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#158 「丸一運輸事件」東京地裁

2006年10月25日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第158号で取り上げた労働判例を紹介します。

■ 【丸一運輸(以下、M社)事件・東京地裁判決】(2006年1月27日)

▽ <主な争点>
歩合給とされていた元従業員による時間外労働等の割増賃金請求

1.事件の概要は?

本件は、運送業を営むM社において運送業務を担当する運転手として勤務していたAら5名が、労働基準法上の一日の所定労働時間である8時間を超過して勤務したり、休日出勤したりしたにもかかわらず、M社からは時間外労働賃金の支払いが一切ないとして、割増賃金の支払いを同社に請求したのに対し、M社は「Aらの作業は一日8時間以内で十分に終わる作業内容であり、実際にAらは所定時間内で作業を終えていたか終えることができたものであり、以前の勤務分については消滅時効にかかっていること」などを主張して、いずれも支払い義務を争ったもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<M社およびAら5名について>

★ M社は運送を業とする会社であるところ、業務内容としては、東京近郊で集荷した荷物を翌日地方に配達するものが9割方を占める基本業務で、他には地方の営業所から東京へという逆の流れの集荷業務があった。

★ Aは平成6年1月、Bは昭和63年8月、Cは5年5月、Dは平成元年3月、Eは昭和57年11月、それぞれM社に入社し、いずれも15年2月に退社した。

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<Aらの業務内容および給与等について>

★ Aら5名の1日の作業は、自宅を出発して、会社に着くと、車両の整備点検をし、配送予定の荷物を積み込み、会社を出発し、割り当てられた地区の配送先を回るとともに、ときには集荷して、自宅へ直帰するというものである。

★ Aは契約社員であり、給与はオール歩合とされ、加算項目(配達歩合、集荷歩合1および2)の合計額から減算項目(燃料費、管理費、車両修繕費等)の合計額を控除した額に一定比率を乗じた金額が業績給与として支払われることになっていた。

★ Aは一定額以上の給与額が保障されており、業績給与がそれに満たない場合には、不足分が支給されることとなっていた。Aの実際の給与計算をみると、減算項目の合計が常に40万円を超える金額である一方で、加算項目の合計は30万円に満たず、業績給与がプラスとなる余地はほぼなく、Aには一定の保障額が支払われていた。

★ B~Eは正社員であり、その給与は一部歩合給が採用されていたが、その歩合部分については、Aの場合と同様、実際には歩合が出る余地はなく、一定の保障額が歩合として支給されていた。

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<Aらによる時間外労働賃金請求および本件訴訟提起について>

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