まず、体育の授業開きの際に「けテぶれ」という言葉と、どのようなものなのかを簡単に紹介しました。
ここではあくまで「紹介」程度でしかけテぶれについてふれませんでした。
深くけテぶれについて話したところで、けテぶれをやったことがない子どもたちがどれだけけテぶれの価値を理解し、やる気になるかは目に見えているからです。
教師だけがけテぶれについて熱くなり肝心の子どもたちがついてこられず、けテぶれが嫌いになってしまうなんてことも考えられます。
焦らずゆっくりとけテぶれの良さを理解させていくことが大事だと思います。
けテぶれをやらせてみる
年度が始まって2回目の授業で、初めてけテぶれをさせました。
初めにワークシートを配付し、一度「けテぶれ」という言葉の意味の確認と、やることの説明をしました。
教師「けテぶれってなんだったっけ?(掲示物をホワイトボードに貼っておく)」
子ども「計画、テスト、分析、練習!」
教「そうだね、すごいね!では今日は実際にけテぶれをしてみましょう。けテぶれは何をすればいいのでしょうか。」
子「うーん、計画で書くことは、えーっと…」
教「詳しく説明していないので、知らなくて当然ですよね。今から説明するので頭の中でイメージしながら聞いてください。
計画は、目標ややることを考えます。ワークシートの一番上の四角に書きましょう。
テストは、計画に書いたことをやってみます。そして、実際にやってみた結果、自分としては何点だったのかをワークシートに書きましょう。
分析は、良かったところ、良くなかったところ、次はどうしたいか考えます。ワークシートには、+ − →で書かれていますよね。そこに書いていきましょう。
練習は、分析したことをもとにもう一度挑戦します。ワークシートには、授業が始まる前よりも上手になったと思えば5、そう思わなければ1というふうに、1から5の数字に○をしましょう。」
以上のような流れです。
ここまできたらようやく実際にけテぶれをさせていきます。
け(計画)
まず、本時で行うゲームの説明をします。
ゲームはどんなものでもいいですが、年度初めであれば子ども同士の関係づくりのために、ペアやグループの仲間と協力しなければならないものがおすすめです。また、タイムや回数、距離が測れるゲームなど、数値で結果がわかるゲームを行うことで、けテぶれがしやすくなります。
私は今年、体育専科をさせていただいているので複数のクラスで同じ授業をすることができました。
そこで、2つの方法を試してみました。
①ゲームの説明後に計画を書かせる
②ゲームの説明後、一度試しにゲームをやってみて、その後に計画を書かせる
結論からいうと、②の方が子どもたちは計画が書きやすそうでした。一度ゲームをすることでゲームの場面が具体的にイメージできるからだと思います。
では、計画を書く場面でどのように指導したのかについて紹介していきます。
①、②どちらの進め方のどちらでも、流れは基本的に同じです。
「さあ、ではまずは計画から書いてみましょう!」
と言って書かせ始めます。
しかし、なかなか書くことができない子が出てくるでしょう。
なぜなら、書くことがわからないからです。
ですので、具体的に何を書けばよいのかを話しました。
「例えば、30秒を目指すというふうに、目標のタイムを書くのもいいですね。何か自分なりの目標が書ける人は書いてみましょう。」
この時点で、数名の子どもは計画を書き始めます。
しかし、それでもまだ書けない子どももいます。そこで、
「目標が思いつかないという人は、やってみる!や がんばる!とか、今の気持ちを書いてもいいですよ。」
このように話すと、「じゃあやってみるでいいやー!」などという子たちが出てきます。
ここでのポイントは、「最低限こんなことを書けばいいよ」と子どもたちに示すことです。
初めから、自分の目標を具体的に書ける子も中にはいます。
しかし、クラスにはそういう子ばかりがいるわけではないですよね。
そこで、どんな子も必ず書けるくらいハードルを下げてあげることで、子どもたちに安心感をもたせるようにします。
私の場合、「気持ち」を書かせました。
まずはこのようにスタートするといいと思います。
繰り返しけテぶれを回していくことで、いずれ具体的な目標が書けるようになってきます。
その時まで、焦らずゆっくりとけテぶれを回していきましょう。
テ(テスト)
ここでは、初めに説明したゲームを行います。
子どもたちには「計画に書いたことが達成できるかなー?」などと言って計画に書いたことを意識させます。
そしてゲームを行うと、子どもたちの様々な反応が見られます。
ここで私が大切にしているのは、全員がゲームを終了した後、しばらく間をとるということです。
なぜなら、子どもたちは自然と仲間とゲームの結果について話を始めるからです。
「あそこでこうしておけばよかったね」
「次はこうしようよ」
様々なことを話し始めます。
あえてこの話をさせた後に、教師から言葉をかけます。
「今行ったゲームは、自分としては何点ですか?それをワークシートに書きましょう。」
子どもたちには100点満点で自己採点をさせます。ここでは、自分に正直になって点数を書かせることが大切です。
点数を書かせたら次の言葉をかけます。
「テストの後は何だったかな?分析ですよね。ではワークシートに沿って分析を書きましょう」
ぶ(分析)
「分析は、自分で立てた計画に対して、良かったところ、良くなかったところ、次はどうするかを書きましょう。」
と言って分析を書かせ始めます。
しかし計画の時と同じで、これだけでは書けない子が中にはいるでしょう。
そこで、具体的にどんなことを書けばよいかを話しました。
「これが良かった とか あそこを失敗した とか、結果について考えてみましょう。」
それでも、何を書けばよいかわからない子がいるはずです。
そんな時は次のような話をします。
「何も書くことが思い浮かばない人は、よっしゃー! とか 楽しかった! とか くそー とか、今の気持ちを書いてみてもいいですよ。」
これも計画の時と同じで、「最低限こんなことを書けばいいよ」と子どもに示すことで、なかなか書けない子どもたちに安心感をもたせます。
もちろん、「こうしたらうまくいった」などと具体的なことを書いた方が学習としての深まりが出てきますが、初めからそこを求めすぎず、気長に待つことも大切だと思います。
繰り返しけテぶれを回していけば、いずれ具体的なことが書けるようになってくるともいます。
また、私のワークシートの場合、「いつ、どこで、だれが、何を、どのように、どうした」という視点が書かれていますが、初めのうちはここについての説明はあまりしません。
ある程度分析の書き方がわかってきた頃にここの説明をします。
初めから求めすぎても、教師の子どもも苦しくなってしまうので、それを避けるためです。
れ(練習)
分析が書けたら次は練習に移ります。
練習では、テストと同じゲームをもう一度行いました。
子どもたちには
「分析で書いたことが活かせるといいですね。そして、テストの時よりも上手にできるように頑張ろう!」
などと話をしました。
そして、もう一度同じゲームをします。
すると、1回目の時と比べて明らかに子どもたちの動きが良くなっています。
そして、ほとんどのチームが1回目の時よりも上手になっています。
上手になっているというのは、タイムが縮んだり回数が増えたりして記録が伸びていることが確認できるとわかりやすいと思います。
子どもたちもこの結果には大喜びです。
ここでも、すぐに話を始めるのではなく、あえて間を取ります。
なぜなら、2回目のゲームを終えて出てきた自分の感情をしっかりと味わってほしいからです。
そして、子どもたちが一通り感情を味わったところで、話をします。
「では、練習をした結果、上手になったのか や どうするとうまくいったのか、次に受けての意気込みなどがあれば書きましょう。そして、とてもレベルアップできたと思ったら5、全然できなかったと思ったら1というふうに、番号に丸をしましょう。」
また、「レベルアップ」の指す意味も説明します。
「ここでいうレベルアップとは、授業の初めよりも授業が終わる時の方が上手になっている状態のことを指します。タイムが縮まっていたりして上手になっていればレベルアップしたと言えます。」
このような感じで説明しました。
子どもたちが練習の部分まで書けたらけテぶれが1周回ったことになります。
価値付け
けテぶれが1周回ったら、価値付けをしました。具体的には次のように子どもたちに語りました。
「2回目の方が上手になっていた人(手を挙げさせる)。あなたたちは、1回目の結果からさらに上手になるために自分たちで考え、自分の力で上手になることができました。先生は一人一人に、次はこうしなさい などと声をかけていませんよね?自分たちでどうすれば良いか考えて上手になったはずです。これが 勉強 なのです。これは、ものすごく価値のあることです。先生に言われてやった時よりも楽しくて充実していたと思います。みんなはこうやって自分たちの力で成長していくという力を持っています。これから1年間、この力をさらに高め、楽しく体育の授業をしていきましょう。
2回目の方が記録が良くなかった、もしくは変わらなかった人(手を挙げさせる)。あなたたちも、記録を伸ばすために自分たちで考え、2回目に挑んだはずです。このことにものすごく価値があります。自分たちで考えて行動する、これは、今まで誰かにさせられて、その結果うまくいかなかった時と比べて自分の考えの深まり方が違うと思います。ただの 上手にならなかった より学んだことが多くあると思います。それがとても大切なのです。これも勉強なのです。上手にならなかった人は、分析が甘かった可能性があります。次はいろんな人と協力して分析することができれば、きっとレベルアップすることができると思います。」
このように話を子どもたちの心に響かせようとするなら、子どもたちの感情が大きく動いた時がチャンスです。このタイミングを逃さずに、教師の思いを語りましょう。
私の場合「自立した学習者」を育てたいと考えているので、そこに近づけるような語りをしました。
フィードバック
授業後には子どもたちのワークシートをチェックし、フィードバックも行いました。
私の場合、できるだけ授業中に子どもの記述に対して「これいいねー」「こんなことに気づいたんだー」などと言うようにしていますが、全員にそれができるわけではありませんので、ワークシートをチェックしてフィードバックをするようにしています。
チェックの仕方は、いいなと思うところに赤ペンで線を引き、星を描くというやり方です。
こうすることによって、子どもに「こういうふうに書けばいいんだな」と理解させていくようにします。
特によく書けている子などはコピーして、次の時間にお手本として全員に配付すると、コピーされた子は喜び、他の子はどんなことを書けば良いか知ることができます。
しかし、中にはワークシートを書かずに提出する子もいます。
そんな子には
「〇〇さんが考えたことを先生は見たかったなー」とか
「〇〇さんはどんなことを考えながらゲームをしましたか?」
などと書いて返します。
ここでこのような言葉を書くことで、「私はあなたに興味を持っているよ」というメッセージを子どもに送るようにします。
また、子どもに「何も書いていない自分にも先生は興味をもってくれている」という気持ちをもたせられるといいなと思っています。
また、次のけテぶれの際にその子の近くに行って一緒に書いてあげることも大切だと思います。
「書かない」のではなく「書けない」可能性もあるので、その子に合った支援を考えていう必要があると思います。
そして、書けた時には思いっきり喜んであげることも大切です。
まとめ
今回は、今年度、体育にどのようにけテぶれを導入したのかについて書きました。
流れとしては、けテぶれを紹介し、けテぶれをさせ、価値付けとフィードバックを行う という感じです。
当たり前ですが、初めから上手にけテぶれができるわけではありません。
そのため、「最低限これが書けるといいよ」というラインを示してあげることが大切です。
また、高いレベルのけテぶれを子どもに求めすぎると、教師も子どもも苦しくなってしまうので、少しずつ上手になっていく過程を楽しみながらけテぶれをしていくことも大切だと思います。
私の場合、体育開きの時からけテぶれを意識して授業を進めていましたが、年度の途中からけテぶれを導入する場合も私の実践が参考になると思います。
この記事が誰かの役に立てばうれしいです。
なお、けテぶれについて学びたいという方は、以下の書籍がおすすめです。
大変勉強になります。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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