見出し画像

#19 「西日本旅客鉄道事件」大阪地裁(再掲)

2003年12月24日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第19号で取り上げた労働判例を紹介します。


■ 【西日本旅客鉄道(以下、N社)事件・大阪地裁判決】(2001年12月26日)

▽ <主な争点>
業務命令の違法性、訓告処分の相当性など

1.事件の概要は?

本件は、N社のF工場に勤務していたXらが総務課長のAから違法な作業指示を受けたことなどを理由として、同社および同課長に対し、不法行為による損害賠償請求権に基づく慰謝料等の支払いを求め、またXは温度計を持ち出したことを理由に訓告処分(懲戒の前処分)を受けたが、これは処分としての相当性を欠くとして、同処分の無効確認を求めたもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<XとYについて>

★ XとYは、いずれも昭和39年に日本国有鉄道に入社し、平成12年4月よりF工場の鉄工職場(車両管理係)に配属されていた。

--------------------------------------------------------------------------

<本件踏切の横断をめぐるXらとA課長とのトラブル等について>

★ F工場内には修理点検を行う車両を誘導するための線路があり、社員が移動のため線路を渡る場所として3つの踏切があった。そのうち、一号(以下「本件踏切」という)と三号の2つには遮断機が設置されておらず、車両の誘導作業中は警報器がずっと鳴り続けるようになっていた。このため、警報器が鳴っていても一旦停止をし、左右の確認をした上で車両の誘導指示を行う操車担当者が通行を指示した場合など、安全確認ができれば踏切を通行してもよいことになっていた。

▼ 12年7月、XとYを含む数人が勤務を終え、作業詰所に戻る際に本件踏切にさしかかった。このとき、貨車一台が進行中であったため警報器が鳴っていたが、Xらは貨車の通過を確認し、操車担当者が渡ってよいと指示しているのを確認の上、踏切を渡っていた。

▼ この様子を見ていたA課長がF工場における上記「事実上の取扱い」を知らなかったことから、Xらに対して、警報器が鳴っていることを理由に「渡るな」と注意したが、XらがA課長の注意に従わず、踏切を横断したことからXらと同課長との間で言い争いとなった。

▼ A課長はXを指名し、職場事務所への同行を求めたが、Xはこれを拒否した。その際同課長がXの左腕を数回掴んだため、Xは約5日間の通院加療を要する左手首擦過傷を負った。

▼ 数日後、Xらは個別にA課長やM職場長ら4人の管理職から上記踏切横断の件で、事情聴取を受けた。

--------------------------------------------------------------------------

<本件作業の指示、Xに対する訓告処分等について>

▼ 12年8月、本件踏切における通行者に対する指導を当分の間、鉄工職場が受け持つことになった。その作業内容とは、本件踏切の両側に1メートル四方の枠を白線で引き、その枠内に各人が入り、踏切を横断する通行者に対し、踏切を渡る前に一旦停止して声をあげて指差確認をするように指導し(以下「本件作業」という)、一旦停止、指差確認を行わなかった者を発見した場合は、その者の名前を記録するというものであった。

ここから先は

2,608字

¥ 100

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?