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#13 「三洋電機サービス事件」浦和地裁(再掲)

2003年11月12日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第13号で取り上げた労働判例を紹介します。


■ 【三洋電機サービス(以下、S社)事件・浦和地裁判決】(2001年2月2日)

▽ <主な争点>
精神的疾患による自殺、会社と上司の安全配慮義務など

1.事件の概要は?

本件は、自殺したA(当時、S社の社員)の妻BおよびAの子Cが、Aが課長昇進にともなう職責の変化および部下との人間関係のストレスにより、精神疾患を悪化させ自殺したことは、S社およびAの上司だったD部長の安全配慮義務違反によるとして損害賠償を請求したもの。

2.前提事実および事件の経過は?

【主な登場人物】
★ A ……… S社部品部企画課長当時の平成8年9月に自殺
★ B ……… Aの妻
★ C ……… Aの長女
★ D部長 ……… 昭和62年以降Aの直属の上司
★ E ……… Aの父(平成8年1月に死亡)
★ F ……… S社部品部管理課長の職にあったAの20年来の友人
★ T常務 ……… S社常務取締役関東事業部長
★ X医師 ……… Aの主治医で診断書を作成

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<Aが自殺するまでの経緯について>

▼ Aは昭和45年4月、S社に入社し、62年に部品部管理課に配属となり、電化製品の部品管理等の仕事に従事していたが、平成3年に同部企画係長となった。

▼ 7年2月、Aは部品部企画課長へ昇進したが、Eの看病を理由として断続的に欠勤するようになった。

▼ 同年6月、AはD部長に対し、Eの病状が芳しくないこと及び自分にとって課長職が負担であることを告げ、退職の意思を示したが、同部長はプレッシャーをかけない旨を約束した程度ですませた。

▼ 8年4月、Aは自殺を図ったが、未遂に終わった。Aの妻BはFに対し、Aの自殺未遂の事実を連絡し、FはD部長に対し、その事実を報告した、その後Bは直接同部長に対し、Aが仕事上の悩みから自殺未遂をしたことを伝え、降格ないし配置転換をしてほしい旨を申し入れた。

▼ 同年5月、AはI医院において受診し、X医師作成の診断書をD部長に対して提示し、自宅療養を申し出た。

▼ 同年6月、Aは管理職登用試験である主事試験を受験し、一次試験に合格した。

▼ 同年9月24日、Aは自殺した。

3.元社員Aの遺族(妻Bおよび子C)の言い分は?

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