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#359 「レガシィほか事件」東京地裁(再掲)

2014年4月16日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第359号で取り上げた労働判例を紹介します。

■ 用語の解説

★ 専門業務型裁量労働制について

労働基準法38条の3所定の専門業務型裁量労働制は、業務の性質上、業務遂行の手段や方法、時間配分等を大幅に労働者の裁量にゆだねる必要がある業務として厚生労働省令および厚生労働大臣告示によって定められた業務を対象とし、その業務の中から対象となる業務を労使協定によって定め、労働者を実際にその業務に就かせた場合、労使協定によりあらかじめ定めた時間働いたものとみなす制度をいう。

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■ 【レガシィ(以下、L社)ほか事件・東京地裁判決】(2013年9月26日)

▽ <主な争点>
専門業務型裁量労働制の適用など

1.事件の概要は?

本件は、L社および税理士法人L(以下、L法人)に雇用されていたXが同社らに対し、時間外労働についての割増賃金の未払いがあるなどとして、(1)割増賃金およびこれに対する遅延損害金、(2)付加金およびこれに対する遅延損害金をそれぞれ連帯して支払うことを求めたもの。

Xは平成22年1月、L社らとの間で、税理士の補助業務を行うスタッフとして、期間の定めのない労働契約を締結し、同年9月末日、同社らを退職した。Xは公認会計士試験に合格していたが、実務修習を終了しておらず、税理士となる資格を取得することはなかった。

2.前提事実および事件の経過は?

<L社、L法人およびXについて>

★ L社は、金融、財務、その他の資産の管理および運用に関する総合コンサルティング業務、会計事務代行業務等を目的とする会社である。

★ L法人は、他人の求めに応じ租税に関し、税理士法2条1項所定の税務代理、税務書類作成および税務相談に関する事務を行うこと等を目的とする税理士法人である。なお、L社とL法人の代表者は同一人物であり、その本店所在地ないし主たる事務所の所在地は同一である。また、従業員構成もほぼ同一であり、従業員のほとんどが双方に雇用されている。

★ Xは、平成22年1月、L社らとの間で法人税・資産税部門における税理士の補助業務を行うスタッフとして、期間の定めなく雇用される旨の労働契約を締結し、同年9月末日、同社らを退職した者である。なお、給与月額は33万7000円であり、そのうち29万7000円がL社支払分、4万円がL法人支払分とされていた。

★ Xは確定申告に関する業務、土地等の簡易評価の資料作成業務等に従事していたところ、その業務がL社の業務であるのか、L法人の業務であるのかについては明確に特定区分されることはなかった。

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<L社らの就業規則、専門業務型裁量労働制に関する協定届等について>

★ L社とL法人の就業規則はほぼ同一の内容であり、勤務時間、休憩、休日、休暇等についても同じ内容の定めがされている。

★ L社らの平成22年当時の就業規則には、次の内容のような規定があった。

(1)専門業務型裁量労働制は、労使協定で定める対象労働者に適用する。
(2)専門業務型裁量労働制を適用する労働者(以下「裁量労働適用者」という)が所定労働日に勤務した場合には、勤務時間を原則8時間とする定めにかかわらず、労使協定で定める時間、労働したものとみなす。
(3)みなし労働時間が所定労働時間を超える部分については、割増賃金を支払う。
(4)始業時刻および終業時刻は、就業規則に定める時刻を基本とするが、業務遂行の必要に応じ、裁量労働適用者の裁量により具体的な時間配分を決定するものとする。
(5)裁量労働適用者が休日および深夜に労働する場合に、あらかじめ所属長の許可を受けなければならないものとし、許可を受けて休日および深夜に業務を行った場合にはL社らは割増賃金を支払うものとする。

★ L社における専門業務型裁量労働制に関する協定届(平成20年10月31日に成立し、同年11月1日から23年10月31日までを有効期間とする協定について、23年8月に届出られたもの)には、裁量労働制の対象となる業務の種類として「会計事務」、業務の内容として「税理士法に定める税務代理、税務書類の作成、税務相談、およびこれらの税理士業務に付随する財務書類の作成、会計帳簿の記帳代行等、財務に関する事務」と記載されていた。

▼ XはL社らに対し、23年1月31日付賃金支払請求書により、未払賃金の請求をしたが、同社らはXに対し、同年3月18日付書面を送付して、Xの請求を拒絶した。その後、XはL社らに対し、同年12月14日付賃金支払請求書を送付して、未払賃金の請求をしたが、同社らはXに対し、回答しなかった。

3.元社員Xの主な言い分は?

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