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#588 「ホテルステーショングループ事件」東京地裁

2023年5月24日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第588号で取り上げた労働判例を紹介します。

■ 【ホテルステーショングループ(以下、H社)事件・東京地裁判決】
(2021年11月29日)

▽ <主な争点>
残業代と労働契約に基づく所定労働時間に応じた休業手当の請求など

1.事件の概要は?

本件は、H社に雇用されていたXが次の各請求を行うものである。

1.時間外労働を行ったと主張して、(1)労働契約に基づく未払分の賃金の請求、(2)上記に対する支払期日からXの退職日である2020年12月11日までの確定遅延損害金の請求、(3)上記に対する退職日の翌日である2020年12月12日から支払済までの遅延損害金の請求、(4)上記のうちの労働基準法(労基法)37条違反部分で除斥期間が経過していない2019年2月分以降のものと同額の同法114条に基づく付加金の請求。

2.(5)休業を命じられた際に支払われた休業手当に不足があると主張して、労基法26条に基づく未払分の休業手当の請求、(6)有給休暇を取得した際に支払われた賃金に不足があると主張して、労働契約に基づく未払分の賃金の請求、(7)上記およびに対する退職後の支払期日の翌日である2020年12月29日から支払済みまでの遅延損害金の請求、(8)上記およびと同額の労基法114条に基づく付加金の請求。

2.前提事実および事件の経過は?

<H社およびXについて>

★ H社は、都内で現在16店舗のラブホテルを営んでいるグループである。

★ Xは、2014年4月、H社との間で労働契約を締結し、同社の経営する複数の店舗において、客室清掃などを担当する「ルーム係」として勤務していた者である。


<Xの就業状況、本件訴訟に至った経緯等について>

★ Xは2018年8月から2020年8月頃まで、H社の店舗の一つであるAホテル
(11部屋の客室を保有)で勤務し、通常は出勤してタイムカードを打刻した後、所定始業時刻前からリネン類の準備作業等を行っていたが、所定始業時刻以前の労働時間については賃金が支払われていなかった。

▼ H社では新型コロナウイルス感染拡大に伴う売上減少に対応するため、2020年3月以降、全16店舗のルーム係を概ね1日当たり4時間にかぎって勤務させるとともに休業も増やした。なお、この勤務時間の短縮や休業に関して、Xを含むルーム係と同社との間で個別に合意がなされたことはなく、就業規則が変更されたこともない。

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