君の腕の中は世界一の充電スポット


「もう限界だ…。」


家に帰るなり荷物と共にソファーへなだれ込んだ。

完全にハズレくじである企画のリーダーを押し付けられ、上手くいかずに上司に怒られ。
挙句の果てに、同期が自分の陰口を言っているところに遭遇してしまった。

この1ヶ月、しんどいながらも耐えてきたが、今日はもうダメだ、糸が切れてしまったかのように動けなくなってしまった。


「真稀おかえり。…大丈夫?」

「蒼生くん!?」


どうやら疲れすぎていて、玄関にある靴すら見ていなかったらしい。

彼氏である蒼生くんが来ていることにすら気づかなかった。

慌ててソファーから身を起こす。


「あっごめん、ちょっと疲れちゃっただけ、っ…!?」


さっきまで自分が持っていたカバンに足元をすくわれた。

あっ、転ぶ…!!

そう思った時には、あたたかい蒼生くんの胸へ引き寄せられていた。


「あっぶなーい、…セーフ!」

「…ありがとう。」


ふわっと笑う蒼生くんの顔を見ると、なんだか力が抜ける。

体勢を直そうと、少し離れる。


「最近連絡も少ないし、忙しいのは分かるけど、心配だったんだよね。」

「あ…ごめんね、今やる事多くて…。」

「謝んなくていいよ。でも来てみて良かった。」

「え?」

「真稀よく頑張ったね、今は休んでいいんだよ。」

「蒼生くん…。」


人から褒められたのっていつぶりだろう。

休んでいい、そんなの言われたことなかった。

じわっと熱くなる目頭を隠すように蒼生くんの胸に顔をうずめる。


「なん、でっ…、そんな、そんな優しくしてくれるの…?」

「真稀がいなくなったら俺が死んじゃうから。」

「そんな事っ、」


ない、そう続けようとした唇は蒼生くんに塞がれた。


「あるの。真稀にはそれだけの価値があるの。」


強い目線とは裏腹に、優しい手が私の頭に触れる。

すべての疲れが浄化されていくようで、自然と顔も緩む。


「いい?限界迎える前に俺呼ぶこと。」


はーい、なんて返事をしながら、彼がいればなんでも乗り越えられる気になってくるのであった。


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