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『On Tyranny』 Timothy Snyder

読了したので。香港デモについて語る有識者からよく勧められる本で、デモが盛んで行われて警察との衝突が激化した昨年の夏頃に衝動買いしたが、本日ようやく一通り読んだ。日本語のタイトルは『暴政:20世紀の歴史に学ぶ20のレッスン』。 作者のTimothy Snyderさんはアメリカ生まれ、イェール大学の歴史学教授で、研究分野は現代東ヨーロッパ。数多くの著作を執筆され、代表作に『ブラッドランド――ヒトラーとスターリン 大虐殺の真実』『ブラックアース――ホロコーストの歴史と警告』などが

    • 『Pachinko』 Min Jin Lee

      一ヶ月ほど前に読んだ、在日コリアンを題材にした本。作者は韓国系アメリカ人のMin Jin Lee氏で、本人は東京で4年間暮らしたことがあって、その間たくさんの在日コリアンの方にインタービュを行ったという。 オバマ前大統領が2019年末に公開した(恒例の)おすすめ書籍リストにあったことをきっかけに、そして元々在日コリアンが関心分野のひとつなので、この本を手に取った。(正確には緊急事態宣言真っ最中でなかなか紙の本を買えずKindleで読んだが...) 『Pachinko』は1

      • 『China Dream』 Ma Jian

        1つ前のノートで予告した通り、今週はMa Jian(馬健)氏の『China Dream』を読んだ。少し検索してみたが、陳冠中氏の作品と違ってまだ和訳版がないようす。 まずはタイトルの話。China Dream(中国夢)は習近平が就任したあとに発表した思想と執政理念であり、概要は中国検索エンジンBaiduが公開しているBaidu百科(ウェキペディアのようなもの)から引用させていただく(和訳は自ら): 中国夢は、中国共産党の第18回全国大会にて習近平総書記が提唱した重要な指導

        • 『The Fat Years』 Chan Koonchung

          Chan Koonchung(陳冠中)氏が書いた『The Fat Years』(原題は『盛世—中國2013年』邦題は『しあわせ中国―盛世2013年』和訳があって一安心)を読了して、忘れることを意識的に減らしたい気持ちになったので、久しぶりにnoteを書くことにした。 最近ジョージ・オーウェルの『1984』を再度読んだこと、コロナで在宅時間が増えたこと(緊急事態宣言が解除されたときでもほとんど外出していない)、中国全人代で香港に国家安全法の導入が決まったこと(唯一反対票を投じ

        『On Tyranny』 Timothy Snyder

          『Essentialism』 Greg McKeown

          読了したので。 本屋の話題/人気コーナーで何度も見かけたことがあるが、どんな内容なのかがずっとわからないまま、気が付いたら出版された2014年から5年も経った。5年経ったいまでも、本屋でよく見かけるような気がするし、本を読み終わったあとに、著者について少し調べたら、アメリカで今でもこの本の内容をベースにキーノートを行っているようだ。 自分のメンタルノートのために、著者本人が本のエッセンスについて語る動画を載せておく。 スキルもパッションも向上心も持っている人と、自分自身

          『Essentialism』 Greg McKeown

          『Weapons of Math Destruction』 Cathy O'Neil

          読了したので。 2016年に出版された本で、自分の関心領域にドンピシャな内容ばかりで、もっと早く読めば(知っていれば)よかった。概要は著者本人によるTEDトークで聞ける。 O'Neil氏はビッグデータを駆使した有害なモデルをWeapons of(Massではなく)Math Destruction(WMD)と呼ぶ。彼女の定義によるとWMDの3大要素は:Opacity、Scale、Damage。 Opacityはいわゆるブラックボックスで、データをモデルにインプットすると、

          『Weapons of Math Destruction』 Cathy O'Neil

          『中国の外交戦略と世界秩序ー理念・政策・現地の視線』|川島真・遠藤貢・高原明生・松田康博=編

          第一部を読了したので。 「一帯一路」というスローガンに対してずっと漠然とした理解しか持っていなかった。中国共産党が経済進出において注力した2つの領域(それぞれ帯と路)であり、どちらかはシルクロード(おそらく路かな)と重なる認識だった。 本書の第一部を読んで、そもそも「一帯一路」は実際に(意図あって)あいまいな言葉であることを知った。正式に決まった定義も範囲もないまま発表されたようす。高原先生によると、その曖昧さは江沢民が提唱していた「改革開放」に似ていると。ただし、実際「

          『中国の外交戦略と世界秩序ー理念・政策・現地の視線』|川島真・遠藤貢・高原明生・松田康博=編