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ハチミツレモンが、しみる。

中学生のひとり娘は、年相応に反抗的で、私との口喧嘩が絶えません。

おとといも、ささいなきっかけで始まった、口喧嘩のラリーが長引いて、娘は喉がガラガラに。
楽しみにしていた、中学校の宿泊行事を控えていましたので、
学校指定の「健康調査票」の項目が頭をよぎりました。
【風邪の症状がある場合は、参加を見合わせていただきます。】

急に、体温計で熱を測りまくる娘。
何回も、平熱を確認しては、
「のどが痛いから、私、風邪ひいたのかな?」
「これから、熱が高くなるのかな?」
と、しおらしく私に尋ねてきます。

さっきの喧嘩の威勢のよさはどこへいったのかね、キミ。
嫌味たっぷりの返歌をおくりたくなります。
私、大人げないですね。

でも一方で、ああ、かわいい。
中学校が大好きで、特に体育と行事が楽しみでたまらない娘。
ティッシュで大量のてるてる坊主を作るのが恒例だった、
幼稚園の頃から変わっていない。
学校が好きと思える素朴さが残っているのが、
ありがたいと思うのです 。

私は、つとめて優しく言いました。
「今、のどが痛いのは、風邪とは違うよ。
ハチミツとレモンをお湯で割ってあげる。
それを飲めば治るよ。」

神妙な顔をして、マグカップに口をつける娘。
「飲み終わって、体が温かいうちに布団に入れば、
さらに良いよ。」
電光石火で支度を済ませ、布団に入りました。
そして、またピピッと体温計を鳴らしています。
そんな何回も測らんでも。

翌朝、目覚ましで飛び起きた娘は、開口一番、
「のど、全然痛くない!」
痛みが取れていることに驚きの声をあげました。
効いてよかったね。

それが、ハチミツレモンでも、お白湯でも、お茶でも。
何でも、良かったと思うのです。
大事なのは、飲み物を差し出す人が、
「これを飲めばきっと治る。」と、
言葉をかけて渡すということ。
治したのは、飲み物ではなく、言葉なのだと思いました。

私の言葉で治る。
ということは、悪くするのも言葉の選び方次第。
思春期のガラガラ声を迎え撃つ、
私の言葉が、子供に染みる。
普遍的な教えを、実地で学んだ一夜でした。

無事、宿泊行事に参加できた娘がいないので、
今夜は、家の中がとても静か。

自分のためにハチミツレモンを作りました。
ちょっと酸味が強い気がします。









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