モネ -連作の情景- (上野の森美術館) | 感想
『モネ 連作の情景』東京展にいってきました。
モネの絵のみの企画展という非常に珍しく、貴重な本展。日時指定チケットで初日の閉館ギリギリに滑り込んだため、そこまでの混雑もなくゆっくりと見ることができました。
入って左に折れると展示が始まります。なんと、初手で鮮やかな睡蓮の情景が。こちら、実際に足を踏み入れると蓮の葉が動き、波紋が発生してこぽこぽと音が鳴ります。絵に入り込んだようで、楽しい…!
今回の展示は、モネの生み出した【連作】に焦点が当たっています。これは『積みわら』『ウォータールー橋』『睡蓮』などで見ることができる、季節や天気によって別の顔を見せる同じ場所の風景を描き出したもの。
中でも、ロンドンの橋の連作は3枚横に並べられており、同じ橋のまったく別の顔を観ることができます。写真だと分かりにくいですが、色合いも空気感も別の街かのような描かれ方でした。
モネが晩年移り住んだというジヴェルニーの冬の光景は、儚げで柔らかなタッチとは違い、寒さや厳しさをはっきりと感じるような、それでいて静謐な一幕でした。
最後に、モネといったら睡蓮。思ったより睡蓮の点数が少なく、それだけモネの一生や連作という技法に焦点をあてたこだわりを感じました。
近くで見れたので、線の細部まで確認できました。私は絵が描けないけれど、こんなふうに描けたら普段見えている風景も違って見えるんじゃないかな。と思ってしまいます。
写真不可ブースでは、印象派以前のモネの絵を観ることができました。『昼食』は特にモネの契機となった1枚のため、観ることができて本当に嬉しかった!
ほかにも、パキッとした青が目立つものや鮮やかなヨットの絵など、あまりモネのイメージのないタイプのものも展示されていました。
今でこそ有名で大人気のモネですが、写実至上主義だった19世紀フランスにおいて、彼の作品はサロン審査で落選が続きます。国家主権の審査を通過してルーブル宮のサロンに展示されなければ画家として評価されない時代、モネは落選仲間のルノワールやドガとともにグループ展を開催します。最初は揶揄された展示も回を重ねるごとに評価をうけ、成功への足がかりとなりました。
また、モネの生涯はいくつもの戦争に翻弄されたものでもありました。穏やかさ、晴れやかさのある絵が多く残りますが、晩年の視力低下など多くの苦難にぶつかった人生でもあります。
自身の絵で美術史を切り拓いていった画家・モネ。その功績と人生からは、いまの私たちにも響くものが多いのではないでしょうか。
チケット代が一般3000円と少しお高めの設定ではありますが、国内外40館以上から集まったモネのみの企画展は本当に貴重で、価値ある時間になります。ぜひに。
余談にはなりますが、企画展のために絵が来日するということは、多くの人が実物を見ることができる以外にもメリットがあります。
それは、記録や研究です。実際に来日しなければ、その絵の細部まで研究することは叶いません。凹凸や色調の記録のために細かくデータをとり、今後の研究に役立てているそう。日本における美術や歴史の研究発展のためにも、魅力的な企画展がもっともっと増えるといいですね。
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